アオサギは、日本に住むサギのなかで最も大きな鳥です。翼を広げると2m近くにもなる灰色の大きな体は田んぼや川、都市の水辺までさまざまな場所で見かけ、身近な「巨大な水辺の鳥」として知られています。夜に響く低くうねるような鳴き声は、かつて妖怪「青鷺火(あおさぎび)」の正体とも語られたほど印象的な声です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ペリカン目 Pelecaniformes
- 科:サギ科 Ardeidae
- 亜科:サギ亜科 Ardeinae
- 属:アオサギ属 Ardea
- 種:アオサギ Ardea cinerea(Linnaeus, 1758)
和名・英名
- 和名:アオサギ(青鷺・蒼鷺)
- 英名:Grey heron
名前の由来
学名の Ardea はラテン語で「サギ」、cinerea は「灰色の」を意味します。和名の「青鷺」は、日本語で古くから青系の色(灰色や青みがかった灰色)を「青」と呼んだ名残で、実際の体色である灰青色を指しています。英名 Grey heron も「灰色のサギ」の意で、和名と英名がそろって体色を表している珍しい例です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約90〜100cm、翼開長 175〜195cm。日本最大級のサギ |
|---|---|
| 分布 | ヨーロッパ・アジア・アフリカ大陸に広く分布。日本ではほぼ全国 |
| 生息環境 | 河川・湖沼・湿原・干潟・水田。都市の川にも進出 |
| 寿命 | 野生でおよそ5〜15年(記録では25年前後の例もある) |
| 保全状況 | IUCN:LC(低懸念) |
姿と体のつくり

大きな灰色の翼と長い首
アオサギの体は、灰青色の背中と翼が印象的です。白い頭と首、頭の後ろから伸びる黒い冠羽(かんう)も目立つ特徴になっています。首を「S字」に折りたたんで立つ姿は、大きな体を細く見せる特徴的なシルエットです。飛ぶときは首をS字に縮め、長い脚を後ろに伸ばした姿で、ゆっくりとした羽ばたきで滑るように空を進みます。
繁殖期に赤みを帯びる嘴と足
ふだんは黄色っぽい嘴と後ろ足も、繁殖期になると付け根から赤みを帯びます。この色の変化は「婚姻色」と呼ばれ、相手にアピールするための季節の飾りだと考えられています。オスはメスよりも首の後ろの冠羽や胸の飾り羽が長く発達し、繁殖のたびに全身が精悍な姿になる鳥です。
日本の水辺でよく出会う
ほぼ全国で見られる大きな水辺の鳥
本州・四国は留鳥、北海道は夏鳥
アオサギは日本の水辺で1年を通じてもっとも目に付く大型の鳥のひとつです。本州と四国では留鳥として通年見られ、北海道には夏鳥として飛来して繁殖し、九州以南では冬鳥として越冬個体が観察されます。地域によって夏と冬で入れ替わる個体はあっても、日本のどこかで一年中出会える鳥だといえます。
東京の川でも見られる都市の鳥
都市部の川にも進出しており、東京では隅田川や多摩川、荒川などの水辺で日常的に姿が確認されます。護岸で作られた人工の川岸でもじっと立って水面を見つめる姿がよく見られ、体長1m近い大型の鳥が街のなかに暮らしている光景が広がっています。

じっと待つ狩り
昼と夜の採食
アオサギは基本的に昼行性の鳥ですが、雛を育てる繁殖期には夜間にも採食に出ることがあります。単独で行動する時間が多く、朝夕の川岸に一羽だけ立ってじっと水面をのぞきこむ姿がよく観察されます。夜の水辺で細長い姿が動く光景も、繁殖期にはしばしば記録されています。
主食は魚、ときにヘビやカエルも
水面すれすれから突き出す嘴
狩りの主な相手は、水辺の小魚です。首を折りたたんだまま獲物が近づくのを待ち、水面すれすれから鋭い嘴を素早く突き出して捕らえます。動きの少ない浅瀬では、じっと立ったまま何十分も獲物を待ちつづける個体もいます。
幅広い食性
魚だけでなくカエル・水生昆虫・ザリガニなどの甲殻類・若いヘビ・小鳥のヒナ・小型の哺乳類まで幅広く食べる、雑食寄りの肉食鳥です。都市の川ではコイやフナ、外来種のブラックバスの若魚などを狙っている姿も観察されます。

コロニーで営む繁殖

松林などに集団繁殖地をつくる
非繁殖期には単独で暮らすアオサギも、繁殖期には松林や広葉樹の森に集まり、集団繁殖地(コロニー)をつくります。同種だけのコロニーが多いものの、コサギやゴイサギなど他のサギと混じって営巣することもあります。日本では日本海側に大きなコロニーが多い傾向があるとされ、地域によっては「鷺山(サギヤマ)」と呼ばれる伝統的な繁殖地が知られています。
皿状の巣、3〜5個の卵
オスが集めてメスが組み上げる
巣は高い樹上に、ヨシの茎や木の枝を組んだ皿状の形で作られます。主にオスが巣材を集めてきて、メスが組み上げていきます。同じ巣を毎年修理しながら使い続ける個体も多く、代を重ねるうちに大きな枝組みの塊になっていくコロニーもあります。
抱卵23〜28日、巣立ちまで50日ほど
1回の産卵数は3〜5個。卵の大きさは長径約6cm・短径約4cmです。抱卵は雌雄が交代で行い、23〜28日で孵化します。ヒナは巣で育てられ、およそ50〜55日で巣立ちを迎えます。生後2年で成熟する遅めのペースで、寿命は野生でおおむね5〜15年、記録では25年前後の例もあります。
「青鷺火」と呼ばれた不気味な声

アオサギは飛びながら「グワァッ」「ゴアッ」と低く濁った声で鳴きます。とくに夜、静かな水辺や住宅街の上空を通るときのこの声は独特の重さをもち、初めて耳にすると驚く人が多い鳴き声です。江戸時代の妖怪絵巻には、夜の湿地で青白い光を吐きながら飛ぶ「青鷺火(あおさぎび)」という妖怪が描かれています。これはアオサギの体表に発光する菌が付いて青白く光って見える現象と、夜の不気味な鳴き声とを結びつけて生まれた伝承だと考えられています。
見分け方:ダイサギ・コサギとの違い
体色と大きさで比べる
日本で見られる大型のサギは、アオサギの他にダイサギとチュウサギ、コサギがよく知られています。もっとも大きな違いは体色で、灰青色の体色をもつのはアオサギだけ。白いサギとは体色で分かれます。
| アオサギ | ダイサギ | コサギ | |
| 大きさ | 約90〜100cm | 約90cm前後 | 約60cm前後 |
| 体色 | 灰青色+白い頭 | 全身白 | 全身白 |
| 脚の色 | 黄色〜赤みがかる | 黒 | 黒+足の指が黄色 |
| 嘴 | 黄色→繁殖期は赤み | 黄色→繁殖期は黒 | 細く黒い |
脚と嘴の色を見る
色以外の目印としては、脚の色と嘴の変化があります。アオサギの脚は黄色から繁殖期に赤みを帯び、ダイサギは黒い脚、コサギは足の指だけ黄色い黒い脚が目印です。田んぼに立つ白いサギとアオサギは、体色に加えて脚の色でも見分けられます。
保全と人との関わり
広い分布と安定した個体数
アオサギは分布がユーラシアからアフリカへと非常に広く、IUCNは種全体としての絶滅リスクを低い(LC=低懸念)と評価しています。関東地方では1990年代以降に繁殖地が増える傾向が見られ、神奈川県では1995年に初めての繁殖が確認されました。日本国内でも、都市の川や公園で見かける機会は増えているようです。
養殖業とのあつれき
魚食性の大型鳥という性格上、養魚場や漁業関係者からは「魚を食べてしまう鳥」として扱われる場面もあり、地域によっては駆除の対象になっています。イングランドとウェールズでは1970年代後半に年4,600羽以上が駆除され、1979年の繁殖ペア数が5,400ペアまで激減した記録もあります。人と大きな水辺の鳥が同じ水辺を使いつづけていくための調整は、今も各地で続いています。
関連する生きもの

参考
- BirdLife International 2019. Ardea cinerea. The IUCN Red List of Threatened Species 2019(低懸念指定と個体数動向)
- 叶内拓哉ほか『日本の野鳥』(新版)山と溪谷社・山渓ハンディ図鑑 7、2014年(アオサギの識別・鳴き声の解説)
- 上野裕介「生態図鑑 アオサギ」Bird Research News 5(9)、2008年(生態と繁殖の総説)
- 浜口哲一「アオサギ」『日本動物大百科 3 鳥類I』平凡社・1996年(コロニー形成と巣づくりの一次資料)


