ヨウムは、アフリカの森に住む大型のインコです。灰色の羽と赤い尾を持ち、人の言葉を意味とともに使えるほど知能が高いことで注目されてきました。寿命は40〜60年と長い一方、乱獲によって数を減らし、今は絶滅のおそれがあります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:オウム目 Psittaciformes
- 科:インコ科 Psittacidae
- 属:ヨウム属 Psittacus
- 種:ヨウム Psittacus erithacus
和名・英名
- 和名:ヨウム(洋鵡)
- 英名:Grey parrot / African grey parrot
別名・仲間
単に「ヨウム」と呼ぶときは、コンゴ地方に多いこの種を指すことがほとんどです。以前は亜種とされていたコイネズミヨウム(Psittacus timneh)は、現在では別の種として分けられています。こちらは体がやや小さく、くちばしの色などで見分けられます。コンゴヨウムは中部アフリカに、コイネズミヨウムは西アフリカに分布します。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約33cm |
|---|---|
| 分布 | アフリカ中部・西部(コンゴ盆地を中心とした熱帯林) |
| 生息環境 | 熱帯林とその周辺。マングローブや農地にも現れる |
| 食べ物 | 果実・種子・木の実。とくにアブラヤシの実を好む |
| 寿命 | 飼育下で40〜60年ほど |
| 保全状況 | IUCN:EN(絶滅危惧)。ワシントン条約 附属書I |
※ ワシントン条約(CITES)とは、絶滅のおそれのある野生生物の国際的な取引を規制する条約です。附属書Iは、もっとも規制が厳しく、商業目的の取引が原則禁止される区分です。

高い知能を持つ鳥
ヨウムがよく知られているのは、その高い知能です。鳥の中でもとくに賢く、人の言葉を覚えて、場面に合わせて使うことができます。ただ声をまねるだけではない点が、ほかの鳥と違います。

言葉を「意味」で使う
アレックスという1羽の研究
アレックスという名のヨウムは、研究者のペパーバーグ博士とともに、およそ30年にわたって学習の研究に加わりました。アレックスは100を超える言葉を覚え、ものの名前や色を問われると、声で答えられたと報告されています。ほしいものがあるときには「グレープ(ぶどう)がほしい」のように、意味の通る言い方をしたとされます。二つのものを見せて「同じか、違うか」を問うと、正しく答えることもあったと伝えられています。
色・形・数を答える
アレックスは、色や形、ものの数を区別して答えられたといいます。「何もない」という状態を表す言葉を使ったという報告もあり、これは数の考え方につながるものとして注目されました。こうした結果から、ヨウムはただ音をまねるのではなく、言葉と意味を結びつけて使える鳥だと考えられています。アレックスは2007年に亡くなりましたが、その研究は今も鳥の知能を考えるうえで大切な例とされています。
人の声をまねるしくみ
鳥には、ヒトのような声帯がありません。代わりに、のどの奥にある「鳴管(めいかん)」という器官で音を作ります。ヨウムはこの鳴管と舌を巧みに動かし、人の声や生活音までよく似せてまねます。電子音や口笛を覚えることもあるそうです。ただし、まねが上手なことと、言葉の意味を理解することは別の話です。
なぜそんなに賢いのか
体の割に大きな脳
ヨウムは、体の大きさの割に大きな脳を持ちます。とくに、問題を解くことにかかわる部分が発達しているとされています。この脳のつくりが、高い学習の力を支えていると考えられています。その知能は、幼い子どもや一部のサルに例えられることもあります。
群れの暮らしと学び
野生のヨウムは、大きな群れで暮らします。仲間とさまざまな声でやり取りをし、互いの鳴き方を覚えていきます。仲間と関わり合いながら育つ暮らしが、賢さと結びついていると考えられています。地域によって鳴き方に違いがあり、いわば「方言」のようなものも知られています。
見た目とアフリカでの暮らし
灰色の羽と赤い尾
全身は灰色で、羽の一枚一枚のふちが淡く、うろこのような模様に見えます。尾は鮮やかな赤色。目のまわりには羽のない白い部分があり、くちばしは黒色です。大きさはハトより一回り大きいくらいで、インコの仲間の中では大型です。オスとメスは見た目がよく似ていて、外見だけで区別するのは難しいとされています。

森での暮らし
木の実や果実を食べる
ヨウムは、熱帯林で果実や種子、木の実を食べます。とくにアブラヤシの実を好み、その実を求めて木々を渡り歩きます。硬い殻も丈夫なくちばしで割り、中身を取り出して食べます。食べ残した実や種を落とすことで、森に木を広げる役目も果たすとされています。地面に降りて、土や粘土を口にすることもあります。これは、食べ物に含まれる毒を和らげるためと考えられています。
樹洞での子育て
繁殖のときは、雌雄のつがいで木のうろ(樹洞)に巣を作ります。メスが卵を温める間、オスが餌を運びます。ヒナは親から餌をもらって育ち、しばらくたってから巣立ちます。普段は大きな群れで過ごし、夕方には決まった場所へ数百羽が集まってねぐらをとることもあります。
オウムとの違い
ヨウムはインコの仲間
大型で「オウム」と呼ばれることもありますが、ヨウムはインコの仲間です。オウムとインコはどちらもオウム目に含まれますが、頭の飾り羽(冠羽)のあるなしで見分けられます。オウムには立てたり寝かせたりできる冠羽があり、ヨウムにはありません。どちらも足で器用に食べ物をつかんで口へ運ぶ点は共通しています。
| ヨウム(インコの仲間) | 冠羽がない。灰色の羽に赤い尾。アフリカの森に住む |
|---|---|
| オウム(オウム科) | 頭に冠羽がある。白や黒などの種が多い。おもにオセアニアに住む |
長生きする鳥
ヨウムは、鳥の中でも長生きな部類です。飼育下では40〜60年ほど生きるとされ、人の一生に近い時間をともにします。長く生きるぶん、飼うには長い年月にわたる世話が必要です。飼い主より長く生きることもあり、次の世話を誰が引き継ぐかが問題になる場合もあります。賢く感情も豊かなため、退屈すると羽をむしるなど、心の負担が体に表れることもあります。

人気ゆえの危機
ペット人気と乱獲
その賢さと人なつこさから、ヨウムはペットとして世界中で人気を集めてきました。しかし、その人気が野生のヨウムを追いつめてきました。売るために野生の個体が大量に捕らえられ、森の伐採で暮らす場所も失われています。ある推計では、これまでに数百万羽ものヨウムが野生から捕らえられてきたとされます。輸送の途中で命を落とす個体も多く、野生の数は大きく減りました。日本にも、かつては多くのヨウムが輸入されていました。
守るための取り組み
こうした状況を受けて、2016年にはワシントン条約で、野生のヨウムの国際的な取引が原則禁止されました。IUCNのレッドリストでも、絶滅危惧(EN)とされています。各地で保護区が設けられ、密猟を取りしまる活動も続いています。今ペットとして飼われているヨウムの多くは、飼育下で生まれた個体です。野生のヨウムを森で守ることは、これからの大きな課題とされています。
参考
- IUCN Red List: Psittacus erithacus(Grey Parrot)評価ページ
- CITES(ワシントン条約): Psittacus erithacus 附属書Iの記載
- Pepperberg, I. M., The Alex Studies(ヨウムの認知研究)


