ダイサギ

水鳥類

ダイサギは、日本のサギ科でもっとも大きな白いサギです。全長は約90cmでアオサギに並ぶ大型で、田んぼや川に立つ姿は白鷺の代表格として知られます。夏羽と冬羽で嘴の色が黒と黄色に入れ替わり、繁殖期には胸と背に長い飾り羽が伸びます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:ペリカン目 Pelecaniformes
  • 科:サギ科 Ardeidae
  • 属:アオサギ属 Ardea
  • 種:ダイサギ Ardea alba

和名・英名

  • 和名:ダイサギ(大鷺)
  • 英名:Great Egret

学名と属をめぐる議論

ダイサギは、体格や首の長さがアオサギ属(Ardea)に近い一方、真っ白な羽衣と華奢な首の構造はコサギ属(Egretta)にも通じます。両方の性質を持つため、書籍によって Ardea alba と Egretta alba のどちらでも扱われてきました。

近年では、ダイサギだけを独立させた「ダイサギ属(Casmerodius)」に置く見方もあります。分類の位置づけは研究者と時期でぶれる種で、和名の「大鷺」もこの中間的な立ち位置に対応しています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約90cm(アオサギに並ぶ日本最大級のサギ)
分布世界の熱帯・温帯に広く分布。日本には亜種チュウダイサギ(夏鳥)と亜種ダイサギ(冬鳥)が入る
生息環境水田・川・湖沼・干潟・海岸のマングローブなど浅い水辺
食性魚・両生類・爬虫類・昆虫。ときに小型哺乳類や鳥類の雛まで襲う動物食
繁殖集団営巣地「サギ山」で樹上に営巣。近縁のサギ類と混群を作る
保全状況IUCN:LC(低危険種)/環境省RLでは指定なし

姿と体のつくり

90cmの白い巨体

長身のダイサギ全身
Calibas, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ダイサギは全長約90cmで、日本ではアオサギと並ぶ最大級のサギです。全身が真っ白で、首と脚が非常に長く、嘴も鋭く長く伸びます。雌雄同色で、体格でも羽衣でもオスとメスの見分けはつきません。

足は全体に黒く、コサギの黄色い足指のような特徴もありません。歩き方はゆったりで、水面に立つと影絵のように長身のシルエットが浮かびます。

夏羽と冬羽 ―入れ替わる嘴の色と飾り羽

首を伸ばして毛繕いするダイサギ
Basile Morin, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

夏羽(繁殖期)

春から夏の繁殖期には嘴が黒く変わり、足の付け根がわずかに黄色みを帯びます。胸と背には長く優雅な飾り羽(レース状の装飾羽)が伸び、白い体を一段と大きく見せます。この飾り羽は求愛と縄張り誇示に使われ、首と腰の羽を扇のように広げる姿がよく観察されます。

繁殖の準備が整った個体では、眼の周囲(眼先)が青緑色に染まる婚姻色が現れることがあります。数日〜数週間しか出ない短い変化で、条件が合ったときにだけ観察できる特別な羽衣です。

冬羽(非繁殖期)

秋から冬にかけては嘴が黄色くなり、飾り羽は落ちます。眼先の緑色も抜け、全体に一段静かな白い姿へと戻ります。田んぼで見かける冬のダイサギは、この黄色い嘴のシルエットが目印です。

白いサギの見分け方 ―4種の識別ポイント

直立したダイサギの全身 ―識別の基準姿勢
Vengolis, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

日本の水辺で見かける白いサギは、ダイサギ・チュウサギ・コサギ・アマサギの4種が中心です。大きさと嘴・足の色、そして口の切れ込みで見分けられます。

ダイサギ全長 約90cm・最大/夏は嘴が黒・冬は黄色/足全体が黒/口角が眼より後ろまで切れ込む
チュウサギ全長 約68cm・中型/夏は嘴が黒・冬は黄色/足全体が黒/口角の切れ込みは眼の下で止まる
コサギ全長 約60cm・小型/嘴は年中黒/足指が黄色い/頭の後ろに冠羽
アマサギ全長 約50cm・小型/夏は頭・胸・背が飴色/嘴と足は年中黄橙/牛や畦を歩く

チュウサギとの違い ―口角の切れ込み

ダイサギとチュウサギは体色も嘴の季節変化も似ています。決め手になるのは口の切れ込みで、ダイサギは口角(口の切れ込みの奥)が眼よりも後ろまで食い込みます。チュウサギは眼の下で止まるため、正面から見た顔の「口の長さ」が違って見えます。

大きさもダイサギが約90cm・チュウサギが約68cmと差がありますが、遠目や単独個体ではわかりにくいことがあります。双眼鏡なら口の切れ込みが確実な決め手です。

コサギとの違い ―黄色い足指と黒い嘴

コサギはダイサギよりひとまわり以上小さく、嘴が年中黒いままです。もっとも目立つのは足指で、コサギは黒い脚の先だけが鮮やかな黄色になります。ダイサギは足全体が黒く、この配色差は遠目にもわかります。

コサギは頭の後ろに二本の長い冠羽(かんう)が伸び、繁殖期にはこれを扇状に広げます。ダイサギに冠羽はなく、飾り羽は胸と背に集中する点でも姿が違います。

アマサギとアオサギ

アマサギは白いサギのなかでもっとも小型で、夏羽では頭・胸・背が薄い飴色(オレンジ)に染まります。牛の背に乗る姿で有名で、嘴と足が年中黄橙のためほかの白鷺と混同されにくい種類です。

アオサギはダイサギと同じくらい大きい灰青色のサギです。羽衣が白くないので識別に迷うことはあまりありませんが、水辺で並ぶと「日本最大のサギ2種」がひと目でわかります。

暮らしと狩り

S字に縮めた首と一撃

水面で首を折りたたむダイサギ
Rhododendrites, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

静止して待つ

ダイサギは浅い水辺に立ち、首をS字に折りたたんで獲物を待ちます。魚や小動物が近づいた瞬間、S字を一気に伸ばして嘴を突き出し、一撃で捕らえる待ち伏せ型の狩りです。この姿勢は「サギの立ち姿」として絵にもよく描かれます。

歩いて追い出す

浅瀬をゆっくり歩きながら獲物を追い出す方法もとり、水を蹴って驚かせて食べる「追い出し漁」も観察されます。長い脚は水底を歩くための道具でもあります。

魚以外もよく食べる

獲物を嘴にくわえるダイサギ
Frank Schulenburg, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

魚から哺乳類・鳥類まで

主食は魚ですが、ダイサギの獲物はカエルやザリガニ・大型の水生昆虫、田んぼではネズミやモグラも含まれます。ときには他の鳥の巣を襲って雛を捕食することもあり、白い姿からは想像しにくい肉食の顔を持っています。

採食縄張りへの厳しさ

採食のための縄張りには厳しく、侵入したダイサギに向けて低く「ガガガ」と鳴いて追い払う場面も観察されます。

サギ山 ―集団で営む繁殖地

サギ山の営巣・雛と親鳥
Mike Baird, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

ダイサギは繁殖期に一箇所に集まって集団営巣地「サギ山」を作ります。同じ木の別枝にコサギ・アマサギ・ゴイサギなど別種が混じって巣を掛けることも多く、複数種で構成されるにぎやかな繁殖地になります。

混群営巣の利点

集団で営巣するのは、警戒と防衛の効率を上げるためと考えられます。カラスや猛禽が現れると、複数の親鳥が一斉に飛び立って威嚇するため、単独より雛の生存率が高くなります。

サギ山と人里 ―近隣とのつきあい

サギ山は数百つがい規模になることもあり、糞や鳴き声が近隣の生活と摩擦を生むこともあります。神社の森や公園がサギ山として使われる例もあり、里山と鳥のつきあい方が試される場所でもあります。

亜種と季節の入れ替わり

チュウダイサギ Ardea alba modesta の姿・合成写真
JJ Harrison, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

日本のダイサギは2つの亜種が季節をずらして入れ替わり、ほぼ一年を通じて見られます。夏と冬で「同じダイサギ」に見えても、羽衣の主は別亜種であることが多いとされます。

チュウダイサギ ―夏鳥として繁殖

亜種チュウダイサギ(Ardea alba modesta)は、春に本州から九州へ渡ってきて繁殖し、冬になると南方へ移動します。夏に田んぼで見かけるダイサギの多くはこの亜種で、基亜種よりわずかに小型です。一部の個体は南日本で越冬します。

亜種ダイサギ ―冬鳥として飛来

亜種ダイサギ(Ardea alba alba)は、中国東北部などで繁殖し、冬になると日本列島に渡ってきて越冬します。チュウダイサギよりわずかに大きく、冬羽の白鷺の多くはこの亜種です。夏鳥と冬鳥の入れ替わりで、日本人は年間を通して「ダイサギ」を目にすることになります。

鳴き声とコロニーの騒がしさ

繁殖期の「ゴァー」というだみ声

ダイサギの声は低く濁った「ゴァー」で、繁殖期に多く発せられます。優雅な姿とはかけ離れた金属的なだみ声で、初めて聞くと同じ鳥だと信じにくいほどです。

縄張りを守る「ガガガ」

採食のための縄張りに侵入するほかの個体には、「ガァァァ」あるいは「ガガガ」と連続する声で追い払います。サギ山では複数個体の声が重なり、離れた場所からでも群れの位置がわかります。

保全状況と人との関わり

IUCNと国内評価

IUCNレッドリストではLC(低危険種)で、世界規模での絶滅懸念はありません。日本の環境省レッドリストにも指定はなく、水田や河川で身近に観察できる普通種のひとつです。

白鷺の羽と歴史

ヨーロッパや北米では19世紀末、婦人帽の装飾に使うためダイサギの飾り羽が乱獲され、個体数が激減した歴史があります。この経験が国際的な鳥類保護法の出発点のひとつとなり、現在の保全体制につながっています。日本国内では狩猟対象ではなく、水辺のシンボルとして親しまれています。

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参考

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