シジュウカラ

小型陸鳥

シジュウカラは、胸に黒いネクタイのような縦線を持つ全長14cmほどの小鳥で、市街地から山地まで日本各地に暮らします。近年は「ジャージャー」「ピーツピ」など20種類以上の鳴き声と、語順のある「文法」を使い分ける動物言語の研究対象として世界的に注目されている種でもあります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:スズメ目 Passeriformes
  • 科:シジュウカラ科 Paridae
  • 属:シジュウカラ属 Parus
  • 種:シジュウカラ Parus cinereus

和名・英名

  • 和名:シジュウカラ(四十雀)
  • 英名:Cinereous Tit/Japanese Tit/Eastern Great Tit

学名と和名の由来

本種はかつて Parus major(ヨーロッパシジュウカラ)と同一種の1亜種 Parus major minor として扱われていました。2005年の分類研究で P. majorP. minorP. cinereus の3種に分割され、その後の研究を経て、現在の日本鳥類目録(2024年改訂第8版)や IOC World Bird List では本種を Parus cinereus として扱っています。以前は Parus minor の学名も広く使われていました。

和名の「シジュウカラ(四十雀)」は、地鳴きの「ジジジッ」が「シジュウ」に聞こえるという説と、「スズメの40倍珍しい」ことに由来するという説があります。「カラ」はシジュウカラの仲間(カラ類)を指す古い呼び名です。種小名 cinereus はラテン語で「灰色の」を意味し、体の基調色に由来します。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約14.5cm(13〜16.5cm)/翼開長 約22cm/体重 11〜20g(スズメ大)
分布日本を含む東アジア・ロシア極東。日本では小笠原諸島を除く全国に留鳥
生息環境市街地の公園や庭などの平地から標高の低い山地の林・湿原まで
食性雑食。果実・種子・昆虫・クモ。地表でも樹上でも採食
繁殖4〜7月に樹洞や巣箱で7〜10卵。年1〜2回。抱卵12〜14日/巣立ちまで16〜19日
保全状況IUCN:LC(低危険種)/環境省RLに指定なし

姿と体のつくり

スズメ大の小鳥

枝に止まるシジュウカラの全身
Laitche, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

全長は約14.5cmで、スズメと同じくらいの大きさです。体重は11〜20gと小型ながら、シジュウカラ科のなかでは大型の部類に入ります。頭頂は黒く・頬と後頸に白い斑紋・背は青みがかった灰色や黒褐色・腹は淡褐色と、コントラストのはっきりした配色をしています。

胸の黒いネクタイ ―オスとメスの見分け

シジュウカラのオス・胸の黒帯が太い
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
シジュウカラのメス・胸の黒帯が細い
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

本種の一番の特徴が、喉から下尾筒(尾羽基部の下面)まで走る1本の黒い縦線です。「黒いネクタイ」とも呼ばれるこの線は、オスとメスで太さが違います。オスは太く濃く、メスは細く、幼鳥は特に細くて不明瞭です。餌台の個体でも、この線の太さで性別を識別できます。

翼は灰黒色で、大雨覆の先端に白い斑紋があり、左右1本ずつの白い翼帯として静止時にも目立ちます。嘴は黒く、足は淡褐色です。日本南部の亜種イシガキシジュウカラは背の黄色みがなく、喉から胸の黒帯も太いなど、他亜種より全体に黒っぽい印象になります。

「シジュウカラ語」 ―世界初の動物言語研究

枝に止まるシジュウカラ・鳴く姿
lonelyshrimp, Public domain, via Wikimedia Commons

シジュウカラは動物言語学の代表的な研究対象として知られています。京都大学(現在は東京大学先端科学技術研究センター)の鈴木俊貴氏らのグループが、この鳥が「単語」と「文法」を使いこなしていることを実験で示してきました。

鈴木俊貴による発見のきっかけ

鈴木俊貴氏は2008年、長野県軽井沢町の森で巣箱を見回っていました。そのとき木を這い登るヘビに気づいたシジュウカラが、他の外敵とは違う「ジャージャー」という声を出していることに気づきます。道端の木の枝をヘビに見立てて他の巣箱に近づけると、同じ鳴き声が出ました。この鳴き声を録音し、逆に他の巣箱から音を流して反応を確かめる、といった実験を重ねていきました。

単語のような使い分け

ジャージャー ―ヘビ警戒

「ジャージャー」はヘビが近づいたときに出す警戒声で、この声を聞いた他個体はヘビを探すように地面を見下ろす行動を取ります。木の枝など棒状のものを見せて音声を流すと、実物のヘビでなくても同じ反応をすることが確かめられました。

ヒヒヒ ―タカ警戒

「ヒヒヒ」はタカや猛禽類など空中の捕食者を警戒する声で、この声には周囲を上空に向けて警戒する反応が見られます。ヘビ用と猛禽用の警戒声を使い分けている点が特徴です。

ピーツピ/ヂヂヂヂ ―警戒と集合

「ピーツピ」は一般的な警戒を意味し、「ヂヂヂヂ」は「集まれ」の合図です。このほか「ツーピツーピ」「チュパチュパチュパ」など約20種類の鳴き声が確認されており、意味の異なる声を状況に応じて選んで発しています。

語順のある「文法」

単語の組み合わせで新しい意味

もっとも大きな発見は、シジュウカラが「単語」を組み合わせて意味を作る文法を持つことです。「ピーツピ(警戒しろ)」+「ヂヂヂヂ(集まれ)」を続けて「ピーツピ・ヂヂヂヂ」と鳴くと「警戒しながら集まれ」の意味になり、聞いた仲間はまず周囲を警戒しつつ声の主に接近します。

語順を逆にすると通じない

この語順を逆にして「ヂヂヂヂ・ピーツピ」の順で流すと、シジュウカラは反応しません。人工音声の実験で「意味は同じでも語順が違えば通じない」ことが示され、単なる単語の連呼ではない「統語(syntax)」の存在が確かめられました。この結果は2016年に Nature Communications 誌で報告されています。

コガラとの相互理解

シジュウカラは冬にコガラなど別種と混群を作ります。この場面で、シジュウカラとコガラは互いに相手種の警戒声を理解し、反応できることが示されました。さらに一部の単語をコガラ語に置き換えた「シジュウカラ・コガラ混成文」を作っても、語順の文法が正しければシジュウカラは意味を理解できるとされます。動物種を越えて言語を「翻訳」する能力を持っていることになります。

脳内イメージの構築

2024年時点で、鈴木氏らはシジュウカラが判別している「文」を200種類以上確認しています。加えて、警戒声を聞いたシジュウカラが単に周囲を機械的にうかがうのではなく、脳内で警戒対象(ヘビや猛禽)のイメージを再構築して行動していることも示されました。「概念」を扱う認知能力を持つ動物として位置づけられています。

後入りを促す翼のジェスチャー

2024年3月には Current Biology 誌で、シジュウカラが翼を振って、番いの相手に巣穴へ先に入るよう伝えるジェスチャーを使うことが報告されました。ジェスチャーは従来、ヒトや類人猿に特有と考えられていた行動で、鳥類の認知研究の新たな観察例として注目されています。

生態と暮らし

混群でカラ類のリーダーに

非繁殖期(秋〜冬)には数羽から10数羽の群れを作り、時には数十羽の大群になります。シジュウカラ科の他種(コガラ・ヤマガラ・ヒガラなど)に加え、メジロ・コゲラなども加わった小規模な混群を形成することも多く、混群では警戒声のよく通るシジュウカラがリーダー役を果たすとされます。

雑食 ―虫と種子

幼虫をくわえるシジュウカラ
Tisha Mukherjee, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

食性は雑食で、果実・種子・昆虫・クモなどを食べます。特に小型の節足動物と種子を好み、地表でも樹上でも器用に採食します。冬の餌台にはヒマワリの種を目当てに集まり、時には片脚で種を押さえて嘴で殻を割る器用な動作を見せます。

巣箱と樹洞で子育て

穴に椀状の巣を作る

樹洞やキツツキが開けた穴の内側、人が設置した巣箱など、地面から離れた穴を巣として利用します。メスが主にコケや獣毛・ゼンマイの綿を組み合わせて椀状の巣を作り、4〜7月に7〜10個の卵を年1〜2回に分けて産みます。

抱卵から巣立ちまで

抱卵はメスのみで12〜14日、雛は16〜19日で巣立ち、その後も約1か月は親と一緒に過ごして生き方を学びます。石垣の隙間や伏せた植木鉢に営巣する例もあり、身近な環境でも繁殖に成功する適応力の広さがうかがえます。

日本の4亜種

日本には基亜種を含む4つの亜種が留鳥として周年生息します。分布と体色に差があり、南方の亜種ほど背の黄色みが薄く全体に黒っぽくなる傾向があります。

シジュウカラ(基亜種)北海道〜九州・対馬・壱岐・伊豆諸島など。もっとも広く分布
アマミシジュウカラ奄美諸島(奄美大島・徳之島)
オキナワシジュウカラ沖縄諸島(沖縄島・屋我地島・座間味島)
イシガキシジュウカラ八重山諸島(石垣島・西表島)/背の黄色みなく黒帯太い

人との関わり ―身近な小鳥

市の鳥・切手

神奈川県茅ヶ崎市・座間市の「市の鳥」に指定されています。1997年から2014年まで販売された70円普通切手の絵柄にもなり、公園や庭でよく見かける身近な小鳥として長く扱われてきました。

都市化と鳴き声の変化

近年の研究では、車通りの多い低音の多い環境では、シジュウカラの鳴き声が高くなることも確認されています。人の暮らしが変わると鳥の声も変わる、という都市生態学の観点からも研究が続けられています。

保全状況

IUCNレッドリストではLC(低危険種)で、種としての絶滅懸念はありません。日本の環境省レッドリスト(2020年改訂版)にも指定はなく、身近な留鳥として安定して見られる種のひとつです。

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参考

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