トビは、「ピーヒョロロ」という声で知られる、日本でもっとも身近な大型の鳥です。海辺や川、街の上空をゆったりと輪を描いて舞う姿でおなじみです。動物の死骸などを食べる、空の掃除屋として暮らしています。トンビの呼び名でも親しまれ、タカやワシと同じ猛禽の仲間です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:タカ目 Accipitriformes
- 科:タカ科 Accipitridae
- 属:トビ属 Milvus
- 種:トビ Milvus migrans
和名・英名
- 和名:トビ(鳶)/別名 トンビ
- 英名:Black kite
別名と亜種
「トビ」と「トンビ」は同じ鳥を指し、地域や場面でどちらもよく使われます。トビは世界に広く分布し、日本にいるのは東アジアの亜種です。ユーラシアやアフリカのトビとくらべ、翼の下に白い模様が出ることが多いといった違いがあります。和名の「トビ」は、飛ぶ姿にちなむともいわれますが、由来にはいくつかの説があります。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約59〜69cm/翼を広げた幅 約150〜160cm(メスがやや大きい) |
|---|---|
| 体重 | 約0.6〜1kg |
| 分布 | ユーラシア・アフリカ・オーストラリアに広く分布。日本では北海道〜九州に周年生息 |
| 生息環境 | 海辺・川・湖・農地・都市。とくに漁港の周りに多い |
| 食べ物 | 動物や魚の死骸・生ゴミが中心。カエル・ネズミ・魚などの小動物も |
| 寿命 | 野生でおよそ10〜20年とされる |
| 保全状況 | IUCN:LC(軽度懸念)。日本では身近な普通種 |

いちばん身近な猛禽
バチ形の尾と褐色の体
大きさとメスの優位
トビは、全長60センチメートル前後の大型の鳥で、翼を広げた幅は1.5メートルほどになります。同じ猛禽のなかでもかなり大きく、メスのほうがオスよりやや大型です。体は褐色と白のまだら模様で、目の周りが黒っぽく見えます。空高くを、ほとんど羽ばたかずに輪を描いて舞う姿がよく見られます。電柱やアンテナ、木のてっぺんに、少し前かがみで止まる姿もおなじみです。
バチ形にへこんだ尾
飛んでいるトビでまず目を引くのは、尾の形です。トビの尾は中央がへこんだバチ形をしており、「魚の尾のよう」とも言われます。ほかの多くのタカやワシは尾の後ろが丸いか真っ直ぐで、この切れ込みがトビならではの特徴です。ただし、尾を広げると切れ込みが目立たなくなることもあります。
海辺と街に多い
全国に暮らす留鳥
日本のトビは、北海道から九州まで、渡りをせず一年じゅう暮らす留鳥です。海辺・川・湖・農地から都市まで、幅広い環境で見られます。とくに魚や食べ物の多い漁港の周りには、たくさんのトビが集まります。人のそばで暮らすことに慣れた、身近な猛禽です。
世界でも数の多い猛禽
トビは、ユーラシア・アフリカ・オーストラリアと、世界の広い範囲に分布します。世界でもっとも数の多い猛禽の一つとされ、地域によっては渡りをする個体もいます。さまざまな環境や食べ物にうまく適応できることが、これだけ広く暮らせる理由だと考えられています。人が漁港や町を築き、食べ物の残りが増えたことも、トビにとっては暮らしやすさにつながってきました。

空の掃除屋
死骸を片付ける
腐肉食と生ゴミ
トビの主な食べ物は、動物や魚の死骸です。海辺に打ち上げられた魚や、道で命を落とした小動物などを片付けるため、「空の掃除屋」とも呼ばれます。漁港では、水あげのときにこぼれた魚や、船から捨てられる小魚を目当てに集まります。都市では、生ゴミを食べることもあります。腐ったものを食べても平気な丈夫な体をもっています。死骸をすばやく片付ける働きは、自然のなかで病気の広がりを抑えることにもつながっています。
狩りは得意ではない
トビは猛禽ですが、生きた獲物を追う狩りはあまり得意ではありません。カエル・ネズミ・トカゲ、時には生きた魚をつかまえることもありますが、素早い獲物を追いつめる力はオオタカなどにおよびません。多くの時間を、上空をすべるように飛びながら、食べられるものを探すことに使います。
人の食べ物を奪うトビ
観光地の海辺などでは、人の手から食べ物を奪うトビが知られています。上空から音もなく舞いおり、弁当やパンをすばやくくわえて飛び去ります。人が食べ物を持っていることを覚えた行動で、江の島や鎌倉など各地で注意が呼びかけられています。ときには手や顔にかすり傷を負わせることもあり、人とトビの、身近ゆえのトラブルの一つになっています。

木の上の子育て
春の巣づくりとヒナ
トビは春になると、林や社寺の高い木の上に、枯れ枝を組んだ巣を作ります。巣には木の枝だけでなく、ビニールや紙、布きれなど身近なものが使われることもあります。卵はふつう2〜3個で、オスとメスが協力して育てます。ヒナは1〜2か月ほどで巣立ち、しばらくは親のそばで飛び方や食べ物の探し方を覚えます。同じ縄張りを毎年使い、前の巣に手を入れながら子育てを繰り返すことも多いとされます。街なかのトビは、街路樹や公園の木で子育てすることもあります。

鷹や鷲との違い
尾の形と暮らしぶりの違い
トビは「タカやワシと同じ仲間」ですが、身近なだけに、ほかの猛禽と混同されることもあります。大きさや尾の形、暮らしぶりに、それぞれの特徴があります。
| トビ | 全長60cm前後。尾がバチ形にへこむ。市街地や海辺で群れて舞う。腐肉食が中心 |
|---|---|
| ノスリ | 全長50cm前後。尾は丸い。腹が白っぽく、田畑の上でよく見られる |
| オオタカ | 全長50〜57cm。翼が短く尾が長い。森や都市で小鳥をおそう |
市街地や海辺で群れて舞い、尾をへこませて滑空する姿は、身近なトビならではの日常です。「ピーヒョロロ」と鳴きながら輪を描くのも、トビらしい姿です。ワシやタカの多くは単独で行動し、群れて舞うことは多くありません。

群れる猛禽
集団ねぐらと、輪を描く飛行
多くのタカやワシは単独やつがいで暮らしますが、トビは群れを作ることで知られます。夜には、林や大きな木に何十羽も集まって眠ります。これが集団ねぐらです。昼間は、あたためられた空気の上昇気流に乗り、羽ばたかずに何羽もが輪を描いて舞います。えさ場に集まったトビが、いっせいに空を旋回する光景も見られます。冬の夕方には、あちこちのトビが同じ方向へ飛んでいき、ねぐらの木へ集まっていく様子も見られます。

空にひびく「ピーヒョロロ」
のどかな口笛のような声
トビの「ピーヒョロロロロ」という声は、日本の空でもっとも親しまれた鳥の声の一つです。よく晴れた空に響くその声は、秋の季語にもなっています。この鳴き声は、仲間との連絡や、縄張りを知らせる役割をもつと考えられています。姿は小さくて見えなくても、頭上からこの声が聞こえてくれば、そこにトビがいることが分かります。童謡や物語にもたびたび登場し、日本人にとってなじみ深い音風景の一つになっています。
トビの豆知識
カラスとのにらみ合い
身近な空では、トビとカラスがもめる場面がよく見られます。カラスは群れでトビを追いかけ回し、背後からつつくように攻撃することがあります。大きな体のトビも、すばやいカラスの集団におされ、逃げることが少なくありません。えさ場や巣の近くをめぐる、身近な鳥どうしの競い合いです。
「トンビがタカを生む」ということわざ
「トンビがタカを生む」は、平凡な親からすぐれた子が生まれることをたとえたことわざです。トビが、狩りの得意なタカより一段下に見られてきたことがうかがえます。実際にはトビとタカは別の種で、トビからタカが生まれることはありません。身近なだけに、人の暮らしのなかで多くの言葉やたとえに登場してきた鳥だといえます。




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参考
- English Wikipedia「Black kite」(分類・形態・食性・行動)
- ウィキペディア「トビ」(日本の分布・尾の形・鳴き声・食性)
- IUCN Red List「Milvus migrans」(保全状況の評価=軽度懸念)
画像の出典
- アイキャッチ(顔):Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 飛翔(尾):Afsarnayakkan, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 獲物を食べる個体:Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 地上の個体:Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 飛翔(下面):Ludvig14, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 旋回する個体:Dr. Raju Kasambe, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 飛翔する個体:Dr. Raju Kasambe, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


