レッキス

ウサギ目

レッキス(Rex)は、ビロード状の短い被毛を持つカイウサギの品種で、この特殊な毛質を後の派生品種に伝えた元祖的な系統です。1919年にフランスの農家で自然発生した突然変異個体が起源で、被毛の長さが通常の半分程度・毛が寝ずに垂直に立つ独特の触感が特徴。体重は3.5〜4.75kg程度の中型で、後にネザーランドドワーフとの交配で作られた小型派生「ミニレッキス」の原点となった古参品種です。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:ウサギ目 Lagomorpha
  • 科:ウサギ科 Leporidae
  • 属:アナウサギ属 Oryctolagus
  • 種:ヨーロッパアナウサギ Oryctolagus cuniculus
  • 品種:レッキス Rex

和名・英名

  • 和名:レッキス/レックス/スタンダードレックス
  • 英名:Rex、Standard Rex、Rex Rabbit
  • 仏名:Rex(レックス)

別名・品種名の由来

品種名の「Rex」はラテン語で「王」を意味する語で、1924年のパリ家畜展で発表された際に「毛質の王」を意味する称号として付けられた命名です。日本のペットショップで「レッキス」と表記されるのはフランス語読みに近い発音で、原音のRexは英語では「レックス」と読まれます。分類学的にはヨーロッパアナウサギ(Oryctolagus cuniculus)の家畜化型の一品種で、他のカイウサギ品種と同じく生物学的には同一種の派生型ですが、被毛の遺伝子変異でビロード状の毛質を持つ点が他品種と決定的に異なる特徴です。

大きさ・特徴などの基本データ

大きさ体重 3.5〜4.75kg(ARBA基準:7.5〜10.5ポンド)
体型コマーシャルタイプ・骨太でずんぐり
耳の長さ約13cm前後(直立耳)
被毛の長さ約1.25cm(通常品種の半分以下)
被毛の特徴プラッシュコート(ビロード状の短毛)
毛色ARBA公認16色(ブラック・ブルー・キャスター・チンチラ・オパール・ホワイト・ブロークン など)
原産国フランス(1919年自然発生の突然変異)
ARBA公認年1925年頃
寿命適切な世話でおよそ7〜11年
性格穏やかで人懐こい

作出の歴史

1919年フランスの偶発的な発見

ノルマンディーの一腹から

レッキスの起源は1919年、フランス・ノルマンディー地方Louché-Pringéのウサギ農家 Amédée Gillet の飼育場で、一腹の子ウサギに被毛が通常の半分程度でビロード状の質感を持つ個体が現れたことにあります。当時の家畜ウサギは主に肉用・毛皮用で、この突然変異個体は農家からは「奇妙な子」として扱われました。しかし地元の司祭 Abbot Gillet がその特殊な毛質に注目し、系統的な選抜固定を始めたのがレッキスの始まりです。

1924年パリ家畜展での正式発表

1924年のパリ国際家畜展(Salon International de l’Aviculture)で、系統化された初期のレッキス個体が正式に発表され、そのビロード状の毛質は毛皮産業界と品種ショー界の双方で大きな注目を集めました。「毛質の王」を意味する「Rex」の品種名はこの発表時に命名され、以降ヨーロッパ全域へ短期間で広がる流れとなります。

米国輸入と派生品種

1920年代のARBA公認

1925年頃までに米国へ輸入され、米ウサギ協会(ARBA)が新品種として公認しました。第二次大戦前後には米国の毛皮産業でレッキス毛皮が高級品として流通し、家畜ウサギ品種の中でも被毛の特殊性から特別視される歴史を持ちます。1960年代以降は毛皮産業の縮小とともにペット向け需要が主流化し、家庭用品種としての位置に定着していきました。

ミニレッキスの派生

1980年代の米国で、この標準サイズのレッキスにネザーランドドワーフを掛け合わせて小型化した派生品種「ミニレッキス」が作出されました。1988年にARBAが公認したミニレッキスは、標準レッキスの半分弱の体格(1.4〜2kg)でありながらビロード状の被毛はそのまま維持しています。現代のペット市場では、レッキス系品種の中で最も飼育数の多い派生系統の位置を占めるまでに広がりました。

姿と被毛

プラッシュコートの原点

約1.25cmの垂直に立つ短毛

ライラック色のレッキス成体(ビロード状の被毛の質感が分かる)
DestinationFearFan, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

被毛は約1.25cmと通常のウサギ品種の半分以下の長さで、密度が非常に高く垂直に近い角度で生えるプラッシュコートを形成します。ビロード(velvet)や絨毯(plush)にたとえられる独特の触感が特徴で、毛が寝ずに一本ずつ密に立つ状態を作るのがレッキス系品種すべてに共通する被毛の特性です。手で撫でると毛先が跳ね返るような弾力があり、他の家畜ウサギ品種にはない手ざわりの独自性を持ちます。

コマーシャルタイプの体格

黒色のレッキス成体(コマーシャルタイプの骨太な体格)
DestinationFearFan, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

体型はコマーシャルタイプと呼ばれる骨太でずんぐりした形で、体重3.5〜4.75kgの中型サイズを維持します。耳は13cm前後の直立耳で、頭部から尾までのプロポーションはミニレッキスの原型に相当する均整のとれた姿を持ちます。派生品種のミニレッキスと外観の印象は近い一方、体格の差が明確なため見分けは容易とされます。

毛色バリエーション

ARBAが公認する毛色は16色で、ブラック・ブルー・キャスター(茶褐色に黒ティップ)・チンチラ(銀灰)・オパール(青灰)・ホワイト・ブロークン(斑)など幅広いバリエーションが揃います。特にキャスター色は毛皮産業時代からの伝統的な代表色として広く知られ、ショー個体でも最も多く見られる毛色となっています。

レックス遺伝子と派生品種の系譜

レッキスの特徴的な短毛は「レックス遺伝子(r遺伝子)」と呼ばれる常染色体劣性の遺伝子で決まっており、この遺伝子は1919年の突然変異発生以降、複数の派生品種に受け継がれて家畜ウサギの育種史に定着しました。派生品種にはミニレッキス(標準レッキスの小型版)・アストレックス(毛質がさらにカール状)・オポッサム・レックス(毛質バリエーション)などがあり、いずれも標準レッキスから分岐した系統として位置づけられます。r遺伝子は不完全優性ではなく完全劣性で、ホモ接合体(rr)の個体のみが典型的なプラッシュコートを発現する仕組みです。

性格

レッキスは穏やかで人懐こい性格が広く報告されており、中型品種としては扱いやすい部類の気性を持ちます。1919年の作出以来100年以上の系統化の歴史を経て、性格の均一化も比較的進んでいる品種として海外の飼育者に評価されています。ただしウサギの個体差は当然あり、幼少期の社会化や日々の触れ合いの頻度が成体後の懐き具合に影響する点は他品種と同じとされます。適切な世話で寿命は7〜11年と長く、中型品種としては小型品種と大差ない寿命を保つ長寿系統でもあります。

類似する被毛品種との違い

体格と毛質で識別する

レッキスと混同されやすい品種として、ミニレッキス(小型版)・アメリカンチンチラ(毛色類似)・サテン(サテン光沢の被毛)などが挙げられます。体格と被毛の質感で識別されます。

品種体重被毛特徴
レッキス(標準)3.5〜4.75kgビロード状短毛プラッシュコートの原点
ミニレッキス1.4〜2kgビロード状短毛小型化した派生
アメリカンチンチラ4〜5kg通常の短毛銀灰色の被毛
サテン3.5〜5kg光沢のある短毛毛の断面が三角形

体重3.5〜4.75kgの中型サイズにビロード状のプラッシュコートを組み合わせる姿がレッキスの姿の目印で、直に触れれば独特の弾力ある毛質から一瞬で識別できます。ミニレッキスとの見分けは体格の差が最も明確な判断材料となります。

日本での流通と飼育環境

標準サイズの流通の希少性

日本のペットショップでは、体重3〜5kgの中型ウサギの流通量は少なく、標準サイズのレッキスの入手は専門ブリーダー経由や海外からの輸入が中心となります。小型化した派生のミニレッキスの方が国内での流通量では圧倒的に主流で、「レッキス」と表示された個体はミニレッキスを指すケースが多く見られます。国内での血統書付き標準レッキスの価格帯は8〜15万円が目安で、他のカイウサギ品種と比べて希少な位置づけを持つ存在です。

飼育環境の目安

ケージのサイズは幅80〜100cmが推奨で、他の中型ウサギとほぼ同じ環境で飼育できます。適温は18〜24℃で、床材は柔らかいマット材が向いています。被毛が短くもつれにくいためブラッシングの手間は少ない一方、足の裏の被毛も短いため金網床など硬い床材では「ソアホック」(足底皮膚炎)を起こしやすい注意点はミニレッキスと共通します。エサはチモシー(乾草)を主体に、ペレット・少量の生野菜を組み合わせるのが一般的な食餌構成です。

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