ヒョウアザラシは南極の流氷に住む大型のアザラシです。ペンギンを襲う姿で知られますが、日頃の主食はナンキョクオキアミで、隙間の多い歯で海水ごと濾し取って食べます。メスのほうが大きく、体長は3.6mに達します。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:食肉目 Carnivora
- 科:アザラシ科 Phocidae
- 属:ヒョウアザラシ属 Hydrurga
- 種:ヒョウアザラシ Hydrurga leptonyx
和名・英名
- 和名:ヒョウアザラシ(豹海豹)
- 英名:Leopard seal
1属1種で近縁は南極の3種
ヒョウアザラシ属にはこの1種しかいません。1820年にフランスの動物学者ブランヴィルが、ル・アーブルにあった剥製の標本をもとに、新種として発表しました。
近い仲間はウェッデルアザラシ、カニクイアザラシ、ロスアザラシです。この4種でナンキョクアザラシ族というまとまりを作ります。

大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ(メス) | 体長 2.9〜3.6m/体重 約500kg |
|---|---|
| 大きさ(オス) | 体長 2.8〜3.3m/体重 約300kg |
| 生まれたとき | 体長 1〜1.6m/体重 30〜35kg |
| 分布 | 南極大陸を取り巻く流氷帯。南極周辺の島にも |
| 生息環境 | 流氷とその周辺の海 |
| 生息数 | 22万〜44万頭と推定 |
| 食べ物 | ナンキョクオキアミ・ペンギン・魚・イカ・ほかのアザラシの子 |
| 寿命 | 26年ほど |
| 性成熟 | オス 4年半/メス 4年(子を残せる体になる年齢) |
| 天敵 | シャチ |
| 保全状況 | IUCN LC(軽度懸念・2015年評価) |
※ IUCNレッドリストとは、世界の野生生物の絶滅リスクを評価した国際的なリストです。「軽度懸念」は、今のところ絶滅のおそれが小さい区分にあたります。
メスのほうが大きい細長い体

3.6mに達するメス
ヒョウアザラシはメスのほうが大きくなります。メスは体長2.9〜3.6mで、体重は500kgほど。オスはひと回り小さく、2.8〜3.3m・300kgほどとされます。
3.6mは軽自動車1台より少し長い大きさです。資料によって数値には幅がありますが、メスのほうが大きい点はどの資料も一致しています。ナンキョクアザラシ族の中では最大の種です。
オスが大きくなる種との違い
アザラシの仲間にはオスが大きくなる種も少なくありません。たとえばゾウアザラシでは、オスがメスの3倍から5倍の重さになります。

泳ぐための細長い体と大きな前のひれ
体はほかのアザラシより細長く、筋肉質です。前のひれはアザラシ科のほかの種と比べて非常に大きく、これが泳ぐ速さにつながっています。
アザラシ科なので、外に張り出した耳はありません。獲物を追うときは、耳で聞き取る音と口ひげで受け取る水の動きを手掛かりにします。
ヒョウの名がついた斑点
背中は銀色と濃い灰色が混じり、ヒョウのような斑点が散ります。腹側は白から薄い灰色。和名の「豹海豹」も英名のLeopard sealも、この斑点に由来します。
オキアミを濾す歯でペンギンも襲う

2.5cmの歯と隙間の多い奥歯
ヒョウアザラシの歯は2.5cmほど。500円玉の直径とほぼ同じ長さです。あごも大きく発達しています。
奥歯はカニクイアザラシと同じように、海水からオキアミを濾し取るのに向いた形をしています。同じ歯でペンギンも捕らえます。
日頃の主食はナンキョクオキアミ
若い個体はオキアミやイカ、魚を中心に食べます。大人になるほど、大きく手強い相手も仕留められるようになります。オキアミは吸い込んで口に入れ、歯の隙間から海水だけを外へ出します。
ほかのアザラシの子も襲う
カニクイアザラシやウェッデルアザラシ、ロスアザラシの子が記録されています。ミナミゾウアザラシの若い個体やオットセイの子も襲います。アザラシ科のほかの種が追うのは、主に魚やイカ、オキアミです。鳥や獣を日頃から食べるのは、この種だけとされます。
氷の縁で待つペンギン狩り
ペンギンを狙うときは、氷の縁に近い水中でほとんど体を隠して待ちます。海へ入ってくるペンギンを、水中で追って捕らえます。捕らえた相手は水面で何度も振り回され、皮が離れたところで食べられます。
記録されている獲物には次のペンギンが含まれます。
- コウテイペンギン
- キングペンギン
- イワトビペンギン
- アデリーペンギン
- ジェンツーペンギン
- ヒゲペンギン

個体ごとに獲物の好みが違う
ペンギンのコロニーの近くに留まる個体もいれば、カニクイアザラシの子を好む個体もいます。南極から北へ離れたハード島まで移動して、そこでペンギンやアザラシの子を食べる個体も知られています。
冬のオキアミに届かない若い個体
若い個体が息を止めて潜れるのは、平均で7分ほどです。冬のオキアミは深いところへ移るため、この時間では届きません。
そのため冬は、ナンキョクオットセイの子を2頭がかりで追う姿が観察されています。母親が育った子を助けている可能性が指摘されています。
襲ってくる相手はシャチだけ
ハード島では、オスのゾウアザラシがヒョウアザラシを殺した例が1件報告されています。まれな出来事と見られ、普段この種を襲えるのはシャチだけです。

夏の海で何時間も鳴く

逆さまにぶら下がって歌う
南半球の夏になると、ヒョウアザラシは水中でよく鳴きます。オスは大きな声を毎日何時間も出し続けます。
鳴いている間は逆さまにぶら下がり、体を左右に揺らします。背中を反らせ、首から胸を膨らませて声を出します。研究者は5つの音の型を区別しています。
若いオスほど声の種類が多い
鳴き方は年齢によって変わります。これは鳥に見られるのと同じ性質です。若いオスはさまざまな声を出しますが、大人のオスが使うのは決まった形の数種類だけです。
大人のオスはその数種類を並べ替えて、個体ごとに違う続き方の歌を作ります。オスがよく鳴く時期は、11月から1月の第1週という繁殖期と重なります。メスは餌をとって戻ったあと、子の注意を引くために鳴きます。
声を拾って数えた22万頭
単独で流氷の中に散らばって暮らすため、目で数える調査ができません。そこで水中の声を拾う方法が使われ、分かっていることの多くはここから集まりました。
この方法で見積もられた生息数は22万頭から44万頭です。IUCNレッドリストでは軽度懸念に分類されています。
274日の妊娠と氷の上の1頭

10月から11月に1頭だけ産む
産むのは氷の上で、子は1頭だけです。南半球の春にあたる10月から11月に生まれます。妊娠の期間は274日で、およそ9か月にあたります。
生まれたときの体長は1〜1.6m、体重は30〜35kgです。授乳の期間は約4週間です。子を残せる体になるのは、オスが4年半、メスが4年と考えられています。
5回の航海で分かったこと
ヒョウアザラシが住むのは、人が長くいられない場所です。そのため繁殖の様子については分かっていないことが多く残っています。
1985年と1987年、1997年から1999年にかけて、南極へ5回の調査航海が出されました。子の姿が見られたのは11月の初めから12月の終わりで、大人3頭に対して子が1頭ほどの割合でした。この季節の大人は互いに離れて過ごし、群れで見られたときも関わり合う様子はありませんでした。
人との事故の記録

2003年に起きた死亡事故
2003年、南極で潜水中の研究者がヒョウアザラシに襲われて亡くなりました。ヒョウアザラシによる人の死亡が記録された、最初の例です。
英国南極調査所のカースティ・ブラウンさんは、4人のチームで海中の調査に参加していました。約15m離れて泳いでいた同僚が悲鳴を聞き、水中へ引き込まれる姿を見ています。チームは引き上げましたが、蘇生はできませんでした。
氷から引き込まれかけた1985年
1985年には、探検家のガレス・ウッドさんが氷の上から海へ引き込まれかけました。脚を2回噛まれています。仲間が靴に付けた金属の爪で頭を蹴り続けて助け出しました。
ゴムボートの黒い浮きを狙う例も知られています。調査に使う船には穴が開かないよう保護具が付けられています。
記録に残る個体と飼育の例

カメラマンにペンギンを差し出した個体
ナショナルジオグラフィックの写真家ポール・ニックレンさんは、1頭のメスから生きたペンギンを差し出されました。次に弱ったペンギン、最後は死んだペンギンを運んできて、それが4日間続いたといいます。世話をしようとしたのではないかと見られています。
21世紀で唯一の飼育例
オーストラリアのタロンガ動物園が、1999年から2014年まで3頭を飼育しました。21世紀にこの種を飼育した施設はここだけとされ、日本の水族館で見ることはできません。
3頭はいずれも、本来の分布から外れてオーストラリアの浜に流れ着いた個体でした。痩せていて、ダルマザメに噛まれた跡がありました。回復したあとも、野生の個体へ病気を移す心配から海へは戻されていません。
10年追われたニュージーランドのメス
ニュージーランド北島の海岸には、2012年から2022年5月まで同じメスが姿を見せていました。頬と脇腹の傷で見分けられ、「オワ」と呼ばれています。世界で最も長く追跡されたヒョウアザラシとされます。
関連ページ

参考
- Wikipedia「ヒョウアザラシ」
- Wikipedia「Leopard seal」(英語版)
- Australian Antarctic Program「Leopard seals」
- IUCN Red List「Hydrurga leptonyx」(2015年評価)
画像出典
- 남극인, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(アイキャッチ)
- Butterfly voyages – Serge Ouachée, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- Jerzy Strzelecki, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- Jerzy Strzelecki, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- Gilad Rom, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
- Jerzy Strzelecki, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- Sastognuti, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


