ガビチョウは、目の周りから後ろへ伸びる白い模様が目立つ茶色の鳥です。中国から飼い鳥として持ち込まれたものが野生化し、今は特定外来生物として東北から九州まで広がっています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:スズメ目 Passeriformes
- 科:ソウシチョウ科 Leiothrichidae(環境省などの資料ではチメドリ科)
- 属:ガビチョウ属 Garrulax
- 種:ガビチョウ Garrulax canorus
和名・英名
- 和名:ガビチョウ(画眉鳥)
- 英名:Chinese hwamei/Melodious laughingthrush
- 中国名:画眉
「塗った眉」を意味する中国名「画眉」
和名のガビチョウは、漢字で「画眉鳥」と書きます。中国での名前「画眉」に「鳥」を付けて、日本語で読んだものです。画眉は「塗った眉」という意味で、目の周りから後ろへ伸びる白い模様を眉に見立てています。英名の hwamei も、この中国名から来ています。
ガビチョウの仲間は、英語ではまとめて laughingthrush(笑うツグミ)と呼ばれます。森の中で鳴き交わす声が、遠くから聞くと人の笑い声に似ていることから付いた名前です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長20〜25cm(ツグミほど) |
|---|---|
| 見た目 | 全体に茶褐色で、頭や胸に暗い縞模様がある。目の周りから後ろへ白い模様が伸び、嘴は黄色 |
| オスとメス | 体の大きさ・羽の色ともほとんど違いがない |
| 原産地 | 中国南部・海南島・香港・ベトナム北部・ラオス北部 |
| 日本での分布 | 宮城県から九州にかけての各地(外来種) |
| 生息環境 | 下草や低木の茂った丘陵地・平地の林。藪を好む |
| 食べ物 | 昆虫・果実・種子。主に地上でとる |
| 繁殖 | 4〜7月。藪の中にわん形の巣を作り、卵を3〜5個ほど産む |
| 渡り | しない(留鳥) |
| 法律上の扱い | 特定外来生物(2005年指定) |
| 保全状況 | IUCN:LC(低懸念) |
鳴き声を楽しむ飼い鳥から、特定外来生物へ
中国で好まれ、江戸時代から輸入された飼い鳥
ガビチョウの原産地は、中国南部からベトナム北部・ラオス北部にかけての地域です。中国では声を楽しむ飼い鳥として広く飼われ、飼い主が鳥かごを公園に持ち寄って鳴き合わせを楽しみます。日本にも江戸時代から輸入され、中国画の影響を受けた花鳥画に描かれることもありました。

日本の資料では、台湾も原産地に含められています。ただし台湾に元からいる集団は、近年は別種として扱われるようになりました。台湾には1980年代に、大陸のガビチョウが大量に持ち込まれました。上の分布図で台湾が持ち込まれた地域の色になっているのは、そのためです。
声の大きさが嫌われ、野外へ放された飼い鳥
ガビチョウは人気のある飼い鳥でしたが、声が非常に大きく、住宅地では騒音として問題になりました。これが、飼い鳥としての人気が落ちた理由の1つです。
野外に定着した要因は1つではありません。人気が落ちたことや特定外来生物への指定をきっかけに、飼い主が逃がす例がありました。売れ残りに困った業者が捨てた例もあり、かごから逃げ出した鳥もいました。
1980年代の北九州から、東北・関東へ広がった分布
最初の野外記録は1980年代の北九州
江戸時代から輸入の記録はあるものの、野外で最初に観察されたのは1980年代の北九州です。首都圏では、1990年に山梨県で初めて観察されました。
その後は宮城県から愛知県まで、大阪府から九州中部までの各地で確認されるようになりました。九州では、鹿児島県を除く6県で見つかっています。
丘陵の林から、住宅地の小さな林へ
バードリサーチが2018年にまとめた調査では、東北と関東の分布がほぼつながったことが示されました。東京では、かつては丘陵の林にしかいませんでしたが、平地の住宅地にある小さな林でも見られるようになっています。
愛知県内では、2023年の時点で豊橋市・岡崎市・豊田市・設楽町・豊根村で確認されています。

2005年、最初に指定された特定外来生物の1つ
ガビチョウは、外来生物法が施行された2005年6月1日に特定外来生物に指定されました。このとき鳥類で指定されたのは、ガビチョウ・カオグロガビチョウ・カオジロガビチョウ・ソウシチョウの4種です。同じ仲間のヒゲガビチョウは、2018年に追加で指定されました。
特定外来生物は、飼うことや保管・運搬・輸入が原則として禁じられています。指定日より後は、新たにペットとして飼うことはできません。ガビチョウは「日本の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれています。
他の鳥の声もまねる、大きなさえずり
クロツグミに似た複雑なさえずり
ガビチョウは、大きく複雑な声でよくさえずります。その調子は、クロツグミのさえずりに似ています。「ビュッ」「グルルゥ」といった低く濁った声も出します。

さえずりは、繁殖期のオスがなわばりを主張したり、メスにアピールしたりするための声です。原産地では藪をくぐりながら、「ホィピー、ホィピー」と甲高い声でさえずります。
ウグイスやキビタキ、オオルリの声をまねる
他の鳥のさえずりをまねることもあります。まねる相手には、ウグイス・キビタキ・オオルリ・サンコウチョウなどが挙げられます。

声で生息を確かめる調査では、このものまねが難点になります。さえずりは同じ科のソウシチョウとも似ているため、声で見分けるには十分な経験が要ります。
害鳥とされる最大の理由になった声の大きさ
中国で好まれてきたさえずりも、日本では声が非常に大きいため騒音と受け取られがちです。これが、ガビチョウが害鳥として嫌われる最大の理由です。野生化した今も、住宅地の周りでは騒音の問題になるおそれがあります。
地上を走り回り、渡りをしない暮らし
藪の下の地面で昆虫や果実を探す
ガビチョウが住むのは、下草や低木がよく茂った丘陵地や平地の林です。特に藪の中を好み、竹林にも住みます。

あまり高くは飛ばず、地上を走り回って昆虫や果実、種子を食べます。繁殖期にはつがいか単独で行動し、それ以外の時期には小さな群れで動きます。
雪の多い土地にはいない留鳥
渡りをせず、積雪の影響を受けやすい
ガビチョウは渡りをせず、1年中ほぼ同じ地域で暮らす留鳥です。積雪の多い所には分布しておらず、地上で餌をとることと、渡りをしないことが理由と考えられています。
同じく野生化したソウシチョウは、冬に標高の低い土地へ移ります。ガビチョウの分布がソウシチョウほど広がっていないのは、雪の影響を受けやすいためと考えられています。
2024年、中央アルプスの標高2,770mでさえずり
2024年8月6日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳でガビチョウのさえずりが記録されました。場所は、標高約2,770mのハイマツ林です。木が育たなくなる高さ(森林限界)を超えた高山帯での記録は、これが初めてです。
近年は、夏に山地で繁殖して冬に雪の少ない場所へ移る個体も知られていました。さえずりは繁殖期のオスが出す声なので、研究チームは高山帯が新しい繁殖地になる恐れを指摘しています。
藪の中に作るわん形の巣と、青い卵
繁殖期は4〜7月です。巣は低木や藪の中の地上2mまでの低い所に作られ、枯れ葉や枯れた茎、細い根を使った深いわん形をしています。
1回に産む卵は3〜5個ほどで、4個ほどとする資料もあります。色は青か青緑色です。
在来の鳥への影響は、まだ「懸念」の段階
里山の林で最も数の多い鳥になった場所も
愛知県の資料によると、九州や本州の里山の林では、定着したガビチョウ類が最も数の多い鳥になっています。林に住む鳥の顔ぶれも、大きく変わっています。
地上で餌をとる暮らしは、在来のツグミやシロハラ、アカハラと重なります。在来の鳥と餌や生息場所をめぐって競合することも心配されています。

2022年、富士山麓で擬卵を持ち去った記録
山梨県富士山科学研究所の研究者は2022年、ガビチョウが鳥の卵を食べるかを調べる実験を行いました。富士山麓に人工の巣と作り物の卵(擬卵)を置き、4月から7月に5回、ビデオで撮影しています。
その結果、4月下旬に1度、ガビチョウが擬卵を持ち去る様子が記録されました。食べる様子までは撮れていませんが、似た場所に巣を作る鳥の卵を直接食べている可能性があります。どの程度起きているのかは、まだ分かっていません。
ハワイでは在来の鳥が減った一因に
ハワイには1910〜1920年代に、ソウシチョウとともに持ち込まれました。侵入した地域では高い密度で暮らし、ハワイ固有の鳥が減った事例があります。餌や生息場所をめぐる競合が、その一因と考えられています。
一方、日本では、ガビチョウが在来の鳥に害を与えたはっきりした事例はまだ知られていません。
定着すると捕獲では取り除きにくい外来の鳥
ガビチョウのような森の外来鳥は、定着すると取り除くのが非常に難しく、捕獲で減らすことも困難です。そこで愛知県は、これ以上野外に逃がさないよう呼びかけることや、定期的に分布を調べることを対策に挙げています。
繁殖期に木を間引く間伐や下草刈りをして、巣を作りやすい藪が広がるのを抑える方法もあります。ただし同じような藪に巣を作るウグイスなど、在来の鳥への配慮も必要です。
似たガビチョウ類・ソウシチョウとの見分け
日本で野生化した5種の大きさと顔の模様
日本で野生化したガビチョウの仲間は4種で、いずれも特定外来生物です。環境省の一覧では、4種ともガビチョウ属に入っています。ただし2018年に発表されたDNAの研究をもとに、ガビチョウ以外の3種は別の属へ移されました。同じ科のソウシチョウを加えた5種を比べると、次のようになります。
| 種 | 全長 | 見分けの目印 | 国内で確認された主な地域 |
|---|---|---|---|
| ガビチョウ | 21〜25cm(ツグミほど) | 茶褐色。目の周りから後ろへ伸びる白い模様。嘴は黄色 | 宮城県〜九州 |
| ヒゲガビチョウ | 21〜24cm(ツグミほど) | 頭の上から首の後ろが黒い。目の後ろに黒い線 | 愛媛県・高知県・香川県 |
| カオグロガビチョウ | 28〜32cm(ヒヨドリほど) | 灰褐色。目の周りが大きく黒い | 岩手県・群馬県・埼玉県・東京都・神奈川県 |
| カオジロガビチョウ | 22〜24cm(ツグミほど) | 焦げ茶色から灰褐色。目の周りから喉に三角形の白い模様 | 北関東〜千葉県 |
| ソウシチョウ | 14〜15cm(スズメほど) | 背は暗い緑色。喉が黄色で胸がオレンジ色。嘴が赤い | 本州(東北・北陸より南)・四国・九州 |

カオグロガビチョウは、在来のシロハラやヒヨドリと取り違えやすい鳥です。シロハラは頭や背の色が似ていますが、顔に黒い部分はありません。ヒヨドリは大きさや色合いが似ていますが、顔には赤褐色の斑があります。
オスとメスは見た目でほとんど区別できない
ガビチョウのオスとメスは、体の大きさにも羽の色にもほとんど違いがありません。似たガビチョウ類3種も同じです。ただし、さえずるのは一般に繁殖期のオスです。
参考
- 環境省 九州環境局「ソウシチョウ・ガビチョウの捕獲、飼養等の禁止について」
- 愛知県「ガビチョウ」(PDF)
- バードリサーチ「内陸へ拡がるイソヒヨドリ・分布拡げるガビチョウ・ホンセイインコ」
- 筑波大学「特定外来種ガビチョウのさえずりを高山帯で初めて記録」
- Bird Research「特定外来生物ガビチョウによる直接的な鳥類の巣への捕食の可能性」
- BIRD FAN(日本野鳥の会)「ガビチョウ」
- Wikipedia「ガビチョウ」
画像出典
- Sun Jiao (Interaccoonale), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- Karoke Cirno, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Sun Jiao (Interaccoonale), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- DickDaniels (http://theworldbirds.org/), CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
- Charles Lam, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons


