ダンボオクトパス

甲殻類・軟体動物

ダンボオクトパスは、深海にすむ、耳のような大きなヒレを持つタコです。そのヒレをはばたかせて泳ぐ姿が、ディズニー映画の子ゾウ「ダンボ」を思わせます。世界でもっとも深いところにすむタコとして知られ、水深7000m近くでも見つかっています。その見た目とは裏腹に、光もとどかない過酷な深海で暮らす生きものです。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:頭足綱 Cephalopoda
  • 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
  • 亜目:有触毛亜目(ヒゲダコ亜目)Cirrina
  • 属:ダンボオクトパス属 Grimpoteuthis

和名・英名

  • 和名:定まった和名はなく、「ダンボオクトパス」と呼ばれる
  • 英名:Dumbo octopus(ダンボのようなタコ)

名前の由来

「ダンボ」の名は、頭の左右にある大きなヒレに由来します。このヒレが、ディズニー映画「ダンボ」の子ゾウの耳に見えることからつきました。ダンボオクトパスは、1種ではなく Grimpoteuthis というグループの総称です。今のところ、17種ほどが知られています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ多くは20〜30cmほど(大きな個体で1m以上の記録も)
分布世界中の深い海(冷たい深海に広く分布)
生息環境水深およそ1000〜7000mの海底の近く
食べもの肉食(ゴカイ・甲殻類・貝など、海底の小動物)
寿命3〜5年ほど
体の特徴耳のようなヒレ・ゼラチン質の体・腕をつなぐ膜

耳ビレで泳ぐ、深海のタコ

耳ビレを持つダンボオクトパス
深海を泳ぐダンボオクトパス(M. Fenaut, Public domain, via Wikimedia Commons)

「ダンボ」の名の由来になったヒレ

ダンボオクトパスの最大の特徴は、頭の上にある一対のヒレです。目の上あたりから、耳のように大きく張り出しています。ふつうのタコには、このようなヒレはありません。深海にすむ「有触毛(ゆうしょくもう)」というタコの仲間だけが持つ、めずらしい体のつくりです。

ヒレをはばたかせて泳ぐ

省エネの、深海仕様

ダンボオクトパスは、この耳ビレをはばたかせて泳ぎます。鳥が羽を動かすように、ゆっくりと水の中を進みます。ふつうのタコのように、水を強く吹き出して素早く泳ぐことはあまりありません。餌の少ない深海で、力を使いすぎないための、省エネな泳ぎ方です。驚いたときは、腕をつなぐ膜をすぼめて、海底からさっと逃げます。

ゼラチンのような、柔らかい体

体は、ゼラチンのように柔らかく、水分を多く含みます。深海の高い水圧のなかでも、つぶれずに暮らせる体つきです。8本の腕は膜でつながり、傘のような形をしています。腕には吸盤とともに、「触毛(しょくもう)」という細い毛が生えています。この毛で、まわりの獲物や環境を感じ取ります。

世界でいちばん深くにすむタコ

深海のダンボオクトパス
水深2108mで撮影されたダンボオクトパス(Renaud.marbet, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

水深1000〜7000mの世界

超深海でも見つかる

ダンボオクトパスは、およそ水深1000〜7000mの深海にすみます。これは、知られているタコのなかでもっとも深い場所です。2020年には、水深およそ7000mの海溝でも姿が確認されました。「超深海(ハダル)」とも呼ばれる、極端に深い層です。ダンボオクトパスは、その名にふさわしい深海の住人です。

冷たく暗く、圧の高い環境

深海は、光がまったくとどかない暗黒の世界です。水温は低く、水圧は地上の数百倍にもなります。餌となる生きものも、多くはありません。そんな厳しい環境に合わせて、ダンボオクトパスは体を軽く、動きを省エネにしてきました。この体つきは、深海を生きぬくための工夫の結果でもあります。

世界中の深い海に

ダンボオクトパスの仲間は、世界中の深海に広く分布すると考えられています。近年は、海底の設備を調べる無人探査機(ROV)が、その姿をとらえる機会も増えました。ノルウェー沖やギアナ沖など、各地の深海で観察が報告されています。ふだんは人の目にふれない、深海のなぞ多き生きものです。

深海での狩り

獲物を膜で包んで食べる

ダンボオクトパスは、海底の近くで獲物をさがします。狩りのようすはまだよく分かっていませんが、近い仲間の観察から推測されています。腕をつなぐ膜で、小さな獲物を包みこみます。そして、腕にならぶ触毛を使って、えものを口へ運ぶとみられています。ふつうのタコのように、獲物をかみ砕くのではなく、丸ごと飲みこむことも多いようです。

何を食べているのか

食べているのは、海底にすむ小さな動物たちです。解剖した個体からは、ゴカイのなかまや、小さな甲殻類が見つかっています。エビやカニに近い生きもの、貝のなかまなども食べるとされます。光のない深海で、触毛の感覚をたよりに餌をさがす暮らしです。

卵を守らない、変わった繁殖

ダンボオクトパスの全身
深海の底ちかくを漂うダンボオクトパス(NOAA Office of Ocean Exploration and Research, Public domain, via Wikimedia Commons)

交接腕を持たないタコ

メスが精子をたくわえる

多くのタコのオスは、「交接腕」という特別な腕で精子をメスに渡します。ところが、ダンボオクトパスをふくむ有触毛タコには、この交接腕がありません。メスは受け取った精子を体内にたくわえ、産卵のときまで保管するとされます。ふつうのタコとは、繁殖のしくみからして違う仲間です。

卵を深海サンゴにつけて去る

ダンボオクトパスは、決まった季節を持たずに、少しずつ卵を産むと考えられています。硬い殻に包まれた卵を、深海のサンゴなどに一つずつ産みつけます。そして、多くのタコと違い、メスは卵を守りません。産みつけたあとは、その場を去っていくとみられています。深海の冷たい水の中で、卵はひとりで育っていきます。

メンダコとの違い

同じ「耳のあるタコ」の仲間

ダンボオクトパスとよく比べられるのが、メンダコです。どちらも、ヒレを持つ深海の「有触毛タコ」で、近い仲間にあたります。耳のようなヒレや、腕をつなぐ膜など、共通点も多く見られます。深海にすむため、飼育が難しい点も同じです。

見分けのポイント

いっぽうで、姿にははっきりした違いがあります。ダンボオクトパスは体が丸みをおび、耳ビレが大きく目立ちます。メンダコは体がぺたんと平たく、円盤のような姿です。すむ深さも異なり、ダンボオクトパスのほうがより深い海にすむとされます。近い仲間ですが、並べて見れば見分けられます。

メンダコ
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タコのなかまを、まとめて知る

タコ【総合】
タコは、8本の腕を持つ、海にすむ軟体動物のなかまです。世界には約300種が知られています。身近なマダコやミズダコから、猛毒のヒョウモンダコ・擬態の名人ミミックオクトパス・深海のメンダコまで、その姿はさまざまです。体の色を変え、道具を使うほど...

参考

  • Wikipedia(英語版)「Grimpoteuthis」(耳ビレ・深海分布・繁殖・有触毛タコ)
  • NOAA・MBARIほか深海探査機関の観察記録(深度・行動)
  • 各水族館・海洋研究機関の解説(有触毛タコの生態)

画像出典

サムネイル画像: NOAA Okeanos Explorer, Public domain, via Wikimedia Commons

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