ズワイガニ

エビ・カニ類(十脚類)

ズワイガニは、冷たい深海に暮らす大きなカニです。松葉ガニや越前ガニなど、水あげされる土地によって名前が変わることや、細い脚とカニミソの味で知られます。同じ高級ガニでも、ヤドカリに近いタラバガニとは違い、こちらは正真正銘のカニの仲間です。

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分類と学名

ズワイガニは、エビやカニと同じ十脚目のなかの、ケセンガニ科に含まれます。カニのグループである「短尾下目(たんびかもく)」に属しており、分類のうえでも本当のカニの仲間です。ベニズワイガニやオオズワイガニといった近い種もいます。

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:十脚目 Decapoda
  • 下目:短尾下目 Brachyura(カニの仲間)
  • 科:ケセンガニ科 Oregoniidae
  • 属:ズワイガニ属 Chionoecetes
  • 種:ズワイガニ Chionoecetes opilio

和名・英名

  • 和名:ズワイガニ(楚蟹)
  • 英名:Snow crab(雪のカニ)

名前の由来

「ズワイ」は、細い木の枝を指す古い言葉「楚(すわえ)」がなまったものとされます。細く長い脚のようすが、その名のもとになりました。漢字では「楚蟹」と書きます。英名の Snow crab は、ゆでると身が雪のように白くなることにちなむといわれます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさオスは甲羅の幅が最大14cm、脚を広げると70cmほど。メスはその半分ほど
分布日本海・オホーツク海・ベーリング海など、北太平洋の北部。北米カナダ沖まで
生息環境水深200〜600mを好む、冷たい深海の砂や泥の底
食べ物貝・ゴカイ・小動物・死がいなど(雑食)
成長親になるまで約10年。最終脱皮のあと4年ほど生きる
日本での位置づけ冬の高級食材(ケガニ・タラバガニと並ぶ三大ガニ)

タラバガニとの違い

ズワイガニは、同じ高級ガニのタラバガニとよく比べられます。名前はどちらも「カニ」ですが、この二つは分類からして違う生き物です。タラバガニがヤドカリに近い仲間なのに対し、ズワイガニは本当のカニです。その違いは、脚や体のつくりにあらわれています。

脚を広げたズワイガニ
ズワイガニは細く長い脚を10本もつ。左右のハサミを入れて全部で10本になる

見た目と脚の数

脚は10本ある

本当のカニは、大きなハサミ2本と歩く脚8本の、あわせて10本の脚をもちます。ズワイガニもこの通りで、数えると脚が10本あります。ヤドカリに近いタラバガニが、見える脚8本しかもたないのとは対照的です。脚の数は、カニとヤドカリの仲間を見分ける手がかりになります。

細くて長い脚

ズワイガニの脚は、細くてまっすぐに長いのが特徴です。この姿が「細い枝」を指す「楚(すわえ)」という名のもとになりました。太くてトゲの多いタラバガニの脚とは、ならべるとひと目で違いが分かります。体の大きさもタラバガニのほうが上で、脚を広げた長さで勝ります。

味と体の違い

甘みのある身

ズワイガニは、身が柔らかく、甘みが強いとされます。細い脚の一本一本に、ほぐれやすい身がつまっています。太い脚に食べごたえのある身がつくタラバガニとは、味わいの方向がやや異なります。どちらが上ということはなく、好みで選ばれています。

カニミソを味わえる

ズワイガニは、「カニミソ」を食べられるのも持ち味です。カニミソは、甲羅の中にある中腸腺という消化の器官です。ヤドカリに近いタラバガニでは、このミソが食用にあまり向きません。本当のカニであるズワイガニとの、分かりやすい違いの一つです。

深海での暮らし

ズワイガニは、光の届かない冷たい深海で暮らしています。深い場所で暮らすため、その生態には未解明な点も残ります。脱皮のしかたや季節ごとの移動、寿命などは、まだよく分かっていません。

深海の底にいるズワイガニ
冷たく暗い深海の砂泥の底で暮らすズワイガニ。水深200〜600mを好む

冷たい砂泥の底で暮らす

ズワイガニは、水温0〜3℃という冷たい海の底で暮らします。水深は50mから1,200mにおよび、なかでも200〜600mの砂や泥の底を好みます。貝やゴカイなどの小さな生き物のほか、海底に落ちた魚や動物の死がいも食べる雑食です。自分の脱いだ殻を食べることもあるとされます。

卵と成長

メスは長く卵を抱く

メスは交尾のあとに卵を産み、腹の下に抱えて守ります。若狭湾での調査では、メス1匹が抱える卵はおよそ6万6千粒にのぼりました。卵は1年から1年半ものあいだ抱えられ、かえった小さな幼生が海へ放たれます。放たれたあと、メスはまもなく次の卵を産みます。そのため成熟したメスは、長い期間にわたって卵を抱き続けるのです。

大人になるまで約10年

幼生は海をただよったのち、海底におりて小さなカニになります。生まれてから親になるまでには、およそ10年もかかるとされます。カニは脱皮をくり返して大きくなり、オスは最後の脱皮を終えると、それ以上は大きくなりません。この最終脱皮の直後で殻が柔らかい個体は「ミズガニ」と呼ばれ、資源を守るため漁を控える地域もあります。

オスとメスで名前が変わる

ズワイガニは、オスとメスで大きさがかなり違います。そのため水あげされる各地で、オスとメスに別々の呼び名が付けられてきました。さらに、産地ごとのブランド名もあり、同じ種とは思えないほど名前が多いカニです。

市場に並ぶメスのズワイガニ
メスのズワイガニ(セコガニ)。オスより小さく、卵をもつため珍重される

オスのブランドガニ

大きく育つオスは、産地ごとにブランド名が付けられています。代表的なものに、次のような呼び名があります。

  • 松葉ガニ(山陰地方)
  • 越前ガニ(福井県)
  • 加能ガニ(石川県)
  • 間人(たいざ)ガニ(京都府)

多くの産地では、決められた基準を満たしたカニの脚に、色分けしたタグを付けて産地を示します。全国で最初にタグ付けを始めたのは、福井県の越前ガニでした。

メスはセコガニ・香箱ガニ

オスの半分ほどの大きさのメスは、セコガニ・セイコガニ・香箱(こうばこ)ガニなど、これも地域で呼び名が変わります。メスは、成熟した「外子(そとこ)」と未成熟の「内子(うちこ)」という二種類の卵をもち、この卵が冬の珍味として好まれています。石川県ではメスを香箱ガニと呼び、漁が解禁される11月には市場に赤いカニが並びます。オスより小ぶりですが、卵を目当てに親しまれています。

人とのかかわり

ズワイガニは、冬の味覚として日本で広く親しまれています。産地では観光の目玉にもなり、旬の時期には各地でカニ料理を目当てにした人でにぎわいます。

店に並ぶズワイガニ
店頭に並ぶズワイガニ。冬が旬で、高値で取引される

冬の味覚として親しまれる

ズワイガニの旬は、漁が解禁される晩秋から春先までの冬です。ゆで・蒸し・鍋・しゃぶしゃぶ・刺身など、さまざまな食べ方で味わわれます。漁は、海底を引く網や、かごを沈める「かご漁」でおこなわれます。資源を守るため、漁の期間や、とってよいカニの大きさが細かく決められています。とくに卵を抱くメスや、小さすぎるカニの漁は制限されています。

昔は高級品ではなかった

今でこそ高級品のズワイガニですが、1960年代の半ばまではそうではありませんでした。カニは日もちがしにくく、大きな消費地へ運ぶ冷凍の仕組みが整っていなかったためです。産地では、メスや小さなカニが安く売られ、子どものおやつや畑の肥料にされることもあったといいます。転機は1962年、大阪・道頓堀に開いた「かに道楽」でした。ここで生まれた鍋料理や、カニを凍らせて運ぶ工夫が広まり、都市の人びとにカニ料理が人気となっていきました。

甲羅の黒い粒の正体

ズワイガニの甲羅に、黒い粒が数多く付いていることがあります。これは「カニビル」というヒルの卵で、寄生虫ではなく、食べても害はありません。カニビルは、硬いものを見つけて卵を産みつける習性があり、脱皮からしばらく経った硬い甲羅が選ばれます。そのため「身がつまっている証拠」と売り文句にされることもありますが、身の入り具合との関係ははっきりしていません。

タラバガニ
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参考

  • ズワイガニ(ja.wikipedia.org)分類・形態・生態・地方名/ブランド・食文化
  • Snow crab(en.wikipedia.org)分布・生活史・漁業
  • 京都府農林水産技術センター海洋センター「ズワイガニの生態と漁業」成熟・産卵・成長

画像出典

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