ウミウシ【総合】

ウミウシ類

ウミウシは、貝殻を失った巻貝の仲間で、色や形の多様さから「海の宝石」とも呼ばれます。世界に2000〜3000種以上が知られ、日本の海にも数多く暮らします。ここでは、ウミウシという生き物の全体像と、分類群ごとの代表的な種をまとめて紹介します。

スポンサーリンク

分類と学名

ウミウシは、一つの決まった分類群の名前ではありません。貝殻が小さくなったり消えたりした巻貝(腹足類)のうち、海に住む仲間をまとめた呼び名です。中心となるのは裸鰓目(らさいもく)のなかまです。

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:腹足綱 Gastropoda
  • おもな目:裸鰓目 Nudibranchia など

和名・英名

  • 和名:ウミウシ(海牛)
  • 英名:sea slug、nudibranch

「ウミウシ」という呼び名

頭にある一対の触角が、牛の角のように見えることが名前の由来とされます。英名の nudibranch は「むき出しのえら」という意味で、背中にえらがむき出しになった裸鰓目の特徴を表しています。学問のうえでは複数のグループを含むため、ウミウシは厳密な分類名ではなく、生き物の見た目でくくった呼び名です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ数mm〜20cmほど(種によって幅が大きい)
種数世界で2000〜3000種以上
分布世界の海。日本近海にも多くの種
生息環境潮間帯の岩場から深海まで。多くは浅い海の底
食べ物海綿・コケムシ・刺胞動物など(種によって違う)
繁殖雌雄同体

ウミウシとはどんな生きものか

ウミウシは巻貝の仲間ですが、成長すると貝殻を持たないものが多く、柔らかい体で海底を這って暮らします。派手な色をもつ種が多く、ダイビングの人気者になっています。

貝殻を失った巻貝

ウミウシも、生まれたばかりの時期には巻貝のような殻をもっています。この時期の幼生はヴェリジャー幼生と呼ばれ、海を漂って過ごします。やがて姿を変え、殻を失って海底での暮らしに移ります。大人になると殻がほとんど残らないため、ナメクジのような柔らかい体に見えます。

色とりどりの姿

青・赤・黄・橙など、ウミウシの体色はとても多彩です。鮮やかな色は、食べても危険だと敵に知らせる警告の役割をもつと考えられています。体にとりこんだ毒や、いやな味の成分で身を守る種もいます。色や形が種ごとに大きく違うことが、観察の楽しさにつながっています。

ウミウシの生態

柔らかく動きの遅い体で、ウミウシは海底の暮らしに適応してきました。食べ物や身の守り方には、種ごとの工夫が見られます。

種によって違う食べ物

ウミウシの食べ物は種によって大きく違います。海綿を食べるもの、コケムシを食べるもの、クラゲやイソギンチャクなどの刺胞動物を食べるものがいます。なかには、魚の卵や、ほかのウミウシを食べる種も知られています。多くのウミウシは、決まったえさのある場所でしか見られません。

雌雄同体の繁殖

ウミウシの多くは、一匹がオスとメスの両方の役割をもつ雌雄同体です。二匹が出会うと、たがいに精子を渡しあって受精します。動きの遅いウミウシにとって、出会えた相手と確実に子孫を残すのに役立つしくみと考えられています。産みつけられた卵は、うずまき状のかたまりになることが多く見られます。

毒を利用する仲間

身を守るために、ほかの生き物の毒を利用するウミウシもいます。クラゲの仲間を食べるアオミノウミウシは、獲物の毒針を消化せずに体にため、外敵への武器として使います。こうした種は、鮮やかな色で「危険だ」と敵に知らせていると考えられています。

ウミウシのおもな分類群と代表種

ウミウシは、いくつものグループに分かれます。ここではおもな分類群を、その特徴とともに紹介します。

ドーリス類

背中の後ろに、花びらのような二次鰓(にじさい)をもつグループです。体は平たく、鮮やかな色の種が多く、おもに海綿を食べます。イロウミウシ科など多くの科を含み、日本の海でよく見られるアオウミウシもこの仲間です。

アオウミウシ
アオウミウシは、日本の海の浅い岩場に多い、青色のウミウシです。カニやエビとは違い、貝の仲間で、殻を持たない軟体動物です。あざやかな青の体に黄色い線、オレンジ色の触角(しょっかく)とえらを持ち、ダイバーに人気のある美しい種として知られています...

ツノザヤウミウシの仲間(フジタウミウシ科)

触角の後ろに、鞘(さや)のような突起をもつグループです。コケムシを食べる種が多くいます。通称「ピカチュウウミウシ」とも呼ばれるウデフリツノザヤウミウシも、この仲間です。

ウデフリツノザヤウミウシ
橙色の体に青と黒の模様をもち、ポケモンのピカチュウに似た姿から「ピカチュウウミウシ」とも呼ばれるウデフリツノザヤウミウシ。大きさや生態、コケムシを食べる暮らし、観察できる場所まで。

ミノウミウシ類

背中に「ミノ」と呼ばれる突起がたくさん並ぶグループです。クラゲやイソギンチャクなどの刺胞動物を食べ、その毒針を突起にためて武器にする種が多く見られます。海面を漂って暮らすアオミノウミウシも、この仲間に含まれます。

アオミノウミウシ
青い龍のような姿で知られるアオミノウミウシ。海面を逆さまに漂い、食べたクラゲの毒針をためこんで身を守ります。その姿・暮らし・毒のしくみまで。

嚢舌類(のうぜつるい)

海藻を食べるグループです。食べた藻の葉緑体を体にとりこみ、光合成でエネルギーを得る「盗葉緑体(とうようりょくたい)」というしくみをもちます。緑色をした小型のゴクラクミドリガイなどが含まれます。

どこで会えるか

ウミウシは、浅い海の岩場や海藻の間で見られます。多くは数cmと小さく、岩やヒドロ虫、海綿の表面でじっとしていることが多い生き物です。種類によって現れる季節が違い、水温の低い冬から春に多く見られる種もいます。色や形の美しさから、水中写真の被写体として長く親しまれてきました。観察はダイビングやシュノーケリングが中心で、一部の水族館でも生きたウミウシの展示が行われています。えさとなる生き物のそばに現れるため、その周辺で見つかりやすいとされます。

参考

  • ウミウシ(ja.wikipedia.org)分類・種数・食性・雌雄同体・ヴェリジャー幼生
  • Sea slug / Nudibranch(en.wikipedia.org)体のつくり・食性の多様さ
  • マリンダイビングウェブ「ウミウシってどんな生き物?」二次鰓・触角・主要グループ・盗刺胞

画像出典

  • アイキャッチ:Nhobgood, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(ウミウシの一種 Nembrotha kubaryana)
タイトルとURLをコピーしました