ウォンバットは、オーストラリアに住む有袋類です。ずんぐりとした体で穴を掘って暮らし、フンが四角いことでも注目を集めてきました。コアラにいちばん近い仲間でもあります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:双前歯目 Diprotodontia
- 科:ウォンバット科 Vombatidae
和名・英名
- 和名:ウォンバット
- 英名:Wombat
「ウォンバット」という呼び名
「ウォンバット」は、オーストラリアの先住民の言葉に由来するとされます。ウォンバット科には3種が含まれ、まとめてこう呼ばれます。同じ有袋類のコアラとは、見た目こそ違いますが、もっとも近い間柄です。どちらも袋が後ろ向きに開くという、珍しい特徴を持ちます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約1m/体重 約20〜35kg |
|---|---|
| 分布 | オーストラリア南東部とタスマニア島 |
| 生息環境 | 森林・草地・山地など。地中に巣穴を掘る |
| 食べ物 | 草・根・木の皮などの植物(草食) |
| 寿命 | 野生で約15年/飼育下ではさらに長い |
| 保全状況 | ヒメウォンバットはIUCN:LC。キタケバナウォンバットはCR(近絶滅) |
※ 有袋類とは、おなかの袋(育児のう)の中で子を育てる哺乳類のなかまです。カンガルーやコアラも有袋類です。

ずんぐりした体つき
ウォンバットは、体長1mほどの、がっしりした動物です。体重は20〜35kgほど。体は茶色から灰色の短い毛に覆われ、鼻先が大きく、耳と目は小さめです。太くて短い脚と、丈夫な爪が目立ちます。前歯はネズミの仲間のように一生伸び続け、硬い草を噛んでもすり減りません。歯には根がなく、根もとでつくられ続けるため、どれだけすり減っても短くならない仕組みです。土のまじった硬い草を毎日噛むウォンバットに、欠かせないつくりといえます。同じ有袋類のコアラが木の上で暮らすのに対し、ウォンバットは地面で暮らす点が大きく違います。
四角いフン
ウォンバットで目を引くのは、フンの形です。動物のフンはふつう丸みをおびていますが、ウォンバットのフンは、角のある四角い形をしています。動物界でも、四角いフンをするのはウォンバットだけとされています。

どうやって四角くなるのか
伸び縮みの違う腸
四角い形の理由は、腸の壁にあると考えられています。ウォンバットの腸には、よく伸びる部分と、あまり伸びない部分があります。フンが腸を進むあいだに、この伸び方の違いによって、少しずつ角がつくられていくとされています。この仕組みは近年の研究で調べられました。ウォンバットの腸を調べると、腸の終わりに近づくほど水分が抜け、フンが四角くなっていくことが分かってきました。2019年には、この四角いフンの研究が、ユニークな成果に贈られるイグ・ノーベル賞に選ばれました。
乾いて角が残る
ウォンバットは、食べ物から時間をかけて水分を取り出します。そのため、フンは腸の中でよく乾き、固くなるとされます。固まったフンに角の形がついて、四角いまま体の外へ出てきます。一晩にする数は、80〜100個ほど。
岩の上に置く目印
四角い形には、暮らしに役立つ一面もあるとされます。ウォンバットは、岩や倒木の上にフンを置いて、縄張りの目印にします。丸いフンは転がり落ちてしまいますが、四角いフンなら、高い場所に置いても転がり落ちにくくなります。においで仲間に情報を伝えていると考えられています。ウォンバットは目があまりよくないため、においやフンの場所が、仲間や縄張りを知る手がかりになります。
穴を掘る暮らし
ウォンバットは、地面に巣穴を掘って暮らします。太くて短い脚と、丈夫な爪は、土を掘るのに向いています。

すぐれた掘り手
丈夫な前足の爪
ウォンバットは、前足の強い爪で土をかき出し、長いトンネルを掘ります。巣穴は何本もの通路が枝分かれし、長いものでは20mを超えることもあります。一頭が、いくつもの巣穴を使い分けることも知られています。昼は涼しい巣穴の中で眠り、夜になると草を食べに外へ出ます。ウォンバットの巣穴は、ほかの小さな動物の隠れ場所になることもあります。山火事のときに、巣穴へ逃げこんだ動物が助かった例も伝えられています。かつて「ウォンバットがほかの動物を巣穴へ招き入れて助けた」という話が広まりましたが、これは確かめられていません。ウォンバットが自分から仲間以外を招くわけではなく、たまたま逃げこめる穴があった、と見るのが自然です。
後ろ向きに開く袋
ウォンバットの育児のうは、後ろ向きに開いています。前向きだと、穴を掘るときに袋へ土が入ってしまいます。後ろ向きなら、掘っても袋の中の子が土まみれになりません。穴を掘って暮らすウォンバットに、よく合ったつくりです。コアラの袋も後ろ向きですが、こちらは木登りの多い暮らしに合っているとされます。

巣穴と単独の暮らし
ウォンバットは、多くは単独で暮らします。同じ巣穴に長くとどまらず、数日ごとに別の巣穴へ移ることもあります。広いなわばりの中に、複数の巣穴を持っていることも多いとされます。
繁殖と子育て
ウォンバットは、決まった季節にこだわらず繁殖します。一度に生まれる子はふつう1頭で、およそ2年に1頭というゆっくりしたペースです。生まれたばかりの子は、とても小さく未熟な姿で、母親の後ろ向きの袋に入って育ちます。袋の中で乳を飲みながら大きくなり、10か月ほどで袋を出るとされています。その後もしばらくは母親のそばで過ごし、やがて自分の巣穴を持って独り立ちします。
おしりで身を守る
硬いおしりの盾
軟骨でできた硬いおしり
ウォンバットのおしりは、軟骨が発達していて、とても硬くできています。かみつかれても傷つきにくい、丈夫な盾のような部分です。走るのはあまり速くありませんが、この硬いおしりが、身を守る役目を果たします。かみつく相手には、この部分を向けて守ります。見た目より力が強く、驚いたときや追いつめられたときには、体当たりをすることもあります。
入り口を塞いで追い払う
敵に襲われると、ウォンバットは巣穴へ飛びこみ、硬いおしりで入り口を塞ぎます。追ってきた敵が頭を入れてくると、巣穴の天井とおしりのあいだに挟んで、追い払うこともあるとされています。天敵は、ディンゴやタスマニアデビルなどです。
ゆっくりな体の仕組み
ウォンバットは、体の中の働きが、哺乳類の中でもとくにゆっくりな動物です。硬い草をしっかり消化するため、食べ物が体を通り抜けるのに、2週間ほどかかるとされています。少ない食べ物でも生きていける、燃費のよい体です。動きはゆっくりですが、驚いたときには短い距離を速く走れます。水を飲まなくても、食べ物に含まれる水分で長く過ごせるため、乾いた土地でも生きていけます。エネルギーを節約するこの体は、食べ物の少ない環境を生きぬくのに向いています。
3種のウォンバットと保全
3つの種
ウォンバットには、3つの種がいます。よく知られるヒメウォンバットは、鼻に毛がありません。森林や山地に住み、数も多く、今のところ絶滅の心配は小さいとされています。残る2種は鼻に毛があり、乾いた草原に住みます。

数を脅かすもの
一方、キタケバナウォンバットは、生息地がわずかな地域に限られています。数百頭ほどしか残っていないと見られています。近絶滅(CR)とされ、保護区での見守りが続けられています。かつては広くいましたが、家畜との競合や、持ちこまれたキツネ・ネコの影響で数を減らした地域もあります。開発による生息地の減少や、車との事故が、数を脅かす原因になっています。とくに近年は、疥癬(かいせん)という皮ふの病気が、ヒメウォンバットをおびやかしています。ダニがひきおこすこの病気は、巣穴を使い回すあいだに広がります。かかると毛が抜けて弱り、命を落とすこともあります。地域によっては、群れの大半が失われた例も報告されています。
どこで会える
ウォンバットは、日本ではごく限られた動物園でしか見られません。夜行性のため、昼は眠っていることが多く、活発に動く姿が見られる時間は限られます。ずんぐりした見た目とおとなしい性質から、オーストラリアでは親しまれ、絵本やキャラクターにも登場します。道路ぎわで見かけることもあり、車との事故から守る取り組みも行われています。
絶滅した巨大な親せき
ウォンバットには、大昔に絶滅した巨大な親せきがいました。ディプロトドンという動物で、肩までの高さが1.8mほど、体の長さは3〜4mにもなりました。知られているかぎり、これまででもっとも大きな有袋類です。ウォンバットやコアラと同じグループに属し、草を食べて暮らしていたと考えられています。オーストラリアにいた大型の動物の多くとともに、数万年前に姿を消しました。今のウォンバットの小さな体からは、想像しにくいほど大きな仲間です。

参考
- IUCN Red List: Vombatus ursinus(Common Wombat)ほかウォンバット各種の評価ページ
- Yang, P. ほか, “Intestines of non-uniform stiffness mold the corners of wombat feces”(四角いフンの研究)
- Animal Diversity Web(ミシガン大学): Vombatus ursinus の解説


