ラクダは、背中のこぶと水を飲まずに歩き続ける体で知られる、砂漠の大型草食動物です。こぶの中身が水か脂肪かという疑問や、ヒトコブとフタコブの違いなど、砂漠を生き抜く体に特徴があります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
- 科:ラクダ科 Camelidae
- 属:ラクダ属 Camelus
和名・英名
- 和名:ラクダ(駱駝)
- 英名:Camel
ヒトコブラクダとフタコブラクダ
家畜として飼われているラクダには、こぶが1つのヒトコブラクダと、こぶが2つのフタコブラクダの2種がいます。ヒトコブラクダは、アラビアや北アフリカの暑く乾いた砂漠にすみ、野生の個体群はすでにいません。フタコブラクダは、中央アジアの寒暖の差が激しい地域にすみ、寒さにも強い種です。冬には厚い毛が生えそろい、氷点下になる寒さにも耐えます。中央アジアには、家畜とは別種の野生のフタコブラクダもわずかに残っています。その数は千頭ほどとされ、絶滅がとても心配されています。こぶの数が種によって違う理由は、はっきり分かっていません。暑い砂漠のヒトコブラクダと寒暖の差が大きい土地のフタコブラクダが、それぞれの環境に適応した結果と考えられています。ラクダ科には、南米のグアナコやアルパカなど、こぶのない近縁の仲間もいます。


大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 肩高 約1.8〜2.1m/体重 300〜700kg |
|---|---|
| 分布 | ヒトコブ=アラビア・北アフリカ/フタコブ=中央アジア(いずれも家畜) |
| 生息環境 | 砂漠や乾いた草原 |
| 食べもの | 乾いた草やトゲのある植物など(植物食・反芻する) |
| 寿命 | 40〜50年ほど |
| 保全状況 | 家畜種は多数。野生のフタコブラクダはIUCN:近絶滅(CR) |
こぶの中身と水分の仕組み
こぶの中身は脂肪
水ではなく脂肪の貯蔵庫
「ラクダのこぶには水がたまっている」とよくいわれますが、これは正しくありません。こぶの中身は、水ではなく脂肪です。餌の乏しい砂漠で、ラクダはこぶに大量の脂肪をたくわえます。1つのこぶには、多いときで数十kgもの脂肪がたまり、食べ物が足りないときに少しずつ分解してエネルギーに変えます。脂肪を分解する際にわずかな水も生じますが、こぶそのものに水がたまっているわけではありません。
脂肪を使うとこぶがしぼむ
こぶが脂肪の貯蔵庫であることは、その形の変化からも分かります。栄養が十分なときのこぶはまっすぐ立っていますが、餌が乏しく脂肪を使い切ると、こぶはしぼんで横に倒れてしまいます。長い旅で弱ったラクダのこぶが垂れ下がるのは、中の脂肪を使い果たしたためです。こぶは生まれつきそなわっており、子のうちは小さく、成長とともに大きくなります。こぶの張り具合は、そのラクダの健康や栄養状態を映す目安にもなります。
水なしで生き抜く体
一度に大量の水を飲む
こぶに水はなくても、ラクダは水なしで長く歩ける動物です。水場にたどり着くと、一度に100Lを超える水をわずか十数分で飲み干します。乾いた体に一気に水を取り込み、次に水にありつくまでの蓄えにします。種類や季節によっては、10日ほど水を飲まずに過ごせることもあります。
脱水と暑さに強い体
ラクダの体には、水分の消耗をおさえる工夫が備わっています。赤血球が楕円形をしているため、体の水分が減って血が濃くなっても流れやすく、ひどい脱水にも耐えられます。さらに日中は体温を34度から40度ほどのあいだで大きく変動させ、暑い時間帯に汗をかくのを最小限におさえます。汗を惜しむこうした仕組みが、水の少ない砂漠での長旅を支えています。
砂漠を生きる体のつくり
砂とトゲから身を守る
長いまつげと閉じる鼻
砂漠では、舞い上がる砂から目や鼻を守ることが欠かせません。ラクダの目は長いまつげでおおわれ、砂ぼこりが目に入るのを防ぎます。鼻の穴は自分の力で閉じることができ、砂あらしのときには砂の侵入をさえぎります。厚く丈夫な唇をもち、トゲだらけの砂漠の植物も平気で食べられるのも、乾いた土地で暮らすための備えです。

幅広い足と体のたこ
ラクダの足の裏は、大きく幅広い形をしています。この平たい足が砂の上で体重を分散させ、柔らかい砂に深く沈まずに歩けます。また、膝や胸など地面につく部分には、あらかじめ厚い皮のたこができています。熱く焼けた砂の上に座っても、このたこが体を守ってくれます。砂漠の環境に合わせて、体のあちこちが作りかえられた動物です。
乾いた植物を反芻する
ラクダは、乾いて硬い草やトゲのある低木など、ほかの動物が口にしない植物もよく食べます。胃は3つの部屋に分かれていて、一度飲みこんだ食べ物を口に戻してかみ直す反芻を行います。栄養の乏しい砂漠の植物からも、時間をかけて少しずつ養分を取り出せる体のつくりです。水分の多い植物を食べれば、それだけで長いあいだ水を飲まずに過ごせることもあります。メスは1年以上の妊娠を経て、ふつう1頭の子を産む動物です。生まれた子は数時間のうちに立ち上がり、母親について歩けるようになります。

「唾を吐く」の正体
吐くのは唾ではない
ラクダには「唾を吐く」「気が荒い」という評判があります。実際にラクダは、いやなことがあったり身の危険を感じたりすると、口から中身を勢いよく吐きかけます。ただし、このとき飛んでくるのは、いわゆる唾ではありません。胃の中にある半分消化された内容物で、強いにおいがします。相手をひるませるための、いわば防御の手段です。
ふだんは辛抱強い動物
ふだんのラクダは、温厚で辛抱強い動物です。人に慣れたラクダが唾を吐くことはめったになく、多くは強く嫌がったときや、発情期のオスが興奮したときに見られます。頑固で気難しいというイメージが先に立ちますが、長く人と暮らしてきたラクダは、扱い方しだいで穏やかにつき合える相手です。唾の話も、こうした一面が誇張されて広まったものといえます。
人とのかかわり ― 砂漠の船
荷を運ぶ「砂漠の船」
ラクダは、数千年前から人に家畜として飼われ、砂漠の暮らしを支えてきました。重い荷物を背負って乾いた大地を何日も歩けることから、ラクダは「砂漠の船」と呼ばれます。人や荷を乗せて砂漠を行き来する隊商(キャラバン)は、長くラクダなしには成り立ちませんでした。

乳・肉・毛の恵みと家畜化
ラクダは運ぶ力だけでなく、乳や肉、毛など多くの恵みを人にもたらしてきました。栄養豊富なラクダの乳は砂漠の民の大切な食料であり、毛は衣類や敷物に、乾いた糞は貴重な燃料に使われます。こうして深く家畜化が進んだ結果、ヒトコブラクダには今では野生の個体群がまったくいなくなりました。ラクダは、人の暮らしと切っても切れない形で歩んできた動物です。
日本でも、各地の動物園や砂丘の観光地でラクダを見ることができ、背に乗る体験ができる場所もあります。とくに鳥取砂丘は、ラクダに乗って砂の丘を歩く観光でよく知られています。いっぽう砂漠の国々では、今も人の移動や荷運びにラクダが活躍しています。もっとも身近な大型の砂漠動物として、ラクダは日本でもなじみ深い存在です。
参考
- Wikipedia「Camel」(2種+野生種・こぶの脂肪・水と脱水耐性・砂漠適応・家畜化)https://en.wikipedia.org/wiki/Camel
- Wikipedia「Wild Bactrian camel」(野生フタコブラクダ・近絶滅)https://en.wikipedia.org/wiki/Wild_Bactrian_camel
- IUCN Red List「Camelus ferus」(野生フタコブラクダの保全状況)https://www.iucnredlist.org/species/63543/97204206
画像出典
Florian Prischl, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons | https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Camelus_dromedarius_in_Nuweiba.jpg


