ピラルク

ピラルクの全身 古代魚

ピラルクは、南アメリカのアマゾン川の流域に住む、世界最大級の淡水魚です。全長は2m前後がふつうで、大きなものは3mに近づきます。細長い体の後ろのほうには赤い模様が入り、この色が名前のもとになりました。ゆったりと泳ぐ姿から、水族館でも人気があります。

ピラルクのいちばんの特徴は、えらだけでなく空気そのものを吸って呼吸することです。魚でありながら、ときどき水面へ口を出して息をします。さらに、大昔からほとんど姿を変えていない古い血すじの魚で、「生きた化石」とも呼ばれます。硬いうろこや骨でできた舌など、珍しい体のつくりを順に紹介します。

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分類と学名

分類階層

ピラルクは、アロワナの仲間と同じアロワナ目に入る魚です。学名は Arapaima gigas といいます。近い年になって、同じアラパイマ属のなかにいくつかの別種が見分けられるようになりました。ここで中心に取り上げるのは、いちばんよく知られた Arapaima gigas です。

  • 目:アロワナ目
  • 科:アロワナ科(アラパイマ科とする分け方もあります)
  • 属:アラパイマ属
  • 種:ピラルク(Arapaima gigas

名前の由来

「ピラルク」という名は、アマゾンの先住民のことばに由来します。「ピラ」は魚、「ウルク」は赤い色をさすといわれ、あわせて「赤い魚」という意味になります。尾に近い部分に広がる赤い模様が、その名のもとです。ブラジルではピラルク、ペルーやエクアドルではパイチェと呼ばれています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約2〜3m/体重 100〜200kgほど
分布南アメリカのアマゾン川流域(ブラジル・ペルーなど)
生息環境流れのゆるやかな川・湖・はんらん原の水辺
食べ物魚を中心に、エビ・カニや水辺の小動物など(肉食)
呼吸えらに加え、うきぶくろで空気呼吸をする
保全状況とりすぎで各地の数が減少。国際取引は制限されている

空気を吸う魚

多くの魚は、水にとけた酸素をえらでとり入れて呼吸します。ところがピラルクは、それだけでは足りません。えらに加えて、うきぶくろを肺のように使い、空気そのものから酸素をとり入れます。

うきぶくろが肺のかわり

水面へ息をしにくる

ピラルクのうきぶくろは、内側がこまかく仕切られ、血管が張りめぐらされています。このつくりが、陸の動物の肺とよく似たはたらきをします。そのため、数分から二十分ほどに一度は水面へ上がり、口を出して空気を吸わなければなりません。息をするときに「ゴボッ」と音を立てることもあり、その音でピラルクの居場所がわかるといわれます。

水面近くを泳ぐピラルク
ピラルクはときどき水面へ上がり、口から空気を吸います。撮影:Gant223(CC BY-SA 4.0)

酸素の少ない水でも生きられる

アマゾンでは、水温が高く、酸素の薄い水辺も少なくありません。ふつうの魚には苦しい場所です。けれどもピラルクは、空気から直に酸素をとれるため、こうした水でも生きていけます。乾いた季節に水が減り、まわりの魚が弱るような時期でも、ピラルクは息つぎをしながら耐えます。

世界最大級の巨体

ピラルクは、うろこを持つ淡水魚のなかで、世界でも指おりの大きさです。ふだん目にするのは2m前後ですが、育つと3mに近づき、体重は100kgを大きくこえます。

ゆったり泳ぐピラルクの全身
前が細長く、後ろが平たいピラルクの体。撮影:Citron(CC BY-SA 3.0)

体のつくり

前は細長く、後ろは平たい

ピラルクの体は、前半分が細長い円柱のような形をしています。後ろ半分は上下に平たく、背びれとしりびれが尾の近くまで長く続きます。この形は、水中でぐいと加速するのに向いた姿です。ふだんはゆったり泳ぎますが、獲物を捕らえるときは、体を大きくくねらせてすばやく前へ出ます。

赤い模様

体はぜんたいに暗い灰色や緑がかった色ですが、尾に近づくほど赤みが強くなります。うろこのふちは赤く彩られ、光の当たり方では金属のように輝いて見えるほどです。この赤色が、「赤い魚」という名前のもとになりました。若いうちは色が薄く、育つにつれてはっきりしてきます。

生きた化石とよばれる古い魚

ピラルクが入るアロワナ目は、とても古い時代から続く魚の仲間です。大昔の魚の姿を色濃く残しているため、ピラルクは「生きた化石」と呼ばれることがあります。

同じアロワナ目には、観賞魚として親しまれるアロワナの仲間もいます。

アロワナ
「龍魚」とも呼ばれるアロワナ。水面を狙って飛び出すハンターの口とひげ、龍にたとえられる大きなうろこ、口の中で子を育てる子育て、シルバー・アジア・ブラックなどの種類と飼い方まで、写真つきで紹介します。

古い血すじの魚

骨でできた舌

アロワナ目の仲間は、「骨のような舌を持つ魚」というグループにまとめられます。ピラルクの舌は硬く、小さな歯のようなつぶがならんでいます。上あごにも同じような歯の板があり、舌と上あごではさんで獲物をすりつぶします。この舌の仕組みが、古い仲間に共通する目じるしのひとつです。

舌は道具にもなる

ピラルクの硬い舌は、乾かすとおろし金のように使えます。アマゾンでは古くから、木の実などをすりおろす道具として役立てられてきました。大きな体だけでなく、体の一部も人の暮らしに役立てられてきました。

ピラニアも通さない硬いうろこ

ピラルクが住む川には、するどい歯を持つピラニアもいます。それでもピラルクが身を守れるのは、うろこがとても丈夫だからです。

ピラルクの大きくて硬いうろこ
大きく硬いピラルクのうろこ。撮影:T.Voekler(CC BY-SA 3.0)

何層にも重なったうろこ

ピラルクのうろこは大きく、内側が層を重ねたつくりになっています。外側は硬く、内側はしなやかで、力が加わっても割れにくくできています。ピラニアの歯でかまれても、うろこがたわんで衝撃を受けとめます。この丈夫さは、人がつくる軽い防具の手がかりとして、研究にも取り上げられています。

卵を守るオス

ピラルクは、子をていねいに育てる魚です。とくに子の世話に深くかかわるのはオスです。産卵の季節になると、水底の砂地に浅いくぼみをつくって巣にします。

巣をつくり子を守る

頭の色が黒くなる

子を守る時期のオスは、頭の色が黒っぽく変わります。この黒い頭は、子の群れの目じるしになると考えられています。オスは巣のまわりを離れず、近づく敵を追いはらいます。大きな体を張って子を守るようすは、魚としては手あついものです。

子は親のまわりに群れる

かえったばかりの子は、親のそばを離れず、小さな群れをつくって過ごします。親の頭の近くに集まって泳ぎ、危ないときはさっと親の下へ隠れます。守られて育つのは、ほんのしばらくのあいだです。やがて自分で息つぎと餌とりを覚え、群れを離れていきます。

人とのかかわり

アマゾンの大切な食用魚

ピラルクは身が柔らかく、小骨が少ないため、アマゾンでは昔から大切な食用魚です。息つぎのために水面へ上がる習性があるので、人にとっては捕らえやすい魚でもあります。そのため一時はとりすぎで数を大きく減らしました。今では、地域ごとにとる量やとってよい時期を決め、数を守りながら利用するとり組みが進んでいます。国をこえた取引にも制限が設けられています。

水中のピラルク
アマゾンでは大切な食用魚として、数を守るとり組みが進みます。撮影:Cliff(CC BY 2.0)

外来種としての問題

ピラルクは、その珍しさや大きさから、各地で飼われたり養殖されたりしてきました。そのなかで、東南アジアの川などに住みついた例が報告されています。もともといなかった場所に住みつくと、地元の魚を食べたり場所を奪ったりして、生き物のつり合いをくずすおそれがあります。飼育していた魚を川や池に放すことは、こうした問題につながる行為です。

どこで会えるか

ピラルクは、日本各地の大きな水族館で見ることができます。アマゾンの魚を集めた水そうの主として、ゆったり泳ぐ姿が展示されることが多い魚です。ときおり水面へ上がって息をする場面が見られることもあり、空気を吸う魚であることがよくわかります。体全体が入る大きな水そうでは、その大きさがよく伝わります。

水族館の大水そうを泳ぐピラルク
水族館の大きな水そうを泳ぐピラルク。撮影:daryl_mitchell(CC BY-SA 2.0)

参考

  • Wikipedia「Arapaima gigas」「Arapaima」
  • Encyclopædia Britannica「Pirarucu」
  • National Geographic「Arapaima」
  • IUCN Red List ほか

画像出典

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