アカカンガルーは、オーストラリアの乾いた大地に住む、世界でいちばん大きな有袋類です。オスは立ち上がると人ほどの高さになり、赤茶色のたくましい体をしています。長くて太いしっぽと、ばねのような後ろ脚を使い、跳ねるように進みます。おなかの袋で子を育てる姿は、有袋類ならではのものです。
カンガルーといえば、跳ねて進む姿や、袋から顔を出す子がよく知られています。じっさいには、その体には速く跳ぶためのしくみや、乾いた土地で生きぬく工夫がつまっています。大きさや跳ぶ力、キックの強さ、袋の中の子育てまでを順に見ていきます。
分類と学名
分類階層
アカカンガルーは、カンガルー科に入る有袋類です。学名は Osphranter rufus といいます。同じ有袋類の仲間には、ウォンバットやフクロギツネなど、オーストラリアに住む動物が多くいます。カンガルーのなかまだけでも、大小あわせて数十種が知られています。

- 目:双前歯目(そうぜんしもく)
- 科:カンガルー科
- 種:アカカンガルー(Osphranter rufus)
- 分布:オーストラリアの内陸部

オスとメスで色が違う
「アカ」の名は、オスの体が赤茶色をしていることからきています。ところが、メスの多くは青みがかった灰色で、名前ほど赤くありません。そのため、メスは「青いカンガルー」と呼ばれることもあります。同じ種類でも、オスとメスで見た目が違うのが特徴です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 頭胴長 オス約1.3〜1.6m+しっぽ約1m/体重 オス最大85kgほど |
|---|---|
| 分布 | オーストラリアの内陸の乾いた地域 |
| 生息環境 | 草原・低木のまばらな半さばく・平原 |
| 食べ物 | 草を中心とした植物(草食) |
| 速さ | 短い距離で時速70km近く/ふだんは時速20〜25kmほど |
| 子育て | おなかの袋(育児のう)で子を育てる |
世界最大の有袋類
アカカンガルーは、いま生きている有袋類のなかで、いちばん大きな種類です。かつては、もっと大きなカンガルーのなかまもいましたが、今いる種類ではアカカンガルーが最大です。とくにオスは体が大きく、よく発達した筋肉をもっています。

立ち上がると人ほどの大きさ
大きなオスと小さなメス
大きなオスは、しっぽを地面につけて立ち上がると、大人の人ほどの高さになります。頭から体までの長さは1.5m前後。そこに、1mほどのしっぽが加わります。体重は、大きなものでは85kgに達することもあります。いっぽうメスはひとまわり小さく、オスの半分ほどの体重しかないことも珍しくありません。

跳んで進む体
カンガルーは、ほかの多くの動物のように、脚を交互に出して走ることはしません。両方の後ろ脚をそろえ、跳ねるようにして前へ進みます。この跳ぶ移動には、大きな利点があります。
なぜ速く跳べるのか
ばねのような脚と腱
カンガルーの後ろ脚には、太くて丈夫な腱(けん)があります。着地のときにこの腱がのびてエネルギーをため、次に跳ぶときにばねのように返します。少ない力で何度も跳び続けられるのが、この跳び方の特長です。短い距離では時速70km近くも出せ、ひと跳びで8m以上を進むこともあります。速さのわりに使う力が少なくてよいのが、この移動の強みです。時速40kmほどなら、2kmもの距離を走り続けられるといわれます。

しっぽは5本目の脚
カンガルーの太いしっぽは、跳ぶときに体のバランスをとる、舵の役目をします。ゆっくり歩くときには、しっぽを地面につっぱり、前脚とともに体を支えます。研究では、このしっぽが、前脚と後ろ脚を合わせたのと同じくらいの力で体を前へ押し出しているとされます。尾は「5本目の脚」ともいえる働きをします。
強いキックと戦い
オスどうしのボクシング
前脚で組み後ろ脚でける
オスのカンガルーどうしは、しばしば立ち上がって取っ組みあいます。前脚で相手をつかんで押しあい、太いしっぽで体を支えながら、強い後ろ脚で相手をけります。このようすが、まるでボクシングのように見えることから、「カンガルーのボクシング」と呼ばれます。後ろ脚のけりは鋭く、まともに当たれば大けがをするほどです。
なわばりとメスをめぐって
オスどうしが戦うのは、多くの場合、群れの中で強い立場を得るためです。強いオスほど、メスと子を残す機会にめぐまれます。大きく育ったオスほど、こうした戦いで有利になります。ふだんはおとなしい草食動物ですが、こうした戦いのときには力強い一面を見せます。人が近づきすぎたときにも、身を守るためにけることがあるので注意が必要です。
おなかの袋で育つ子
有袋類であるカンガルーは、おなかにある「育児のう」という袋で子を育てます。この子育てのしかたは、ほかの多くの動物とは大きく違っています。

豆つぶほどで生まれる
袋の中で育つジョーイ
生まれたばかりの子は、豆つぶほどの大きさしかありません。目も開かない小さな体で、自分の力で母親の袋まではい上がります。袋の中で乳を飲み、半年ほどかけて大きくなります。袋の内側も、母親がなめて清潔にたもつ大切な場所です。カンガルーの子は「ジョーイ」と呼ばれ、育つと袋から顔を出すようになります。
出産をずらすしくみ
アカカンガルーのメスには、受精した子の育ちを、とちゅうで止めておけるしくみがあります。袋の中にまだ子がいるあいだは、次の子は小さな種のまま待たせておけるのです。前の子が袋を出ると、待っていた子が育ちはじめます。雨が降って草がふえる時期に子が育つよう、タイミングを合わせられることもあります。厳しい環境でも子を絶やさないための、理にかなったしくみだと考えられています。
乾いた大地の暮らし
アカカンガルーは、雨の少ない内陸の乾いた土地で暮らします。草を食べ、少ない水でも生きられる体をしています。水が乏しい土地でも、草に含まれる水分だけで長く過ごせます。暑いときには、前脚をなめてぬらし、そこを風が通ることで体を冷やすようすも見られます。日ざしの強い昼間は、木かげで休んで体温の上がりすぎを防ぎます。活発に動くのは、涼しい朝や夕方です。ふだんは数頭から数十頭の群れをつくって過ごし、たがいに気配をうかがいながら草を食べます。外敵が近づくと、後ろ脚で地面を強くたたいて、仲間に危険を知らせることもあります。

オーストラリアの象徴
カンガルーは、オーストラリアを代表する動物として、世界じゅうに知られています。国の紋章には、エミューという鳥とならんでカンガルーが描かれています。前へ跳んで進み、後ろへは下がりにくいことから、「前に進む国」の象徴とされることもあります。硬貨や切手、飛行機の絵など、さまざまな場面でその姿が使われています。スポーツの代表チームの愛称や、企業のマークにも、カンガルーはよく登場します。
どこで会えるか
日本でも、アカカンガルーは各地の動物園で飼育されています。広い運動場で、跳ねたり寝そべったりする姿を間近で見られます。運がよければ、母親の袋から顔を出すジョーイに出会えることもあります。大きなオスが立ち上がると、大人の背丈ほどの高さになります。
参考
- Wikipedia「アカカンガルー」「Red kangaroo」
- The Australian Museum「Red Kangaroo」
- カンガルーの移動に関する研究(尾の役割ほか)/Encyclopædia Britannica
画像出典
- PotMart186, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Fernando Losada Rodríguez, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- CYH, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Warren Garst, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- วิชิต กองคำ, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Warren Garst, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


