サイは、鼻の上に角を持つ大型の草食動物です。その角は骨ではなく、毛や爪と同じケラチンという成分でできています。現生のサイは5種。アフリカとアジアの草原や森林に分布します。角を目当てにした密猟が続き、多くの種が絶滅の危機にあります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:奇蹄目 Perissodactyla(ウマやバクの仲間)
- 科:サイ科 Rhinocerotidae
- おもな属:シロサイ属・クロサイ属・サイ属など(現生5種)
和名・英名
- 和名:サイ(犀)
- 英名:Rhinoceros(略してRhino)
名前の由来
英名の Rhinoceros は、ギリシャ語の rhino(鼻)と keras(角)を合わせた言葉です。意味は「鼻の角」。鼻の上に角を持つ姿が、そのまま名前になっています。サイはウマやバクと同じ、ひづめの指が奇数の奇蹄目に属します。ウシやシカのような偶蹄目とは、系統の異なるグループです。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体重 約770kg〜2,300kg(最大はシロサイ) |
|---|---|
| 分布 | アフリカに2種、南・東南アジアに3種 |
| 生息環境 | 草原・サバンナ・熱帯雨林など(種による) |
| 食べもの | 草食(草や木の葉、枝など) |
| 走る速さ | 短距離で時速40〜50kmほど |
| 角 | 1本または2本。骨でなくケラチン(毛や爪と同じ) |
| 寿命 | およそ40〜50年 |
角のつくりと役割

骨ではなく、毛と同じ成分
ケラチンでできている
サイの角の主成分はケラチンで、人の髪や爪と同じたんぱく質です。細い繊維が密に集まり、硬い角を形づくっています。ウシやシカの角と違い、内部に骨の芯はありません。力強い見た目に反して、材料そのものは髪や爪と変わりません。
皮膚から生え、削れても伸びる
角は頭骨から生えるのではなく、皮膚の表面が盛り上がって作られます。このため根もとから折れても、時間をかけて再び伸びてきます。人の爪が伸び続けるのと同じ仕組みです。先端は使ううちにすり減り、形は種によって異なります。
角の使い道
サイは角をさまざまな場面で使います。敵を追い払うときや、なわばりを争うときの武器。地面を掘って、水や塩分を探すのにも役立ちます。母サイが子を守るために向けることもあります。大きな体と長い角を備えた成獣を襲う動物は、ほとんどいません。
シロサイとクロサイ、色は同じ

名前は色でなく、口の形
シロサイ ― 四角い口で草を食む
シロサイもクロサイも、体色はどちらも灰色です。色で見分けるのは、ほとんどできません。「シロ」の名は、色ではなく「広い口」を指す語に由来するとされますが、確かな証拠はありません。シロサイの口は四角く平たく、地面の草を刈り取るのに適します。頭を低く下げ、草原の草を食べて暮らす種です。
クロサイ ― とがった口で葉を食べる
クロサイの口は、先が尖って少し曲がっています。この口で木の枝や葉を器用につまみ取ります。地面の草よりも、低木の葉を食べることが多い種です。口の形は、シロサイと見分けるいちばんの手がかりになります。同じ灰色でも、口もとを見れば種類を判断できます。

角の数と、分布の違い
角の数は、種によって決まっています。アフリカのシロサイとクロサイは、角を2本持ちます。アジアのインドサイとジャワサイは、角が1本です。スマトラサイは2本で、体に毛が多い点が特徴です。角の数と口の形は、種を見分ける重要な手がかりになります。
5種のサイ

アフリカの2種
アフリカには、シロサイとクロサイの2種が分布します。シロサイは陸上の動物ではゾウに次ぐ大きさで、草原で群れをつくることもある比較的穏やかな種です。クロサイは林の多い環境を好み、単独で暮らすことが多いとされます。神経質で攻撃的な一面があり、危険を感じると走り回ります。

アジアの3種
アジアには、インドサイ・ジャワサイ・スマトラサイの3種がいます。インドサイは、よろいのような厚い皮膚のひだが特徴です。ジャワサイは、現生のサイでもっとも生息数の少ない種のひとつとされます。スマトラサイは現生最小で、体に毛が生えています。氷河期に生きた毛深いケブカサイに近い特徴を残す種です。
大きな体のつくりと生態

目は悪いが、鼻と耳がきく
大きな体に反して、サイの視力はよくありません。少し離れると、人の姿もぼんやりとしか見えないとされます。そのかわり嗅覚と聴覚が発達し、においや物音で周囲の状況をとらえます。物音やにおいに敏感で、驚くと突進することもあります。見た目の印象とは違い、警戒心の強い動物です。
走る速さも見た目以上で、短距離では時速40〜50kmに達します。2トン近い体で突進されれば、小型車ほどの重さがぶつかってくることになります。近づくものに驚いて走り出すのは、視力の弱さを補う防衛的な行動と考えられています。
体は大きいが、脳は小さい
サイは体の大きさのわりに、脳が小さい動物です。成獣のクロサイでも、脳の重さは500g前後にとどまります。分厚い皮膚は、コラーゲンという丈夫なたんぱく質が網目状に重なった構造です。厚い部分では5cmに達し、ほかの哺乳類の皮膚より硬く丈夫とされます。それでも日焼けや虫刺されには弱く、肌を守る工夫が欠かせません。
泥浴びで体を守る
サイは泥の中に寝ころび、泥浴びをします。体に泥を塗ることで、強い日ざしや虫から肌を守ります。背中には、ウシツツキという鳥がとまり、皮膚の虫をついばむこともあります。厚い皮膚に見えて、日焼けや虫刺されには弱い動物です。泥は、サイにとって日焼け止めのような役割を果たします。
会える場所 ― 日本の動物園
サイは、日本の動物園でも会える大型動物です。北海道と沖縄を除く20か所以上の施設が、サイを飼育・展示しています。
日本で会えるのは3種
日本で会えるサイは、シロサイ・クロサイ・インドサイの3種です。動物園のシロサイは、すべてアフリカ南部のミナミシロサイです。クロサイやインドサイも各地で飼育され、繁殖の成功例もあります。一方、スマトラサイとジャワサイは日本では会えません。野生の生息数がごくわずかで、飼育もほとんど行われていないためです。
サファリパークで間近に
シロサイは2025年時点で、全国11ほどの施設におよそ40頭が飼育されています。那須サファリパーク・富士サファリパーク・東武動物公園・静岡の日本平動物園などで見られます。サファリパークでは、車のすぐそばを歩く姿を間近に観察できます。会える種は施設によって異なり、多摩動物公園ではインドサイ、各地の動物園ではクロサイが中心です。展示状況は変わることがあり、最新の情報は各施設が公表しています。
絶滅の危機と、密猟
いちばんの敵は、人
角を狙う密猟
成獣のサイには、自然界で襲う天敵がほとんどいません。ライオンなどに狙われるのは、力の弱い子どものサイに限られます。サイにとって最大の脅威は、人間です。角が高値で取引されるため、密猟が後を絶ちません。その結果、多くの種が数を減らし、絶滅の危機に追い込まれています。
角に薬の効きめはない
サイの角は、一部の地域で薬になると信じられてきました。しかし、その効果を示す確かな証拠はありません。角の成分は、人の爪と同じケラチンにすぎないからです。自分の爪をかじるのと、成分の上では変わらないことになります。根拠のない言い伝えが、サイを絶滅の危機へ追いやってきました。
わずかに残る種
サイの仲間には、絶滅寸前まで数を減らした種があります。シロサイの亜種キタシロサイは、最後のオスが2018年に死に、残るのはメス2頭だけです。ともにケニアの保護区で見守られていますが、自然に繁殖する道はほぼ絶たれています。アジアのジャワサイは70頭ほどで、インドネシアのウジュンクロン国立公園にしか残っていません。スマトラサイも数十頭と、いずれも危機的な状況です。現在はすべてのサイが、ワシントン条約によって国際的な取引を禁じられています。各地の保護区では、監視や密猟の取り締まりが続けられています。
参考
- Wikipedia(英語版)「Rhinoceros」― 形態・生態・5種・角・食性・保全の各節
- zoo zoo diary「サイに会える動物園【シロ・クロ・インド】種類別一覧」(2025年3月更新)― 国内の飼育園・種別の飼育数・保全区分
- ズーリスト「ミナミシロサイ 飼育園館一覧」― 国内でシロサイを飼育する施設数
画像出典
アイキャッチ画像:Giles Laurent, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(16:9にトリミングして使用)。本文中の画像は各キャプションに出典を記載しています。


