デメニギスは、透明なドーム状の頭を持つ深海魚です。頭の中には緑色の目があり、ふだんは上を向いて獲物の影を探します。水深600〜800mの暗い海に暮らし、生きた姿が詳しく撮影されたのは2009年のことでした。顔の前にある2つの点は目に見えますが、これは鼻にあたる部分です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:条鰭綱 Actinopterygii
- 目:ニギス目 Argentiniformes
- 科:デメニギス科 Opisthoproctidae(バレルアイ)
- 種:デメニギス Macropinna microstoma
和名・英名
- 和名:デメニギス(出目似鱚)
- 英名:Barreleye(バレルアイ)
名前の由来
和名は「出目(でめ)」と、細長い深海魚「ニギス」を合わせた名前です。飛び出した目を持つ、ニギスの仲間という意味になります。英名の Barreleye は「樽(たる)の目」を指し、筒のような形の目に由来します。ニシンの仲間とされることもありますが、これは誤りで、正しくはニギス目に属します。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約15cm |
|---|---|
| 分布 | 太平洋北部などの深海 |
| 生息環境 | 水深およそ600〜800m(薄暗い中深層) |
| 食べもの | 小さな動物プランクトン、クラゲの仲間など |
| 目 | 筒状。ふだんは上向き、前へも回せる |
| 頭 | 上半分が液体で満たされた透明なドーム |
透明な頭と、上を向く目

頭は透明なドーム
液体で満たされたシールド
デメニギスの頭は、上半分が透明なドームでおおわれています。柔らかい透明な組織でできた、液体で満たされたシールドです。この中に大きな目が収まり、目が動くための空間になっています。外から、頭ごしに目のようすが見えるのは、この深海魚ならではの特徴です。
生きているときだけの形
この透明なドームは、とてもこわれやすい部分です。網で海面へ引き揚げると、ドームはつぶれてしまいます。そのため長い間、頭が透明であることは知られていませんでした。生きた姿が確認されて初めて、本来のドーム状の頭が明らかになりました。
緑の目は上を向く
筒状の目が回る
デメニギスの目は、大きな筒のような形をしています。ふだんは真上を向き、頭上を通る獲物の影を探します。以前は上しか向けないと考えられていました。しかし生体の観察により、前方へも回せることが分かっています。口の獲物を、目で見ながら食べるためと考えられています。
緑は「天然のサングラス」
目が緑色に見えるのは、黄色い色素のフィルターがあるためです。このフィルターは、生きものが放つ青い光を抑えます。そのうえで、上から差しこむわずかな太陽の光を、効率よくとらえます。深海で暮らすための、天然のサングラスのような役割を果たします。
目に見える2つの点は「鼻」
口の上にある2つのくぼみは、目ではありません。においを感じる鼻にあたる部分です。本当の目は、透明なドームの中にある緑色の球のほうです。かつては、この2つの点が目だと長く考えられていました。生きた姿が撮影されて、ようやく取り違えが正されました。
水族館では見られない?

生きた姿は見るのが難しい
デメニギスは、深海の低い水温と高い水圧の中で暮らします。水族館で飼うのは、とても難しい魚です。網で揚げると透明なドームがこわれ、ふつうの深海魚のように見えます。上の写真も、頭のドームがつぶれた標本です。生きた姿を目にする機会は、ほとんどありません。
2009年、生体の撮影で謎が解けた
長い間、デメニギスの本当の姿は謎のままでした。この謎を解いたのが、アメリカのモントレー湾水族館研究所(MBARI)です。2009年、深海探査ロボットが生きたデメニギスを詳しく撮影しました。透明なドームと、その中で動く緑の目が、初めて映像で確認されました。この発見は世界的なニュースとなり、デメニギスは広く知られるようになりました。
デメニギス科の仲間

3つのタイプに分かれる
デメニギス科には、いくつかの種が知られています。体つきは大きく3つのタイプに分かれます。デメニギスのようなずんぐり型、クダウオの仲間のような細長い型、その中間の型です。どれも大きな筒状の目を持ち、深海で上を見上げて暮らします。

光る腹と、鏡の目
仲間の中には、腹が平らで鏡のように光る種がいます。下から差す光に紛れ、影を消すためと考えられています。また、クダウオの仲間のドリコプテリクスは、目にレンズだけでなく「鏡」も使います。鏡で光を集めてピントを合わせる、脊椎動物では唯一知られる例です。深海の暗さに合わせ、それぞれが変わった目を持ちます。
深海の暮らしと、透明な頭のわけ

頭が透明なわけ
より多くの光を集める
深海は、太陽の光がほとんど届かない暗い世界です。透明なドームは、わずかな光を目に集めるのに役立つと考えられています。上を向いた大きな目で、頭上を通る影をとらえます。暗い海で生きのびるための、光を無駄なく使うしくみです。
クラゲの毒から目を守る
透明なドームには、目を守る役割もあるとされます。デメニギスは、クダクラゲの触手にかかった獲物を横取りすると考えられています。そのクダクラゲの触手にあるのは、刺す毒。透明なドームは、この毒から大切な目を守る盾にもなっているようです。
何を食べ、どう暮らすか
デメニギスは、小さな動物プランクトンやクラゲの仲間を食べます。獲物を探す手がかりは、上を向いた大きな目。頭上を漂う影を見つけると、ゆっくり近づきます。ふだんは、光の届く限界のすぐ下あたりにとどまるとされます。群れは作らず、単独で漂って暮らす小さな深海魚です。
参考
- Wikipedia(英語版)「Barreleye」― デメニギス科の形態・目のしくみ・生態・分布
- MBARI(モントレー湾水族館研究所)「Researchers solve mystery of deep-sea fish with tubular eyes and transparent head」(2009)― 生体の撮影と透明ドーム・目の解明
- 深海魚図鑑「デメニギスとは?透明な頭を持つ深海魚の正体」― 名前の由来・目の色・鼻との取り違え
画像出典
アイキャッチ画像:J. Hlidberg / K. and E. Hjørne, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons(16:9に整えて使用。実写の生体写真が公開されていないため、科学イラストを使用)。本文中の画像は各キャプションに出典を記載しています。


