キマユペンギンは、目の上に黄色い眉のような冠羽(かんむり羽)をもつペンギンです。すむのはニュージーランドだけ。しかも、海辺の森の中に巣をつくるという、ペンギンとしてはとてもめずらしい暮らしをしています。数が少なく、なかなか出会えない貴重なペンギンです。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ペンギン目 Sphenisciformes
- 科:ペンギン科 Spheniscidae
- 属:マカロニペンギン属 Eudyptes
- 種:キマユペンギン Eudyptes pachyrhynchus
和名・英名
- 和名:キマユペンギン(黄眉ペンギン)
- 英名:Fiordland penguin / Fiordland crested penguin
- マオリ名:タワキ(tawaki)
名前の由来
和名の「キマユ」は、目の上にある黄色い眉のような冠羽から来ています。英名の「フィヨルドランド」は、おもな繁殖地となっているニュージーランド南西部の地名です。学名のEudyptes(エウディプテス)は「じょうずに潜る者」、種名のpachyrhynchus(パキリンクス)は「太いくちばし」という意味を持ちます。現地の先住民マオリの人々は、このペンギンを「タワキ」と呼び、古くから親しんできました。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約55cm・体重 約2〜5kg(中型) |
|---|---|
| 分布 | ニュージーランド南西部・スチュアート島など(固有種) |
| 生息環境 | 海辺の温帯林・岩場の海岸 |
| 食べ物 | ヤリイカ・オキアミ・小魚(海の中で捕る) |
| 寿命 | 野生でおよそ10〜20年 |
| 保全状況 | IUCN:準絶滅危惧(NT) |
黄色い冠羽がトレードマーク
黄色い眉のような冠羽
キマユペンギンは体長55cmほど、体重2〜5kgの中くらいのペンギンです。頭からせなかは黒く、おなかは白い体をしています。いちばんの目印は、くちばしの付け根から目の上を通って後ろへ流れる、あざやかな黄色い冠羽です。この黄色い帯が眉のように見えることから、「キマユ(黄眉)」の名がつきました。くちばしは名前のとおり太めで、赤みがかったオレンジ色をしています。冠羽は子どものうちは目立たず、大人になるにつれてはっきりと色づいていきます。

冠羽ペンギンの中での見分け方
キマユペンギンは、同じマカロニペンギン属のマユダチペンギンやハシブトペンギン(スネアーズペンギン)とよく似ています。見分けるコツは、くちばしの付け根です。よく似た2種はくちばしの付け根にピンクの地肌が見えますが、キマユペンギンにはそれがありません。冠羽の付け根まで黒い羽におおわれているのが、この種の特徴です。
森で暮らす、めずらしいペンギン
キマユペンギンの最大の特徴は、その暮らす場所です。多くのペンギンが氷や開けた海岸で子育てをするのに対し、この種は海辺の深い森の中、木の根もとや岩のすき間に巣をつくります。うっそうとした温帯の森で暮らすペンギンは、世界でもごくわずかしかいません。またとても用心深く、繁殖期以外はたいてい一頭で行動し、夜に活動する夜行性です。そのため、野生の姿を見るのはとてもむずかしいペンギンです。昔はニュージーランドのもっと広い範囲にすんでいたと考えられていますが、人の移り住みとともにすめる場所がへり、今では人の少ない南西部などにだけ残っています。

冬に子育て・2つの卵の切ないルール
2つの卵の「切ないルール」
キマユペンギンは、多くのペンギンと違い、南半球の冬にあたる7月ごろから子育てを始めます。巣には2個の卵を産みますが、じつは切ない決まりがあります。先に産まれる1個目の卵は小さく、あとから産まれる2個目のほうが大きいのです。ふつうは大きい2個目のヒナが優先して育てられ、最終的に育つのは1羽だけになることがほとんどです。これは「ブルード・リダクション(ひな数調整)」と呼ばれる、きびしい環境を生きぬくためのしくみと考えられています。
抱卵から巣立ち・親の換羽まで
オスとメスの子育ての分担
卵は31〜36日でかえり、この間はオスとメスが交代で抱きます。ふ化のあとはしばらくオスが巣でヒナを守り、そのあいだメスがほぼ毎日、海から餌を運んで育てます。
巣立ちと、親の「断食換羽」
ヒナは生後75日ほどで海へと巣立っていきます。親鳥はその後、羽の生えかわりのために巣にもどり、20〜25日ほど何も食べずに新しい羽ができるのを待ちます。
食べもの・天敵と保全
食べものと「マラソンペンギン」
キマユペンギンの主な食べものは、ヤリイカなどのイカ類です。ほかにオキアミや小魚も食べ、海にもぐって捕まえます。子育てを終えた親鳥は、羽の生えかわり(換羽)に備えて、数千kmもの長い旅に出ることが分かっています。その距離の長さから「マラソンペンギン」と呼ばれることもあります。

外来の天敵と、準絶滅危惧
キマユペンギンは、野生でおよそ2500組ほどしかいないとされ、IUCNレッドリストでは「準絶滅危惧(NT)」に指定されています。いちばんの脅威は、人が持ちこんだ外来のほ乳類です。イヌ・ネコ・ネズミ、そしてとくにオコジョ(ストート)が、卵やヒナ・親鳥をおそいます。森の中の巣は見つかりにくい反面、こうした天敵には弱いのです。人が巣に近づくと親が逃げてしまい、その間にヒナがねらわれることもあるため、生息地では人との距離の取り方にも注意がはらわれています。



参考
- IUCN Red List: Eudyptes pachyrhynchus(準絶滅危惧NT/外来捕食者が脅威)
- Wikipedia「Fiordland penguin」英語版(NZ固有・森で営巣・夜行性/学名の意味/ブルード・リダクション/冠羽ペンギンの見分け)
- Mattern et al. (2018) PLOS ONE「Marathon penguins」(換羽前の長距離移動=マラソンペンギン)
画像出典
アイキャッチ画像: Francesco Veronesi, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons


