フンボルトペンギンは、日本の動物園や水族館でいちばんよく見かけるペンギンです。南アメリカのペルーやチリの海岸にすみ、顔まわりのピンク色と、胸を横切る1本の黒い帯が目印。じつは日本は、このペンギンを世界でいちばんたくさん飼育している国でもあります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ペンギン目 Sphenisciformes
- 科:ペンギン科 Spheniscidae
- 属:フンボルトペンギン属 Spheniscus
- 種:フンボルトペンギン Spheniscus humboldti
和名・英名
- 和名:フンボルトペンギン
- 英名:Humboldt penguin
名前の由来
フンボルトペンギンの名前は、ドイツの探検家・博物学者アレクサンダー・フォン・フンボルトにちなみます。このペンギンがすむ海には、南から流れる冷たい「フンボルト海流」があり、こちらも同じ人の名前がついています。この海流が、栄養ゆたかな海と、たくさんの魚を運んでくるのです。ペルーでは、よちよち歩く姿から「パハロ・ニーニョ(赤ちゃん鳥)」とも呼ばれ、親しまれています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約56〜70cm・体重 約2.9〜6kg(中型) |
|---|---|
| 分布 | ペルー・チリの太平洋岸と沖の島々 |
| 生息環境 | 砂漠に近い岩場の海岸・島(巣穴)と、まわりの海 |
| 食べ物 | カタクチイワシなどの群れる小魚・イカ(海の中で捕る) |
| 寿命 | 野生でおよそ15〜20年(飼育下ではさらに長い例も) |
| 保全状況 | IUCN:危急(VU) |
顔のピンクと胸の1本の黒い帯
ピンクのくちばしと1本の帯
顔の白い縁とピンクのくちばし
フンボルトペンギンの体は、背中が黒っぽい灰色で、おなかは白色です。顔は黒く、目のうしろから白い線がぐるりと取り囲みます。いちばんの特徴は、くちばしの付け根に広がるピンク色の地肌です。このピンクは、暑いときに体温を下げる役目を持っています。
胸の帯と、いちばん重い体
胸には、逆さのU字を描く黒い帯が1本あります。フンボルトペンギンは、同じ仲間(フンボルトペンギン属)の中でもいちばん体重が重い、がっしりしたペンギンです。コロニーでは、ロバのような大きな声で鳴き、仲間との合図やなわばりのやりとりをします。

若鳥の姿と、マゼラン・ケープとの見分け方
生まれてまもない若鳥は、頭が茶色っぽく、胸の黒い帯もありません。大人になるにつれて、あの帯や顔のピンクがはっきりしてきます。よく似たマゼランペンギンやケープペンギンとの見分け方は、胸の帯の数です。マゼランは帯が2本ですが、フンボルトとケープは1本。フンボルトとケープは、くちばしのまわりのピンクの広さで見分けます。3種はすむ場所も違い、フンボルトはペルーやチリ、ケープはアフリカにすんでいます。どれもよく似ているので、まずは胸の帯の数と顔のピンクに注目すると見分けやすくなります。

日本でいちばんおなじみのペンギン
じつはフンボルトペンギンは、世界でいちばん多く日本で飼育されているペンギンです。東京の葛西臨海水族園をはじめ、全国のたくさんの動物園や水族館で会うことができます。日本の気候がフンボルトペンギンのふるさとに近く、飼育や繁殖がうまくいきやすいことが、その理由の一つと考えられています。国内では2000羽以上が飼育されているとされ、これは世界の飼育数の中でもとびぬけて多い数です。「ペンギン」と聞いて多くの人が思いうかべるのは、このフンボルトペンギンかもしれません。それほど、日本人にとって身近なペンギンなのです。

砂漠の海岸と豊かな海
砂漠に近い、かわいた海岸で暮らす
フンボルトペンギンが暮らすのは、世界でもっとも雨の少ない「アタカマ砂漠」に近い、かわいた海岸です。ペンギンといえば氷の上のイメージがありますが、この種はまったく違う、あたたかくかわいた土地で暮らしています。それでも生きていけるのは、目の前の海を流れるフンボルト海流のおかげ。冷たいこの海流が運ぶ栄養で魚がたくさん育ち、ペンギンのごちそうになります。
餌とり・巣・羽の生えかわり
フンボルトペンギンは目で獲物を見つけるハンターで、朝に海へ出かけ、浅くもぐって群れる魚をつかまえます。巣は、島や岩場に積もったグアノ(ふん)を掘ったり、岩のすき間や洞くつを利用したりしてつくります。羽の生えかわり(換羽)の時期になると、海に入れなくなるため、2週間ほど陸の上でじっと過ごします。
数が減っている危急種
野生では約2万4千羽まで減少
日本ではおなじみのフンボルトペンギンですが、野生ではその数が減っています。世界の野生の個体数は、大人でおよそ2万4千羽ほどと考えられ、IUCNレッドリストでは「危急(VU)」に指定されています。減少の原因には、人が魚をとりすぎてえさが減ったこと・巣に使うグアノを人が持ち去ったこと・数年ごとに海があたたまる「エルニーニョ」で魚がいなくなることなどがあります。ワシントン条約でも保護され、勝手に捕まえたり売買したりすることは、かたく禁じられています。水族館ではたくさん見られるのに、野生ではこれほど数が少ないというギャップも、このペンギンを知るうえで大切なポイントです。
守る役割と、人への敏感さ
身近なペンギンだからこそ、日本の動物園や水族館は、この種を守りふやしていく大切な役割も担っています。じつは野生のフンボルトペンギンは人にとても敏感で、150mほど先に人がいるだけで心臓がドキドキし、落ち着くのに30分ほどかかるという研究もあります。観光などで人が近づきすぎると、子育てがうまくいかなくなることも報告されています。



参考
- IUCN Red List: Spheniscus humboldti(危急VU・野生は約2万4千羽で減少/CITES附属書I)
- Animal Diversity Web「Spheniscus humboldti」(人に非常に敏感=150m先の人で心拍が急上昇し回復に約30分・観光地では繁殖成功が低下/1月に換羽し約2週間絶食)
- Wikipedia「Humboldt penguin」英語版(フンボルト=人名・海流/アタカマ砂漠の海岸・グアノに営巣/Spheniscus属で最重/胸の帯は1本・くちばしのピンク/ペルー名パハロニーニョ)
画像出典
アイキャッチ画像: Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


