プレーリードッグは、北米の草原に巨大な地下の「街」をつくって暮らす、リスの仲間です。名前に「ドッグ」とつきますが犬ではなく、複雑な鳴き声で仲間に危険を知らせる社会性の高さで知られます。地下都市の暮らしや複雑な鳴き声、ペットとしての一面など、見どころの多い動物です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:齧歯目 Rodentia
- 科:リス科 Sciuridae
- 属:プレーリードッグ属 Cynomys
和名・英名
- 和名:プレーリードッグ
- 英名:Prairie dog
「犬」ではなくリスの仲間
プレーリードッグは、名前に「ドッグ(犬)」とつきますが、犬の仲間ではありません。地面に穴を掘って暮らすリス科の仲間、いわゆるジリス(地上性のリス)です。「ドッグ」の名は、犬の吠え声に似た甲高い鳴き声からつけられました。北米の草原(プレーリー)に暮らすことと合わせて、「草原の犬」を意味する名前になっています。オグロプレーリードッグなど5種が知られ、ペットとして見かけるのはおもにオグロプレーリードッグです。同じリス科には、マーモットやシマリスなどの近縁もいますが、地下に大きな街をつくる社会性の高さはこの動物のきわだった特徴です。がっしりした体に短い尾をもち、乾いた草原に溶けこむ砂色の毛で覆われています。

大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約30〜40cm/体重 約0.7〜1.5kg |
|---|---|
| 分布 | 北アメリカの草原(グレートプレーンズなど) |
| 生息環境 | 乾いた草原。地下に巣穴のトンネルを掘る |
| 食べもの | 草や種子など(おもに植物食) |
| 寿命 | 野生で3〜5年ほど |
| 保全状況 | 種により異なる。オグロはLC、メキシコプレーリードッグは危機的 |
地下に広がる「街」
巨大なコロニーと巣穴
トンネルでつながる地下都市
プレーリードッグは、地面の下に複雑なトンネルを掘り、たくさんの仲間が集まって大きなコロニーをつくります。この巣穴の集まりは、英語で「タウン(町)」とも呼ばれます。トンネルには寝室やトイレ、子育て用の部屋まであり、入り口は敵を見張りやすいよう小高い塚になっているのが特徴です。かつて北米には、数百万頭がつながって暮らす、想像を超える規模のコロニーも記録されています。20世紀の初めには、数億頭がひとつながりになった世界最大級のコロニーが伝えられたこともあります。

家族の群れとあいさつ
大きなコロニーの中は、いくつもの家族の群れ(コテリー)に分かれています。ふつう一頭のオスと数頭のメス、その子どもたちが一つの群れをつくって縄張りを守ります。仲間どうしが出会うと、互いに口先を近づけて歯を触れ合わせる、キスのようなあいさつをします。このしぐさで相手が同じ群れの仲間かどうかを確かめ、群れの結びつきを保っています。繁殖は年に一度で、春に数頭の子が巣穴の中で生まれ、しばらく地下で育てられます。群れどうしの境界では、鳴き声や姿勢で縄張りを主張し合うようすも見られます。

草原を支えるキーストーン種
巣穴は他の動物のすみか
プレーリードッグの掘った巣穴は、自分たちだけのものではありません。使われなくなったトンネルは、アナホリフクロウやヘビ、小さな哺乳類などの住みかとして利用されます。とくにクロアシイタチは、プレーリードッグの巣穴を住まいにし、プレーリードッグそのものを主な餌にしています。プレーリードッグがいなくなると、これらの動物も生きていけなくなります。
草を食べて草原を保つ
プレーリードッグは草を食べ、巣穴のまわりの草を短く刈り込んで暮らします。この働きが土をかき混ぜ、草原の植物の育ち方を変え、さまざまな生きものが住める環境をつくります。短く刈り込まれた草地は、バイソンなどの大型草食獣にも好まれるそうです。多くの動物の食べ物や住まいを支えるこうした役割から、プレーリードッグは草原の「キーストーン種(要となる種)」と呼ばれます。小さなリスでありながら、草原の多くの生きもののつながりを支える役割をになっています。寒い地域に住む種は冬眠しますが、オグロプレーリードッグははっきりした冬眠をせず、暖かい日には冬でも地上に姿を見せます。
鳴き声で伝え合う
天敵を知らせる警戒の声
立ち上がって見張る
プレーリードッグは、巣穴の入り口で後ろ足を使って立ち上がり、あたりを見張ります。地上に出るときは、まず立ち上がって周りを確かめる用心深さをもっています。タカやコヨーテなどの天敵を見つけると、「キャッ」「アッ」と聞こえる甲高い声で鳴き、仲間にいっせいに知らせます。声を聞いた仲間は、すばやく巣穴に飛びこんで身を隠します。危険が去ると、後ろ足で伸び上がりながら鳴く「ジャンプ・イップ」という動きも見せ、これが仲間に次々と広がっていきます。

敵の特徴まで伝える声
プレーリードッグの警戒の声は、ただ「危ない」と伝えるだけではないと考えられています。ある研究では、天敵がタカなのかコヨーテなのかを鳴き声で区別しているとされます。さらに、その大きさや色、近づく速さまで声で伝えているという報告もあります。警戒の声のほかにも、あいさつや縄張りを示す声など、いくつかの鳴き分けがあるとされます。動物の鳴き声の中でもとりわけ複雑で、言葉に近い仕組みをもつ例として注目されてきました。ただし、どこまで細かく伝わっているかは研究者のあいだでも議論があり、まだ完全には解き明かされていません。
天敵と数の減少
たくさんの天敵に囲まれて
プレーリードッグには、多くの天敵がいます。地上ではコヨーテやアナグマ、タカやワシが狙い、地下の巣穴にはヘビやクロアシイタチが入りこみます。見張り役が入れかわりながら空や地平を警戒し、天敵の接近をいち早く見つけます。大人数のコロニーで見張り合うのは、こうした天敵から身を守るための工夫です。
大群からの激減
かつて北米の草原には、何億頭ものプレーリードッグが暮らしていたとされます。しかし、農地や牧場を荒らす害獣とみなされ、大規模な駆除が行われました。さらにペスト(伝染病)の流行も重なり、その数は昔の一部にまで激減しました。プレーリードッグの減少は、クロアシイタチをはじめ、巣穴に頼って生きる多くの動物の危機にもつながっています。
人とのかかわりとペット
ペット人気と2003年の輸入制限
丸い目と、後ろ足で立ち上がって見張る姿から、プレーリードッグはペットとしても人気を集めてきました。日本でも一時期は数多く輸入され、飼われていました。しかし、北米のげっ歯類が運ぶ病気への懸念から、アメリカでは2003年に取引が制限されました。これにより、日本への輸入もほぼ止まりました。今ペットとして飼われているのは、その後に国内で繁殖した個体などに限られます。

飼育の難しさと会える場所
プレーリードッグは、なわばり意識が強く、鳴き声も大きい動物です。本来は広い草原を走り回り、地面に穴を掘って暮らします。においや鳴き声の大きさもあって、家庭で飼うのは容易ではないとされます。日本でも各地の動物園で飼育され、群れで暮らすようすが展示されています。立ち上がって見張り合い、鳴き声で伝え合う社会性は、飼育下でも見られます。
参考
- Wikipedia「Prairie dog」(分類・コロニー・警戒声・キーストーン種・保全)https://en.wikipedia.org/wiki/Prairie_dog
- Wikipedia「Black-tailed prairie dog」(オグロプレーリードッグの生態)https://en.wikipedia.org/wiki/Black-tailed_prairie_dog
- Wikipedia「Black-footed ferret」(クロアシイタチとの関係)https://en.wikipedia.org/wiki/Black-footed_ferret
画像出典
- アイキャッチ:Musicaline, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Chien de prairie DSCF7979.jpg)
- 身を寄せ合う家族:Photos of Japan, CC0, via Wikimedia Commons(Cynomys ludovicianus huddling together at Uminonakamichi.jpg)
- 見張り:Cephas, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Cynomys ludovicianus GNP 21.jpg)
- ペット:Fernando Losada Rodríguez, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Cynomys ludovicianus.005 – Faunia.JPG)


