キタキツネは、北海道に住むキツネです。世界に広く分布するアカギツネの亜種で、本州から九州のホンドギツネとは、同じ種のなかで地域が分かれています。耳の裏と足首が黒いのが特徴です。エキノコックスという寄生虫の宿主として知られ、餌付けの問題ともかかわっています。
分類と学名
キタキツネは、哺乳綱の食肉目のなかの、イヌ科キツネ属に含まれる動物です。学名は Vulpes vulpes schrencki といい、アカギツネ(Vulpes vulpes)の亜種にあたります。北海道と樺太、その周りの島に分布します。同じアカギツネの亜種であるホンドギツネは、本州から九州に住んでいます。
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:食肉目 Carnivora
- 科:イヌ科 Canidae
- 種/亜種:アカギツネ Vulpes vulpes / キタキツネ V. v. schrencki
和名・英名
- 和名:キタキツネ(北狐)
- 英名:Ezo red fox / Sakhalin fox
名前の由来
「キタキツネ」の名は、北海道など北の地方に住むことにちなみます。本州以南のホンドギツネと分けて呼ぶための名です。学名の schrencki は、この動物を記録した学者の名にちなむとされます。北に暮らすアカギツネという意味あいの名前です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 頭胴長60〜80cmほど(ホンドギツネよりやや大きい) |
|---|---|
| 分布 | 北海道・樺太・周辺の島 |
| 生息環境 | 森・草原・農地・海岸・市街地の周りまで |
| 食べ物 | ネズミ・鳥・昆虫・果実など(雑食) |
| 寿命 | 野生でおよそ3〜4年 |
| 分類上の位置 | アカギツネ Vulpes vulpes の亜種 |
北海道に住むキツネ
キタキツネは、北海道を代表する野生動物の一つです。アカギツネの亜種で、本州以南のホンドギツネとは、見た目や大きさに違いがあります。

アカギツネの亜種
キタキツネは、世界に広く分布するアカギツネの、北海道の亜種です。体つきや暮らし方の多くは、アカギツネと共通しています。赤茶色の毛とふさふさの尾をもち、大きなハサミのような武器はありません。
ホンドギツネとの違い
キタキツネと、本州以南のホンドギツネは、どちらもアカギツネの亜種です。地域によって、体の大きさや毛色に違いが見られます。
耳の裏と足首が黒い
キタキツネの見分けの手がかりは、体の一部の黒い色です。耳の裏側と、四本の足首のあたりが、黒くなっています。この黒い模様は、ホンドギツネとの違いの一つとされます。ただし個体による差もあり、色だけで見分けるのは難しいこともあります。
ホンドギツネよりやや大きい
キタキツネは、ホンドギツネより全体にやや大きくなります。北の寒い地方に合わせた、大きめの体つきです。厚い冬毛をまとうと、いっそう大きく見えます。北に住むものほど体が大きくなる傾向は、多くの動物に共通します。
北海道での暮らし
キタキツネは、北海道のさまざまな環境で暮らしています。山地から海岸、農地や市街地の周りまで、幅広く見られます。

道内の分布と生息環境
キタキツネは、北海道の全域に分布しています。人の少ない山地だけでなく、農地や住宅地の近くにも姿を見せます。活動するのは、おもに夜。昼は巣穴や物陰で休みます。近年は、都市の公園や住宅地で見かけることも増えています。人の出す生ごみが、街なかのキツネを引き寄せているとみられています。春には巣穴で子を産み、家族で子育てをします。
冬毛と夏毛
キタキツネの毛は、季節によって変わります。冬は厚く、夏は薄い毛。冬毛は寒さから身を守り、ふさふさの尾を体に巻きつけて眠ることもあります。春になると毛が抜けかわり、夏毛は薄く短くなります。
何を食べるか
キタキツネは、動物も植物も食べる雑食性です。おもな獲物は、野ネズミなどの小さな動物です。加えて、鳥や昆虫、木の実や果実も食べます。季節によって食べるものを変え、秋には木の実を多く食べます。厳しい冬は、雪の下のネズミなどをとらえてしのぎます。人里の近くでは、生ごみや残飯をあさることもあります。
エキノコックスと予防
キタキツネは、エキノコックスという寄生虫の宿主として知られています。北海道では、人の健康にかかわる問題として注意されています。
キツネと多包条虫
エキノコックス(多包条虫)は、条虫(サナダムシ)の仲間の寄生虫です。キツネと野ネズミのあいだを行き来してふえていきます。
キツネとネズミをめぐる感染環
キツネの腸で育った寄生虫は、卵を含む糞を外に出します。その卵を野ネズミが口にすると、体の中で幼虫に育ちます。その野ネズミをキツネが食べると、寄生虫はふたたびキツネの体へ。こうして、キツネと野ネズミのあいだをめぐります。北海道の調査では、キタキツネの多くが感染していたと報告されています。
人への感染と予防
人は、この寄生虫の卵を口から取りこむと感染することがあります。人から人へうつることはなく、感染するのは卵を飲みこんだときだけです。感染すると、長い時間をかけて肝臓などに病巣ができ、放っておくと重い病気になります。予防のため、次のようなことが呼びかけられています。
- 野生のキツネにさわらない、餌付けをしない
- 山菜や野菜は、よく洗うか火を通す(卵は熱に弱い)
- 沢の生水をそのまま飲まない
- 外から帰ったら手を洗う
正しく知って気をつければ、過度におそれる必要はないとされています。
餌付けの問題
北海道では、観光客がキタキツネに餌をあたえることが問題になっています。餌付けは、キツネにも人にも、さまざまな影響をおよぼします。

人に慣れた「観光ギツネ」
観光地では、人をおそれず近づくキタキツネが見られます。道路ぎわで車を待ち、餌をもらう個体もいます。楽に餌が手に入ることを覚えると、キツネは人の近くに集まります。こうしたキツネは、「観光ギツネ」とも呼ばれています。
餌付けがもたらすこと
餌付けは、キツネの暮らしを大きく変えてしまいます。人に近づくことで生まれる、いくつもの問題。
人里への依存と交通事故
餌をもらうことになれたキツネは、自分で獲物をとらなくなることがあります。民家の周りをあさったり、道路に出てきたりもします。車にひかれる事故も、後をたたないとされます。人からの餌に頼る暮らしは、キツネにとって危険をともないます。
感染のリスクを高める
キツネと人との距離が近づくことは、エキノコックスの面でも心配されます。キツネにさわったり、糞の近くに手をふれたりする機会が増えるためです。餌付けをひかえることは、キツネのためだけでなく、人の健康を守ることにもつながります。こうした理由から、北海道では餌付けをしないよう呼びかけられています。
アカギツネの仲間として
キタキツネは、世界に広く分布するアカギツネの、北海道の姿です。同じアカギツネの亜種には、本州以南のホンドギツネもいます。さらに北の極地には、近い仲間のホッキョクギツネが住んでいます。キツネの仲間は、暮らす土地に合わせて、体つきや毛色を変えてきました。


参考
- キタキツネ/アカギツネ(Wikipedia日本語版)分類・亜種・生態
- 北海道立衛生研究所・北海道各自治体「キツネとエキノコックス」感染経路・予防
- キタキツネの餌付けに関する解説(研究機関・自治体)観光ギツネ・弊害
画像の出典
- アイキャッチ(雪のキタキツネ):MIKI Yoshihito, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
- 上富良野のキタキツネ:Tzuhsun Hsu, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
- 冬の林のキタキツネ:MIKI Yoshihito, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
- 人に近づくキタキツネ:MIKI Yoshihito, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons


