ホオジロ

鳥類

ホオジロは、頬の白い模様と「一筆啓上仕り候」の聞きなしで知られる、日本各地の里山や草原に暮らす小鳥です。オスは春に草木のてっぺんに止まってよくさえずり、雌雄で顔の模様がはっきり異なります。留鳥として身近な鳥ですが、名前だけがよく知られる「ホオジロザメ」「ホオジロカンムリヅル」とは全く別の生き物です。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:スズメ目 Passeriformes
  • 科:ホオジロ科 Emberizidae
  • 属:ホオジロ属 Emberiza
  • 種:ホオジロ Emberiza cioides(Brandt, 1843)

和名・英名

  • 和名:ホオジロ(頬白)
  • 英名:Meadow Bunting(別称 Siberian Meadow Bunting)

名前の由来と「頬白」の漢字表記

和名の「ホオジロ」は漢字で「頬白」と書き、顔の頬・眉・喉が白く目立つ模様に由来します。オスは黒い過眼線に挟まれた頬の白帯がとくにはっきりしており、和名の由来となった大きな模様として肉眼でも識別できます。英名の Meadow Bunting は「草地のホオジロ」の意味で、開けた草原・農地に多いという生態を反映した名づけとされます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約17cm/翼開長 約24cm(スズメとほぼ同大で尾がやや長い)
分布シベリア南部・中国東部・沿海地方・朝鮮半島・日本(東アジア広域)
日本での分布北海道から種子島・屋久島まで(本州以南は留鳥、北海道は夏鳥)
生息環境平地から丘陵地の草原・農耕地・河原・果樹園・林縁など明るく開けた場所
寿命野生下の詳細な追跡例は乏しく明確な数値は不明
保全状況IUCN: LC(軽度懸念)/日本国内では地域レッドリスト掲載例あり(千葉県ほか)

姿と雌雄の見分け

全長17cmとスズメより長い尾

全長は約17cmで、体の大きさはスズメとほぼ変わりません。ただし尾羽が細長く伸びるぶん見た目はスリムで、飛翔時には尾羽の外側が白く見えるとされます。くちばしは短く太い円錐形で、種子を割って食べるホオジロ科に共通の形をしています。頭頂の羽を興奮時にわずかに逆立てることもあるとされます。

ホオジロのオス成鳥
Ken Ishigaki, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

オスの顔模様(過眼線黒・喉頬眉斑白)

頬の白帯が最大の目印

オスは頭上と過眼線・顎線が濃い黒褐色で、そのあいだの眉斑と頬・喉が白い帯状に浮き上がって見えます。この「黒と白のコントラストの強い顔」がホオジロという和名の由来そのもので、フィールドで最初に目に飛び込む識別ポイントです。胸から腹は栗色を帯びた褐色で、背中は褐色に黒い縦斑が入ります。

枝先でさえずる姿を見つけやすい

繁殖期のオスは、草地の縁の低木の梢や電線・杭のてっぺんなど、目立つ場所に止まってさえずる習性があります。「見晴らしのよい場所で歌う派手な顔の小鳥」という組み合わせで、里山でもっとも目につきやすい小鳥のひとつ。

ホオジロの幼鳥
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

メスと幼鳥は色が淡い

メスは過眼線が褐色になる

メスはオスの黒い過眼線が褐色に置き換わり、全体に淡くぼんやりした顔つきになります。顔の白い帯もオスほどはっきりせず、オスと並べると別種を思わせる雌性淡色にあたります。ただし体型・くちばし・止まり場所の癖はオスと同じで、行動から本種と識別されるとされます。

幼鳥は顔の色分け不鮮明

幼鳥は顔全体が淡褐色でまだら模様がぼやけ、成鳥のような明瞭な白帯・黒線がまだできていません。腹には縦斑が目立ち、スズメやアオジの幼鳥と見間違えやすい姿をしています。夏〜秋に地上で親鳥に混じって採食する姿から幼鳥と気づかれることが多い時期です。

鳴き声 ―「一筆啓上仕り候」の聞きなし

さえずるホオジロのオス
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

春のさえずりが目立つ

ホオジロのさえずりは春から初夏にかけての繁殖期に頻繁に聞かれ、里山でよく聞かれる声のひとつとして古くから記録されてきました。「ピッピチュ・ピーチュー・ピリチュリチュー」のように、澄んだ複数の節が組み合わさる長めのフレーズが特徴です。オスは1羽で草地の縁のよく見える枝先に止まり、同じ節を繰り返し歌います。

聞きなしのバリエーション

「一筆啓上仕り候」

ホオジロを代表する聞きなしが「一筆啓上仕り候(いっぴつけいじょうつかまつりそうろう)」です。江戸時代の手紙の書き出しの言葉に、ホオジロのさえずりの節のリズムをはめ込んだもので、鳥のさえずりを日本語のリズムに置き換えた文化として長く知られています。

「源平つつじ白つつじ」など

地域によっては「源平つつじ白つつじ」など、別の言葉に聞きなす伝統もあります。同じ鳥の声でも、聞き手の言葉や文化によって異なる表現が生まれます。鳴き声の音源はeBird等の鳥類データベースで実際に聴くこともできます。

地鳴きは「チチッ」

繁殖期以外の警戒時や群れでのやり取りには、「チチッ」「チッチッ」などの短い地鳴きが使われます。さえずりに比べて短く単純で、藪の中や地面で採食している時に発する声です。冬期に藪の陰から地鳴きだけが聞こえてくることも多く、姿を確認するには少し時間がかかることもあります。

分布と生息環境

新緑の枝に止まるホオジロ
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

日本全国+東アジアに広く分布

ホオジロはシベリア南部・中国東部・沿海地方・朝鮮半島・日本にかけて分布する東アジアの鳥で、日本では北海道から本州・四国・九州、そして南は種子島・屋久島まで見られます。本州以南では一年を通して同じ地域にとどまる留鳥ですが、北海道では夏鳥として渡来して繁殖し、冬季には暖かい地域へ移動する個体群もいます。

明るく開けた場所を好む

好むのは「明るく開けた場所」で、平地から丘陵地の草原・農耕地・河原・果樹園・林縁など、視界の抜ける環境で見られます。深い森の内部にはあまり入らず、藪と草地と背の低い木がモザイク状に混じる、いわゆる里山的な環境が典型的な生息地です。都市部でも郊外の河川敷や大きな公園の草地で観察されることがあります。

似た鳥との見分け

アオジとの違い

同じホオジロ属のアオジ(Emberiza spodocephala)は、ホオジロと並んで里山で見られるよく似た小鳥です。アオジは頭〜顔がオリーブ色を帯びた灰緑色で、腹側は黄色みの強い緑黄色になる点がホオジロと大きく異なります。ホオジロの「黒白の派手な顔」に対して、アオジは「くすんだ緑黄色」で全体の印象がまるで違うため、識別は比較的容易とされます。

ミヤマホオジロとの違い

ミヤマホオジロ(Emberiza elegans)は冬鳥として日本に渡来する近縁種で、オスは頬の白い部分が黄色に置き換わり、頭に短い黒い冠羽を立てます。ホオジロが年中見られる留鳥なのに対し、ミヤマホオジロは主に冬季に西日本の低山などで観察できる季節限定の鳥で、出会える時期・場所が異なります。

「ホオジロザメ」「ホオジロカンムリヅル」は別種

ホオジロザメは魚類のサメ

ホオジロザメ(Carcharodon carcharias)は英名 Great White Shark と呼ばれる大型のサメで、頬(鰓のうしろの側面)が白いことに由来する和名を持ちます。鳥のホオジロとは分類上まったく別の魚類で、名前だけがよく似ています。和名が似ているため混同されやすい種のひとつとされます。

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ホオジロカンムリヅルはアフリカのツル

ホオジロカンムリヅル(Balearica regulorum)はアフリカ東部〜南部に分布する大型のツルで、頬の白と赤の斑、頭上の金色の冠羽が特徴です。動物園でよく見られる華やかな鳥で、これも鳥のホオジロとは科・属が全く異なる別種にあたります。

繁殖と子育て

4〜7月・草地に椀状の巣

日本での繁殖期は4月から7月にかけてで、オスがさえずりで縄張りを示す時期と重なります。巣は低木の枝の間や地上近くの草の株元に、枯れ草を組み合わせた椀状の形で作られます。畑の背の高い作物の間に巣をかけることもあり、農地と暮らしを共にする鳥として知られてきました。

ホオジロの卵
Didier Descouens, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

卵3〜5個、抱卵約11日

一度の産卵で3〜5個の卵を産みます。卵は白地に黒褐色の斑点や曲線模様が入る独特の柄で、他のホオジロ属の卵とよく似た斑紋を持ちます。抱卵は主にメスが担当し、抱卵期間は約11日とされます。雛はおよそ10〜12日で巣立ちを迎え、その後しばらく親鳥から給餌を受けたのち独立するといわれています。

カッコウの托卵をうける

ホオジロはカッコウ(Cuculus canorus)に托卵されることが知られる代表的な宿主種のひとつです。カッコウがホオジロの巣に卵を産みつけ、孵ったカッコウの雛がホオジロの卵や雛を巣外へ押し出し、親ホオジロにそのまま育てられる寄生関係が観察されています。托卵する側とされる側の関係を身近な鳥で見られる例として、繁殖生態の研究対象にもなってきました。

食性

採食するホオジロ
Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ホオジロは季節で食べるものを変える雑食性の鳥で、繁殖期の春〜夏はガの幼虫・バッタ・クモなどの小動物を多く食べ、雛にも動物質を運びます。秋から冬にかけては主にイネ科などの草の種子が中心となり、地面や草の穂の上で採食します。短く太い円錐形のくちばしは種子を割るのに適した形で、季節による食性の切り替えを支える体のつくりです。

保全と地域個体群

ホオジロは分布が広く個体数も多いため、IUCNレッドリストでは「LC(軽度懸念)」に評価されており、世界規模での絶滅リスクは低いとされます。一方で日本国内では地域単位での減少が指摘されており、千葉県などいくつかの県のレッドリストに掲載されている地域個体群もあります。里山の草原や耕作放棄地の変化、農地の管理方法の変化などが、地域個体群の減少に影響していると考えられています。

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