ヘビクイワシ

ヘビクイワシの頭部。黒い飾り羽と赤みを帯びた顔 猛禽類

ヘビクイワシは、長い脚で草原を歩き回り、ヘビなどの獲物を踏みつけて仕留めるアフリカのワシの仲間です。後頭部にのびた黒い飾り羽と、モデルのように長い脚が目を引き、空を飛ぶよりも地上で暮らすことで知られます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:タカ目 Accipitriformes
  • 科:ヘビクイワシ科 Sagittariidae
  • 属:ヘビクイワシ属 Sagittarius
  • 種:ヘビクイワシ Sagittarius serpentarius

和名・英名

  • 和名:ヘビクイワシ(蛇喰鷲)
  • 英名:Secretary bird

別名・名前の由来

和名は、ヘビを食べるワシという意味からきています。英名 secretary(書記)の由来には諸説あり、昔の書記が羽ペンを耳に挟んだ姿を、後頭部の飾り羽に重ねたという説が知られます。アラビア語で「狩りをする鳥」を指す言葉がなまったという説もあり、はっきりとは分かっていません。学名の Sagittarius は「射手」、serpentarius は「ヘビ使い」を意味し、こちらはヘビと戦う姿をよく表した名前です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約100〜150cm/翼を広げた幅 約2m
体重約2.3〜4.3kg
分布アフリカのサハラ砂漠より南
生息環境開けた草原・サバンナ・低木地
食べ物昆虫・小型の哺乳類が中心。ヘビ・トカゲ・鳥の卵やひな・カエルなども
寿命野生で10〜15年ほど
保全状況IUCN:絶滅危惧(EN)
ヘビクイワシの頭部
後頭部の黒い飾り羽と裸出した顔(撮影:Ray in Manila/CC BY 2.0)

長い脚で歩く猛禽

ツルのような立ち姿

長い脚と黒い飾り羽

ヘビクイワシは、ワシの仲間としては変わった姿をしています。体は灰白色で、翼と脚のつけ根は黒く、後頭部からは筆のような黒い飾り羽が何本ものびています。すらりと長い脚のおかげで背は高く、立つと1mを超えます。ツルにも似たその立ち姿は、ほかの猛禽には見られない独特のものです。

草原に立つヘビクイワシの全身
立つと1mを超える長い脚(撮影:Hobbyfotowiki/CC0)

顔の裸出した皮膚

顔まわりには羽がなく、黄色から赤みを帯びた皮膚がむき出しになっています。大きな目のまわりには長いまつげのような羽もあり、日ざしや砂ぼこりから目を守るのに役立つとされます。かぎ形に曲がったくちばしは、いかにも猛禽らしいつくりです。姿は独特ですが、タカやワシと同じタカ目の一員です。

近い仲間のいない、ただ1種

ヘビクイワシは、ヘビクイワシ科というグループにただ1種だけが属する鳥です。ほかに近い仲間がおらず、タカ目のなかでも早くに枝分かれした古い系統だと考えられています。長い脚で地上を歩く狩りは、この鳥だけが身につけた独自のスタイルです。よく似た姿の鳥がいないことも、ヘビクイワシを際立った存在にしています。

草原に立つヘビクイワシ
開けた草原に立つヘビクイワシ(撮影:Diego Delso/CC BY-SA 4.0)

地上を歩いて暮らす

1日に20〜30kmも歩く

多くのワシが空から獲物を狙うのに対し、ヘビクイワシは地面を歩いて獲物を探します。餌を求めて、1日に20〜30kmも草原を歩き回るとされます。長い脚は、高い草の上から周りを見わたすのに向いた形です。ときには翼を広げて草むらの獲物を追い立て、飛び出したところを捕らえることもあります。この鳥にとって、歩くことは狩りそのものです。

飛ぶこともできる

地上で暮らすといっても、飛べないわけではありません。危険がせまったときや、遠くへ移動するときには、大きな翼を広げて力強く飛びます。ねぐらや巣は木の上につくるため、夕方には木へ飛び上がって夜を過ごします。ふだんは歩き、必要なときには飛ぶ、という暮らし方です。

草原を歩くヘビクイワシ
サバンナを歩いて獲物を探すヘビクイワシ(撮影:Diego Delso/CC BY-SA 4.0)

蹴りでヘビを仕留める

踏みつけと蹴りの狩り

体重の何倍もの力で蹴る

ヘビクイワシの狩りは、空からの急降下ではなく、脚を使った蹴りが主役です。獲物を見つけると、長い脚で何度も強く踏みつけ、動けなくなるまで攻撃します。研究では、その蹴りの力が自分の体重の約5倍に達すると報告されています。硬い足で頭を狙って打つため、毒ヘビにかまれる前に仕留められると考えられています。

目にも留まらぬ速さ

この蹴りは、速さでも際立ちます。足が獲物に触れている時間は、10分の1秒にも満たない一瞬だとされます。目で追うのが難しいほどの速さで、正確に頭を打ちおろすわけです。長い脚は獲物から体を遠ざけ、かみつかれる危険を減らすのにも役立っているとみられます。

毒ヘビと硬い脚

相手が毒ヘビの場合、かまれれば大きな危険をともないます。ヘビクイワシは長い脚で体を高く保ち、ヘビの牙が届かない距離から攻撃します。脚は硬いうろこでおおわれ、かまれても牙が通りにくいとされます。ヘビが鎌首をもたげて反撃するより速く、頭を蹴って動きを止めるのが基本です。危険な相手を、道具のように使いこなす脚でしのいでいます。

ヘビより虫やネズミが主食

名前にヘビとありますが、いつもヘビばかり食べているわけではありません。実際の食事の多くは、バッタなどの昆虫や、ネズミのような小型の哺乳類が占めます。トカゲや鳥の卵、ひな、カエルなども見つければ食べます。名前ほどヘビにこだわらない、幅広い狩人です。

子育てと暮らし

木の上につくる巣

ヘビクイワシは、アカシアなどの木の上に、枝を組んだ平たい大きな巣をつくります。繁殖期には、つがいが空高く舞い上がって鳴きかわす求愛の飛行も見せます。巣には2〜3個の卵を産み、オスとメスが協力して子を育てます。ひなは巣の上で親から獲物を運んでもらい、二か月ほどで飛べるようになります。地上で狩りをする鳥ですが、子育ての場は高い木の上です。巣立ったばかりの若鳥は地味な羽色をしており、数年かけて親のような姿へと変わっていきます。

どこで会える・保全

日本の動物園でも会える

ヘビクイワシは、日本のいくつかの動物園でも飼育されています。上野動物園や東武動物公園などで、その長い脚や飾り羽を間近に見ることができます。園によっては、飛ぶ様子や獲物にみたてた的を蹴る姿を見せる催しも行われています。国内では繁殖に成功した例もあり、ひなが育てられたこともあります。アフリカまで行かなくても、独特の姿を観察できる鳥です。

数を減らしている

野生のヘビクイワシは、近年その数を減らしています。すみかである草原が農地や開発で失われ、狩りの場が狭まっていることが大きな原因とされます。過放牧による草地の荒れ、電線への衝突、道路での事故なども数を減らす要因です。国際自然保護連合(IUCN)は、この鳥を2020年に絶滅危惧(EN)へ引き上げました。草原が失われれば、地上を歩くこの鳥の狩りの場もそのまま狭まっていきます。

ヘビクイワシの豆知識

国の紋章になった鳥

ヘビクイワシは、アフリカの国ぐにで特別な鳥とされ、南アフリカやスーダンの国章にその姿が描かれています。とくに南アフリカでは、国章の中心に翼を広げたヘビクイワシがすえられています。翼を大きく広げた姿は、外敵から国を守る力の象徴です。地上でヘビと戦う姿が、こうしたイメージにつながったとみられます。小さな虫も食べる一方で、国の紋章にも選ばれた鳥です。

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参考

  • IUCN Red List「Sagittarius serpentarius」(絶滅危惧ENの評価)
  • BirdLife International, Species factsheet「Secretarybird」
  • 上野動物園「ヘビクイワシ」(飼育・生態の解説)

画像の出典

  • アイキャッチ(頭部):Rolf Dietrich Brecher 撮影、CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
  • 全身(立ち姿):Hobbyfotowiki 撮影、CC0(Wikimedia Commons)
  • 頭部(飾り羽と顔):Ray in Manila 撮影、CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
  • 草原に立つ個体:Diego Delso 撮影、CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
  • サバンナを歩く個体:Diego Delso 撮影、CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
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