チョウゲンボウは、ハトほどの大きさの小さなハヤブサのなかまです。空中の一点でぴたりと止まる「ホバリング」の名手で、止まったまま地上のネズミや昆虫をさがします。近ごろは、崖のかわりにビルや橋を利用して、都市のまん中で子育てをすることでも知られます。オスとメスで羽の色が違うのも特徴です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ハヤブサ目 Falconiformes
- 科:ハヤブサ科 Falconidae
- 属:ハヤブサ属 Falco
- 種:チョウゲンボウ Falco tinnunculus
和名・英名
- 和名:チョウゲンボウ
- 英名:Common kestrel
名前の由来
「チョウゲンボウ」という名の由来には、諸説あります。トンボを指す方言「ゲンザンボー」がもとになり、「鳥ゲンザンボー」がいつしか今の名になった、という説が知られています。空中に止まる姿がトンボを思わせたのかもしれませんが、確かなことはわかっていません。英名の kestrel は、ヨーロッパでもなじみ深いこの鳥をさす言葉です。漢字では「長元坊」と書かれることもあります。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 オス 約33cm/メス 約39cm(翼を広げた幅 約65〜80cm) |
|---|---|
| 体重 | オス 約150g/メス 約190g |
| 分布 | ユーラシア・アフリカに広く分布。日本では留鳥または冬鳥として各地に |
| 生息環境 | 農地・河川敷・草地/崖や、都市のビル・橋・鉄塔 |
| 食べ物 | ネズミなどの小動物・小鳥・昆虫・カエル |
| 寿命 | 野生でおよそ10〜15年とされる |
| 保全状況 | IUCN:LC(軽度懸念) |

小さなハヤブサ
オスとメスで色が違う
大きさとメスの優位
チョウゲンボウは、全長30〜40センチメートルほどの小さな猛禽です。ハヤブサのなかまでは小型で、オスよりメスのほうがひとまわり大きくなります。翼の先はとがり、飛ぶ姿はすらりとしています。同じハヤブサ科でも、大きく速いハヤブサとくらべると、ずっと小柄で身近な鳥です。その小ささから、猛禽とは気づかれずに見すごされることもあります。
青灰色のオスと褐色のメス
オスは、頭と尾が青みがかった灰色で、背中は赤褐色に黒い斑点が散らばります。メスは頭から尾まで褐色で、全体に細かい横縞が入ります。オスとメスで色が大きく違うため、遠くからでも見分けやすいのが特徴です。尾の先には、黒い帯が1本あります。若い鳥はメスに似た褐色をしており、育つにつれてオスは青灰色へと変わっていきます。
細身の体と長い尾
チョウゲンボウは、ハヤブサ科のなかでもとくに尾の長い種として知られます。飛ぶときには、長い尾を広げたりひねったりして、体のバランスを細かくとります。空中でぴたりと止まるホバリングにも、この長い尾が役立っています。細身の体に長い尾という姿が、飛ぶチョウゲンボウの目印になります。とまっているときも、体からはみ出した長い尾がよく目立ちます。

ホバリングの名手
空中で止まって地上を狙う
風に向かって頭を止める
チョウゲンボウの狩りの代名詞が、空中の一点にとどまるホバリングです。風上に向かって羽ばたき、頭をぴたりと止めたまま、地上をじっと見おろします。体は上下に揺れても、頭だけは動かさずに保つため、地面の獲物をしっかりと見すえられます。開けた草地や河川敷は、こうして狩りをするのに向いた場所です。止まりつづけるには力がいるため、風をうまく使って羽ばたきをおさえています。
斜めに急降下して捕らえる
獲物を見つけると、チョウゲンボウは体を斜めにしながら一気に急降下します。獲物をつかむのは、地上に舞いおりた一瞬です。高い位置からいったん低く降り、さらに近づいてからおそうこともあります。電線や杭にとまって、地上を見張る待ち伏せの狩りもします。ホバリングと待ち伏せを使い分け、状況に合わせて獲物をとらえます。
紫外線でネズミの跡を見る
チョウゲンボウの目は、人には見えない紫外線をとらえられると考えられています。ネズミの尿は紫外線を反射するため、その跡がチョウゲンボウには光る線のように見える、という説があります。これをたどれば、ネズミの通り道を見つけやすくなるというわけです。ただし、この仕組みはまだ推測の段階で、確かめられたわけではありません。紫外線が見えるかどうかにかかわらず、上空から地上の小さな獲物を見分けるするどい視力は、多くの観察から知られています。

都市のビルで子育て
崖のかわりのビルや橋
高い建物を岩場に見立てる
チョウゲンボウは、もともと断崖の横穴や岩棚に巣をかける鳥です。ところが近ごろは、崖のかわりにビル・橋・鉄塔などを使うようになりました。高い建物のすきま・換気口・ベランダの片すみは、崖の岩棚とよく似た環境です。東京の荒川ぞいや、各地の市街地でも、繁殖するチョウゲンボウが見られます。人の作った高い構造物が、この鳥の暮らせる場所を広げる助けになっています。
人の近くで暮らす猛禽
都市で子育てをするチョウゲンボウは、人のすぐ近くで暮らします。ヒナが育つころには、親が獲物を運ぶたびに、にぎやかな鳴き声が響きます。マンションの高層階の窓辺で、子育ての様子が観察されることもあります。地上のネズミや、街で暮らす小鳥をとらえて、都市のなかでも狩りをしています。獲物の多い市街地は、チョウゲンボウにとって新しい狩り場になりつつあります。
自分では巣を作らない
チョウゲンボウは、自分で枝を組んだ巣を作りません。巣の場所は、崖の横穴や岩棚のくぼみです。カラスなどが使った古い巣や、都市では橋げたや建物のくぼみを、そのまま巣として使うこともあります。4〜5月ごろに卵を産み、多いときには6個ほどのヒナを育てます。卵は1か月ほどでかえり、ヒナはさらに1か月ほどで巣立ちます。天敵の少ない高い場所は、子育てに都合のよい環境です。

似た猛禽との違い
ノスリ・ハヤブサとの違い
ホバリングをする猛禽はほかにもいますが、体つきや大きさで見分けられます。
| チョウゲンボウ | ハトほどの小型。尾が長く翼の先がとがる。ホバリングをさかんに行う |
|---|---|
| ノスリ | カラス大でずんぐり。タカ科で色が淡い。冬に平地へやってくる |
| ハヤブサ | 同じ科だが大型。空を急降下して鳥をおそう。ホバリングはあまりしない |
小さくて尾が長く、しきりに空中で止まる猛禽であれば、まずチョウゲンボウが考えられます。ノスリもホバリングをしますが、体はずっと大きくずんぐりしています。ハヤブサは同じ科でもはるかに大型で、狙う獲物も飛ぶ鳥が中心です。

チョウゲンボウの豆知識
「キィキィ」と鳴く声
チョウゲンボウの鳴き声は、「キィキィキィ」と聞こえる、かん高い声です。とくに繁殖期には、なわばりを守るときや、つがいでやりとりするときによく鳴きます。都市の繁殖地では、ヒナや親の声がよく響くため、その声で存在に気づかれることも少なくありません。姿の小ささのわりに、声はよく通ります。そのにぎやかさから、都市の繁殖地では「うるさい」と話題になることもあります。
世界に広く暮らす身近な猛禽
チョウゲンボウは、ユーラシアからアフリカまで、世界の広い範囲に分布しています。ヨーロッパでも古くから身近な鳥で、農地の害獣を減らす鳥として親しまれてきました。日本でも、農地・河川敷・市街地など、いろいろな場所で見られる鳥です。小さな体で器用に空に止まるチョウゲンボウは、農地や河川敷から市街地まで、人の生活圏の近くで見られます。都市にも入りこんだことで、身近に観察できる猛禽になりました。なお、冬にはより小さなコチョウゲンボウが日本へ渡ってくることもあります。名前は似ていますが、別の種です。
関連記事




参考
- ウィキペディア「チョウゲンボウ」(分類・大きさ・形態・食性・狩り・繁殖・名前の由来)
- サントリー「日本の鳥百科」チョウゲンボウ(生態・鳴き声・都市での繁殖)
- IUCN Red List「Falco tinnunculus」(保全状況の評価=軽度懸念)
画像出典
- アイキャッチ・オスの顔:Male common kestrel (Kraków) — Jakub Hałun, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 止まるオス:Common Kestrel — Andreas Trepte, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons
- 飛翔(ホバリング):Common kestrel male in flight (Farmoor) — Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 柱の巣箱:Common Kestrel at nest — Andreas Trepte, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 飛ぶ姿:Common kestrel in flight — Giles Laurent, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- メス:Common kestrel female (Moscow Oblast) — Alexey V. Kurochkin, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


