カワラヒワ

鳥類

カワラヒワは、翼に鮮やかな黄色の帯を持つスズメサイズの小鳥です。河原や農耕地・都市の公園まで幅広く見られ、「キリリ、コロロ」というよく通る地鳴きが特徴。近年は都市部の街路樹でも観察されるようになり、身近な野鳥のひとつとして知られています。小笠原諸島に住むオガサワラカワラヒワは2020年に別種として分けられ、絶滅危惧種として保護の対象になった仲間です。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:スズメ目 Passeriformes
  • 科:アトリ科 Fringillidae
  • 属:カワラヒワ属 Chloris
  • 種:カワラヒワ Chloris sinica(Linnaeus, 1766)

和名・英名

  • 和名:カワラヒワ(河原鶸)
  • 英名:Oriental Greenfinch/Grey-capped Greenfinch

名前の由来 ―河原の鶸

「カワラヒワ」は漢字で「河原鶸」と書き、河原や砂利地でよく見られたこと、鶸(ヒワ)と呼ばれる小型のフィンチ類の仲間であることに由来します。ヒワは古くから小さな種食い鳥をまとめて呼ぶ言葉で、マヒワ・ベニマシコなどと並んで日本人に親しまれてきた名です。種小名のsinicaは「中国の」を意味し、原記載の産地に由来する命名とされます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約14cm/翼開長 約24cm(スズメとほぼ同大)
分布中国東部・モンゴル・ロシア南東部・朝鮮半島・日本(東アジア広域)
日本での分布北海道から九州まで各地で繁殖(留鳥)/小笠原諸島には別種オガサワラカワラヒワ
生息環境低山〜低地の林・農耕地・河原、近年は都市部の公園・街路樹にも進出
寿命野生下の詳しい追跡例は乏しく明確な数値は不明
保全状況本種:IUCN LC(軽度懸念)/オガサワラカワラヒワ:環境省 絶滅危惧IA類(CR)

姿と雌雄の見分け

全長14cm・スズメと同大の小鳥

全長は約14cmで、スズメとほぼ同じ大きさ。全体は黄褐色〜暗い緑褐色で、頭部は灰色を帯び、太くしっかりした薄いピンク色のくちばしを持ちます。太いくちばしは植物の硬い種子を割って食べるアトリ科の共通形質で、ヒマワリの種のような大きな種も難なく割ります。

枝先に止まるカワラヒワのオス
harum.koh, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

翼と尾に鮮やかな黄斑

飛翔中のカワラヒワ・翼の黄斑
Ken Ishigaki, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

飛翔時に閃く黄色の帯

本種の最大の識別点は、翼の初列・次列風切に入る鮮やかな黄色の帯です。止まっている時はやや目立ちにくいものの、飛び立った瞬間に翼と尾羽の付け根に黄色が閃きます。この特徴は本種を他の茶色い小鳥から区別する主要な手がかりとされます。

羽根単体でも識別できる

翼に大きな黄斑を持つ日本の小鳥は限られており、拾われた風切羽根の同定でもカワラヒワは比較的絞りやすい部類に入るとされます。マヒワ・ベニマシコなど他のヒワ類にも黄色を差す種はいますが、羽の形と黄色の入り方で区別されます。

オスとメスの色差

オスは頭部の緑色が濃い

オスは頭部から胸にかけての緑色みが濃く、全体にコントラストのはっきりした色調です。繁殖期にはさらに色が鮮やかになる傾向があり、樹上でさえずるオスは離れていても緑色の頭部で識別できます。

メスは全体に淡い褐色

メスはオスに比べて頭部の緑色みが弱く、全体に淡い褐色寄りの色合いです。翼の黄斑はオスと同様に持つため、飛翔時にはオスと同じように黄色が閃きます。メスも翼の黄斑を保つので、地味な体色でも飛翔姿から本種と分かる小鳥です。

幼鳥は縦斑が目立つ

幼鳥は全体に薄い褐色で、胸から脇にかけて細かい縦斑が並びます。頭部の緑色みはまだ現れず、成鳥に比べると別種のような姿。ただし翼の黄斑は幼鳥にも認められ、翼の色が本種と識別する手がかりになります。

鳴き声 ―「キリリコロロ」の地鳴き

地鳴きは「キリリ、コロロ」

カワラヒワの代表的な鳴き声が「キリリ、コロロ」と表現される地鳴きです。金属質でよく通る声で、メジロなど他の小鳥より声量があって太い音として聞こえます。飛翔中に群れで交わす声としてもよく使われ、河川敷や畑の上を通過する群れから頻繁に聞こえる声です。

さえずりは「チョンチョンジューイン」

繁殖期のオスによるさえずりは「チョンチョンジューイン」のように、複数の節が組み合わさった長めのフレーズになります。フィンチ類特有の細切れの音を長く連ねる歌で、樹上のよく見える枝でさえずるオスが縄張りを示します。

昼行性で夜間の発声はまれ

カワラヒワは基本的に昼行性で、夜間にさえずったり地鳴きを続けたりする性質は一般的には知られていません。夜に活発に鳴く鳥は他の分類群に多く、鳴き声だけで本種と判断するのは難しい時間帯とされます。

分布と生息環境

東アジア広域+日本全国

カワラヒワは中国東部・モンゴル・ロシア南東部・朝鮮半島・日本にかけて分布する東アジアの鳥で、日本では北海道から九州まで各地で繁殖する留鳥です。冬期には亜種オオカワラヒワが大陸方面から日本に渡来し、本種と混じって観察されることがあります。小笠原諸島の集団は後述するとおり、2020年に別種オガサワラカワラヒワとして分けられました。

農地の木立に集まるカワラヒワ
KKPCW, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

都市の公園や河原にも進出

本来は低山や低地の林縁・農耕地・河原などを好みますが、近年は都市部の公園や街路樹、住宅地でも普通に観察されるようになりました。ヒマワリなどの園芸種子を含む多様な種子を利用でき、都市環境への適応力が比較的高い野鳥のひとつと考えられています。

亜種と近縁種

オオカワラヒワ ―冬鳥として渡来する亜種

オオカワラヒワ(Chloris sinica kawarahiba)はカワラヒワの亜種のひとつで、大陸北部などで繁殖し冬鳥として日本に渡来します。本州のカワラヒワ(亜種コカワラヒワ C. s. minor)に比べて体色が全体に淡く、頭部から肩にかけて灰色を帯びる点が識別ポイントです。冬期に本州以南で見られる「大型で色の淡いカワラヒワ」の多くはこの亜種にあたります。

オガサワラカワラヒワ ―別種として独立

2020年DNA解析で別種確定

小笠原諸島に生息する集団は長らくカワラヒワの亜種とされてきましたが、2020年5月にDNA解析の結果を含む研究で別種として独立させることが妥当と示され、和名オガサワラカワラヒワ(学名 Chloris kittlitzi)として扱われるようになりました。原記載時(Seebohm, 1890)は Carduelis kittlitzi でしたが、現在はカワラヒワと同じ Chloris 属に置かれるのが一般的とされます。身近な鳥にも新種が隠れていた実例のひとつ。

環境省絶滅危惧IA類の窮状

オガサワラカワラヒワは環境省レッドリストで最上位の絶滅危惧IA類(CR)に指定される鳥類のひとつです。母島列島の限られた場所にわずかな個体数が残るのみとされ、外来捕食者(ネコ・クマネズミなど)による捕食が減少の主要因と考えられています。本種(本土のカワラヒワ)が普通種として身近にいる一方で、離島の集団は保全上の危機に瀕しているという対比が生まれています。

繁殖と子育て

樹上に椀状の巣

巣材をくわえるカワラヒワ
KKPCW, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

カワラヒワは樹木の枝の茂みに、細い枝や草を椀状に組んだ巣を作ります。近年は都市部の営巣で、材料としてビニール紐や糸くずなど人工物を組み込む観察例が増えており、人と近い環境で暮らす鳥の適応の一例とされます。

カワラヒワの卵標本
Didier Descouens, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

卵5個・抱卵11〜13日

一腹卵数はおおむね5個前後で、卵は淡い青緑色に細かい斑点が入る色合いです。抱卵はメスが主に担当し、抱卵期間は11〜13日、雛は孵化後およそ14日で巣立ちを迎えるとされます。巣立ち後もしばらく親鳥から給餌を受けながら独立していく段階を経ます。

翼の黄斑を見せる求愛飛翔

繁殖期のオスはメスに対して、翼をゆっくり羽ばたかせて翼の黄斑を目立たせる求愛飛翔(flight display)を行うことが知られています。蝶のようなゆっくりした飛び方で樹の周りを飛ぶ独特の行動で、本種の識別に有効な翼の黄色を活用したディスプレイとされます。

食性 ―ヒマワリの種を好む

カワラヒワは主に植物食で、雑草・イネ科植物・松ぼっくりなどさまざまな植物の種子を食べます。とくにヒマワリの種を好むことで知られ、庭に置いた餌台のヒマワリに集まる姿もよく観察されます。繁殖期には昆虫類も少し利用しますが、他の多くのスズメ目に比べて植物食への依存度が高い鳥類のひとつとされます。太くしっかりしたくちばしは、硬い種子を割るのに最適化された道具です。

群れ生活と季節の暮らし

電線に集まるカワラヒワの群れ
harum.koh, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

繁殖期は番いで縄張りを持って暮らしますが、秋から冬にかけては数十羽から数百羽の大きな群れを作り、河原や刈田・畑を渡り歩いて採食します。「キリリコロロ」の地鳴きが空高く聞こえて振り返ると、集団で飛ぶカワラヒワの群れが見えるという光景は、日本の秋冬の田園風景として親しまれてきました。群れは他のアトリ科(マヒワ・アトリ)と混群を作ることもあります。

名前と文化 ―「鶸色」と季語「鶸」

「鶸(ヒワ)」の名は日本の伝統色にも残り、明るく黄みを帯びた黄緑色を「鶸色(ひわいろ)」と呼びます。ヒワ類(カワラヒワなど)の羽色に由来する色名で、古くから染色や着物の色として用いられてきました。俳句の世界では「鶸」は秋の季語として歳時記に立項されており、里近くに暮らす小さな種食い鳥として和歌以来の詩歌にも登場します。鶸色として日本の伝統色名にも名を残す鳥です。

保全 ―亜種で明暗

本種そのものはIUCNレッドリストで「LC(軽度懸念)」に評価されており、東アジア全域では健全な個体数を保つとされます。一方で日本の固有種として独立したオガサワラカワラヒワは絶滅危惧IA類(CR)に指定され、母島列島の限られた個体群を守るための保全事業が進められています。同じカワラヒワの名を持つ鳥でも、大陸と島嶼で状況が大きく異なる状況にあります。

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