オナガガモ

鳥類

オナガガモは日本の池や川で冬を過ごすカモです。名前になったのは雄の細く伸びた尾ですが、暮らしを左右しているのは長い首のほうです。人の生活圏に入ってくるカモでもあります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:カモ目 Anseriformes
  • 科:カモ科 Anatidae
  • 属:マガモ属 Anas
  • 種:オナガガモ Anas acuta

和名・英名

  • 和名:オナガガモ(尾長鴨)
  • 英名:Northern pintail

学名の意味と亜種のいない分布

学名の acuta はラテン語で「とがらせる」を意味する acuere から来ています。属名の Anas は「カモ」です。尖っているのは繁殖期の雄の尾を指し、英名の pintail も同じ部分から来ています。和名の「尾長鴨」も同じ見立てです。

江戸時代の『大和本草』には「尾長ガモ」として載っています。遅くともこの頃にはこの呼び方が使われていました。

分布はきわめて広いのですが、地域ごとの亜種が知られていません。これだけ広い範囲に散らばる鳥としては珍しいことです。近縁のケルゲレンオナガガモを別種として扱った場合の話で、同じ種に含める考え方もあります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 雄59〜76cm/雌51〜64cm。翼を広げると80〜95cm
体重雄450〜1,360g/雌454〜1,135g
分布ユーラシアと北アメリカの北部で繁殖し、南へ渡って冬を越す。日本へは冬鳥として飛来
生息環境越冬地では湖沼・河川・海岸。繁殖地は樹木の少ない開けた湿地
食べ物植物の種子や水草が中心。貝なども食べ、繁殖期には小さな無脊椎動物が加わる
繁殖水から離れた地上に巣を作る。卵を温めるのは雌のみで22〜24日
寿命最長記録は27年5か月(オランダの個体)
保全状況IUCN: LC(軽度懸念)。ただしヨーロッパでは危機的とされる

長いのは尾だけではない

水面に浮かぶオナガガモの雄
Prasan Shrestha, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

雌との全長差はほぼ尾の分

繁殖期の雄は尾の中央の2枚が細く長く伸びます。長いものでは10cmに達し、この部分が名前の由来になりました。

全長を比べると雄のほうが大きく出ますが、差の多くはこの尾です。雌の尾も先は尖っていますが、雄ほど伸びません。

水深30cmの底に届く首

この鳥は水に潜りません。逆立ちをして水面下のものを取ります。首が長いぶん、水深30cmまでの底にあるものへ届きます。マガモのように水面で餌を取るカモには、この深さは届きません。同じ池にいても使う層がずれます。

体の大きさはマガモとほぼ重なりますが、首と尾が長いぶん細長く見えます。餌を取る時間は主に夕方から夜で、昼の多くは休んで過ごします。口にするのは植物の種子や水草、貝などです。繁殖の時期には小さな無脊椎動物が加わります。

雌雄で違う羽と声

並んで泳ぐオナガガモの雄と雌
kazu2011, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

首を上る白い線

繁殖期の雄は頭がチョコレート色で、胸は白です。その白が首の側面を細い線になって上っていきます。この線は雄だけに入り、遠くからでも目につきます。

背中から脇にかけては灰色で、黒い筋の入った細長い羽が肩のあたりから垂れます。尾の下は黒く、その手前が黄色です。嘴(くちばし)は青みを帯び、脚は青灰色をしています。

雌に似てくる非繁殖期の雄

飛んでいるオナガガモの雌
Frank Schulenburg, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

雌は全体が淡い褐色で、うろこ状の模様が入ります。頭はより一様な灰褐色です。他のカモの雌と紛らわしい姿ですが、体つきと長い首、長い灰色の嘴が本種の特徴です。

繁殖期を外れると、雄は雌によく似た地味な羽に変わります。この状態をエクリプスといいます。それでも翼の上面の模様と、肩の長い灰色の羽(肩羽)は変わらずに残ります。

笛のように鳴く雄

雌はマガモに似た荒い「ガーガー」という声を出します。雄はまったく違い、笛のような高い声です。「ピル、ピル」と聞こえるほか、いくつかの声を使い分けます。

人のそばで暮らす

舗装された岸で休むオナガガモの雌
Aomorikuma(あおもりくま)/あおもりくま, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

餌付けの場に集まり、昼も動く

日本各地のハクチョウ渡来地では、ハクチョウ類の周りに多数のオナガガモが群れている様子が観察されます。ハクチョウへの餌付けが行われると、そこへ殺到します。

餌付けされている場所では、昼の間も動いています。本来は昼に休み、夜に餌を取る鳥です。

畑にわざと残される麦

北アメリカでは大量に飛来するオナガガモによる作物の被害が問題になります。その対策として、ムギなど穀物の一部をわざと収穫せずに畑へ残し、そちらを食べさせる方法が取られています。追い払うのではなく、食べる場所を分ける方法です。

狩猟鳥獣に定められた鳥

肉は食用になります。カモ類のなかでも味が良いことで知られ、『大和本草』はマガモ・コガモとこの種の3種を美味な鴨として挙げています。

世界的にも重要な狩猟鳥獣の一つです。日本でも鳥獣保護法で狩猟鳥獣に定められています。

卵とヒナ

オナガガモの卵2個の標本
Roger Culos, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

繁殖の支度は越冬地から

春に繁殖するカモのなかでは早いほうです。つがいは渡りの途中で、早ければ越冬地にいるうちに作られます。繁殖そのものは4月から6月にかけて行われ、雌雄とも1歳で繁殖できるようになります。

水辺から離れた地面のくぼみ

巣は地上に作ります。水辺とは限らず、水からかなり離れた場所に置かれることもあります。草の陰の乾いた場所を選び、樹木の少ない開けた湿地が繁殖地になります。巣そのものは地面を浅く掘った簡素なくぼみで、そこへ植物と綿毛のような羽を敷き詰めます。

7〜9個の卵と二度目の産卵

卵はクリーム色で、7個から9個を1日に1個ずつ産みます。大きさは55×38mmほど、重さは45gで、そのうち7%が殻です。鶏卵よりひとまわり小さい程度になります。

捕食者に最初の卵を壊された場合、雌は産み直せます。遅いときは7月の終わりになることもあります。

巣立ったあとも雌と過ごす

卵を温めるのは雌だけです。22〜24日で孵化(ふか)します。ヒナは生まれてすぐ動ける状態で、雌に連れられていちばん近い水面へ向かいます。そこで水面に浮かんだ死んだ昆虫を食べます。

ヒナは孵化から46〜47日で飛べるようになります。その後も、雌が羽の生え替わり(換羽)を終えるまでは一緒に過ごします。

キツネからシロハヤブサまで

巣と、飛べるようになる前のヒナは、キツネやアナグマなどの哺乳類に襲われます。カモメ・カラス・カササギも巣を狙います。

成鳥は飛んで逃げられますが、卵を温めている雌はボブキャットのような大型の肉食獣に不意を突かれることがあります。オオタカは地上にいるカモを捕らえ、シロハヤブサは飛んでいる鳥に追いつく速さを持ちます。

巣立ちは4分の3でも繁殖は半分未満

ヒナのおよそ4分の3は巣立ちまで生き残ります。しかしそのうち繁殖できる年齢まで生きる個体は、半分に満たないとされます。

最も長生きした記録はオランダの個体で、27年5か月でした。平均はこれよりはるかに短くなります。

数は多いが、ヨーロッパでは危機

並んで飛ぶオナガガモの雄2羽
Frank Schulenburg, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

IUCNの評価は軽度懸念

分布域の広さは約4,190万平方キロメートルで、日本の国土のおよそ110倍にあたります。個体数は480万から490万羽と見積もられています。IUCNはこの種を軽度懸念としており、世界全体では絶滅の心配は小さいという評価です。

評価が分かれる地域

ただし同じIUCNがヨーロッパでは危機的だとしています。ユーラシア北部から北アフリカにかけての広い範囲でも、繁殖する集団が減っています。そこにはこの種の個体数の中心であるロシアも含まれます。ほかの地域では横ばいか、増減を繰り返しています。

日本では高知県のレッドリストが、絶滅の危険が増している種として本種を挙げています。

湖底にたまる鉛の粒

狩猟に使われた鉛の散弾と、釣りに使われる鉛のおもりは、水鳥の鉛中毒の主な原因とされています。散弾は湖や湿地の底にたまり、そこで餌を取る鳥が飲み込みます。

スペインでの研究では鉛の散弾を飲み込んでいた量が最も多かったのがオナガガモとホシハジロでした。鉛の散弾が禁止されている、同じ渡り経路の北方の国々よりも高い値です。アメリカとカナダ、西ヨーロッパの多くの国では、水鳥を撃つ弾に鉛を使えなくなっています。

どこで会える

群れで飛ぶオナガガモ
Hobbyfotowiki, CC0, via Wikimedia Commons

越冬地は湖沼から海岸まで

日本へは冬鳥として渡ってきます。越冬地では湖沼や河川、海岸で群れを作ります。繁殖期以外は群れる性質が強く、他のカモと混じった大きな群れになります。

渡来地にも公園にも入る

ハクチョウの渡来地にはまとまった数が入ります。人が近づける公園の池にも入るので、他のカモより距離が近いことがあります。

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参考

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