オニオオハシ

鳥類

オニオオハシは南アメリカに住む、オレンジ色の大きな嘴を持つ鳥です。この嘴は体長の3分の1を占めながら体重の20分の1しかなく、血の流れを変えて熱を逃がす放熱器としても働きます。果実を主に食べますが、他の鳥の巣を襲うこともあります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:キツツキ目 Piciformes
  • 科:オオハシ科 Ramphastidae
  • 属:オオハシ属 Ramphastos
  • 種:オニオオハシ Ramphastos toco

和名・英名

  • 和名:オニオオハシ(別名 オオオオハシ、トゥッカーノ)
  • 英名:Toco toucan
  • 学名の記載者:P. L. S. Müller, 1776

キツツキと同じ目に置かれる鳥

見た目は似ていませんが、オニオオハシはキツツキと同じキツツキ目に分類されます。オオハシ科には42種、そのうちオオハシ属には8種が置かれています。オニオオハシはこの科でいちばん体が大きい種です。

記載は1776年で、学名の元になった標本はフランス領ギアナのカイエンヌで採られました。亜種は2つに分けられ、南部の R. t. albogularis は最初に記載されたほうの亜種より体と嘴が小さいとされます。ブラジルのミナスジェライス州では、約2万年前の地層から化石が見つかっています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ平均体長 56cm(ハシブトガラスとほぼ同じ/オオハシ科で最大)
嘴の長さ雄 173〜215mm(平均200.5mm)/雌 158〜202mm(平均178.6mm)
体重592〜760g
翼と尾片翼 22〜26cm/尾 14.1〜17.9cm
分布南アメリカ中部から南東部(ギアナ地方南部〜アルゼンチン北部・ウルグアイ)
生息環境サバンナ・川沿いの林・木のまばらな林・果樹園など開けた場所
食べ物主に果肉の多い果実。昆虫・トカゲ・他の鳥の卵やヒナも食べる
保全状況IUCN: LC(低危険種)

オレンジの嘴と青く縁取られた目

オニオオハシの顔の拡大。茶色い虹彩を青い皮膚が縁取る
AntanO, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

先端で強く光る黒い斑

体は光沢のある黒色で、喉は白色です。腰も白く、尾の下側は赤色になります。嘴はオレンジ色で、上側の背の部分がいちばん赤みを帯びます。

上の嘴の先には楕円形の大きな黒斑があり、光が当たると非常に強く輝きます。嘴の縁には不規則な明るい茶色の帯が横切ります。縁は鋸の歯のように細かく刻まれています。

茶色い虹彩を囲む青い皮膚

目の周囲は色数が多く、この鳥の顔を特徴づけています。茶色い虹彩を青い皮膚が縁取ります。そのさらに外側は黄色から橙色です。

目の近くには小さな白い部分があり、目の下の皮膚は緑がかることもあります。体色には個体差があり、喉が黄色味を帯びる個体や、白と黒の境が赤くなる個体がいます。体の一部が白くなる白変種も知られています。

雌雄の差は大きさだけ

雄のほうが大きいことを除けば、雌雄の外見に差はありません。嘴の長さは雄が平均200.5mm、雌が平均178.6mmで、その差は2cmほどです。並べて比べなければ判断は難しくなります。

体重の20分の1しかない嘴

枝にとまるオニオオハシ。体に対する嘴の大きさが分かる
Giles Laurent, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

嘴は体の表面積の30〜50%を占めます。それだけ大きいのに、重さは体重の20分の1ほどしかありません。この軽さは嘴の内部構造から来ています。

体に占める嘴の大きさは鳥類で最大とされます。ただし体長に対する嘴の長さの比では、ヤリハシハチドリがオニオオハシを上回ります。

六角形の鱗と泡のような芯

嘴の構造を調べた研究では、外側と内側で材質が違うことが分かっています。

直径50マイクロメートルの鱗

外側はケラチンでできた六角形の鱗が重なった層です。鱗1枚の直径は50マイクロメートルほどで、細い髪の毛と同じくらいの太さです。

カルシウムを含む繊維の芯

内側は繊維が網の目を作り、閉じた小部屋がぎっしり並んだ泡のような構造です。この繊維にはカルシウムが24.6%含まれ、外側のケラチンより硬くなっています。硬い殻と軽い芯を組み合わせる作りで、軽さと硬さが両立しています。

※ ケラチンとは、人の爪や髪、鳥の羽を作るタンパク質です。オニオオハシの嘴も材料そのものは爪と同じです。

欠けたり交差したりする嘴

大きく張り出した嘴は傷みやすい部分でもあります。上下の嘴が交差する、上か下の嘴が半分ほどまで欠ける、穴が開くといった変形が記録されています。

飼育の現場では「スポンジのよう」

高知県立のいち動物公園は、この嘴を「たいへん重そうに見えますが、中はスポンジのように軽い」と説明しています。札幌市円山動物園はこれをハニカム構造と呼んでいます。ハニカムとは蜂の巣のような六角形の並びのことです。

血の流れで開け閉めする放熱の窓

横向きのオニオオハシ。嘴の表面積の広さが見える
Giles Laurent, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

この嘴には体温を調節する働きがあります。2009年に科学誌サイエンスへ発表された研究が、その仕組みを詳しく示しました。

25%から400%まで変わる放熱量

嘴の表面積は大きく、内部には血管が通っています。

血流を増やすと熱が嘴へ移る

血流を増やせば体の熱が嘴へ運ばれ、そこから逃げていきます。血流を絞れば熱はとどまります。汗をかかない鳥にとって、体の熱を捨てる場所は限られます。オニオオハシはその役目の多くを嘴1か所に集めています。

動物で報告された最大の幅

研究チームが測ると、嘴から逃げる熱の量は大きく上下しました。じっとしているときに体が作り出す熱の量を基準にすると、その25%から400%までの幅がありました。この幅は動物で報告された中で最大です。

測り方を変えて、体から逃げる熱の全体に占める割合で見ると、嘴の分は通常30〜60%でした。成鳥はこれを5%まで絞ることも、短時間なら100%まで開くこともできました。研究者はこの嘴を、体の大きさに比べて動物界で最大級の「熱の窓」と呼び、熱を逃がす能力はゾウの耳に匹敵すると述べています。

眠るときは翼の下へしまう

放熱の窓が開いたままでは、涼しい夜に体温を奪われます。オオハシ類は眠るとき、嘴を翼の下へ差し入れ、尾羽を頭のほうへ倒します。

この姿勢は嘴を包みこみ、寝ている間に逃げる熱を抑えます。

幼鳥はほとんど調節できない

同じ測定で、幼鳥は嘴への血流をほとんど調節できませんでした。気温が15℃を下回り、熱を保つ必要がある場面でも変わりませんでした。成鳥では調節できることから、この力は育つ過程で身につくとみられます。

果実を放り投げて食べる

パパイヤの木にとまるオニオオハシ
Bernard DUPONT from FRANCE, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

嘴とほぼ同じ長さの平たい舌

主な食べ物は果肉の多い果実です。イチジク属やオレンジ、グアバなどをよく食べ、糖分の多い果実を選ぶ傾向があります。ケムシやイモムシ、シロアリといった昆虫も口にします。トカゲのような小動物も捕らえます。

舌は嘴とほぼ同じ長さで、非常に平たい形をしています。千葉市動物公園は、嘴の先で果実を器用につまみ、食べ物を少し放り投げて食べると説明しています。

大きな嘴の割に大粒は苦手

のいち動物公園は、この鳥が大きな嘴の割に大粒の餌を苦手とすると書いています。同園では1cm角ほどに切ったリンゴやバナナを与えています。

嘴の大きさと、扱える餌の大きさは比例していません。

他の鳥の巣を襲う嘴

果実食の鳥として知られる一方で、オニオオハシは他の鳥の巣を襲います。南米の小鳥やインコの仲間の巣が狙われます。ムクドリモドキ科・タイランチョウ科・オウム目が記録されており、特にキゴシツリスドリが対象になります。

トキのヒナの首を折る

襲う相手は小鳥に限りません。クロハラトキのような大型種の巣にも入ります。トキのヒナの体重は200〜300gで、オニオオハシ自身の3分の1から半分ほどあります。

このときオニオオハシは嘴を使い、ヒナの首を折って殺します。飼育下でもイエスズメやサボテンミソサザイなど、さまざまな小型鳥を捕食した記録があります。放熱の窓であり果実をつまむ道具である嘴は、同時に狩りの道具でもあります。

遠くへ種を運ぶ役割

イグアス国立公園の木にとまるオニオオハシ
Bernard Gagnon, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

スミレコンゴウインコを支えながら卵も食べる

この鳥と他種の関係は単純な敵味方に分かれません。マンドゥビ(Sterculia apetala)という木の種が運ばれるうち、83%以上をオニオオハシが担っています。絶滅が心配されているスミレコンゴウインコは、ほぼこの木にできた洞だけで営巣します。

つまりオニオオハシは、スミレコンゴウインコの巣となる木を増やす立場にあります。その一方で、スミレコンゴウインコの卵の捕食の半分以上をオニオオハシが占めます。

元の木から269〜449m先へ運ぶ種

オニオオハシは大量の種子を傷つけずに排泄します。中くらいの大きさの種であれば、元の木から269〜449m離れた場所に落ちます。

発芽率は小さな種子散布者が運んだ種より低いとされます。それでも体が大きく移動距離が長いぶん、種をより遠くへ届けます。セダカダイオウヤシなど外来の植物も食べるため、その種を運んで分布を広げるおそれもあります。

インコ・オウム【総合】
インコとオウムは、鮮やかな羽の色や、人の言葉をまねる賢さで親しまれる鳥の仲間です。世界に約400種。インコとオウムの見分け(冠羽の有無)、セキセイインコやヨウム・コンゴウインコなどの種類、言葉をまねる仕組みまで。

木の洞で育つヒナ

木の洞の中のヒナ。黄色い大きな嘴と、底に散らばる果実の種が見える
Carlos Eduardo B. Colucci, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

孵化まで17〜18日・巣立ちまで43〜52日

繁殖期は地域によって異なります。巣は木の洞に作られ、産卵数は2〜4個です。卵は両親が交代で温め、17〜18日で孵ります。

野生では年に1回繁殖しますが、飼育下では年に複数回繁殖した例もあります。巣立ちは孵化してから43〜52日後です。営巣の時期になると行動が慎重になります。

嘴は数カ月で成鳥と同じ大きさに

ヒナは親鳥が巣を離れると、餌を求めて大声で鳴きます。食べるものは主に昆虫で、成長するにつれて果実の割合が増えていきます。

円山動物園によれば、ヒナの嘴は小さいまま生まれます。色も成鳥より薄いままです。成長とともに大きくなり、数カ月で成鳥と同じ大きさになります。巣の底には食べた果実の種が層になって溜まります。

開けた場所での暮らし

翼を広げて飛ぶオニオオハシ
Giles Laurent, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

幅5kmの水面を越えて渡る

他のオオハシ類と違い、オニオオハシは木々が隙間なく茂った森には入りません。サバンナや川沿いの林、木のまばらな林、果樹園のような多少開けた場所を好みます。

行動圏は広く、平均86ヘクタールに及びます。東京ドーム18個ぶんほどの広さです。他のオオハシ類は大きな水域を渡りませんが、この鳥は幅5kmを超える水面を飛んで越えられます。

低く濁った声で鳴く

鳴き声は低く濁った声で、ヒムネオオハシやアオハシヒムネオオハシの声に似ます。ただしこの2種より低く、あまり響きません。姿の派手さに比べると、声は目立ちません。

一列になって枝を飛び回る群れ

大きな群れは作らず、単独か5〜6羽ほどの小さな群れで暮らします。餌を探すとき、群れは一列になって木の枝を飛び回ります。飛び方は羽ばたきと滑空を交互に繰り返し、波打つような軌跡を描きます。

日中はあまり活動的でなく、木の上で休んでいることもあります。繁殖期の後には大きな群れを作り、シロムネオオハシなど別の種と混ざることもあります。

伐採で分布が広がっている可能性

開けた場所を好む性質は保全のうえで独特の意味を持ちます。森林伐採によってアマゾン熱帯雨林での分布が広がっている可能性が指摘されています。以前はブラジル南部のパトス湖が南限でしたが、その南のウルグアイでも見られるようになりました。

アルゼンチン北西部のトゥクマン州では、1990年代後半までにその地域から消えたと考えられていた個体群が、2010年代に再発見されています。IUCNレッドリストでの評価は低危険種です。

どこで会える

飼育している3つの動物園

日本の動物園でも飼育されています。千葉市動物公園・札幌市円山動物園・高知県立のいち動物公園などが、それぞれ公式サイトでオニオオハシを紹介しています。

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コゲラ
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参考

画像出典

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