アオゲラ

アオゲラ Picus awokera 鳥類

アオゲラは、日本の里山や低山の森林に留鳥として生息する中型のキツツキで、日本にだけ分布する日本固有種です。全長は約30cmで、翼と背中の緑色に光る羽衣・目立つ赤い顎線(あごせん)が印象的な鳥です。雄は頭のてっぺんまで赤く染まります。「キョッキョッ」と鋭く鳴きながら林を移動し、繁殖期には木を叩く「ドラミング」の連続音でも存在を知らせます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:キツツキ目 Piciformes
  • 科:キツツキ科 Picidae
  • 属:アオゲラ属 Picus
  • 種:アオゲラ Picus awokera

和名・英名

  • 和名:アオゲラ(緑啄木鳥)
  • 英名:ジャパニーズ・グリーン・ウッドペッカー(Japanese green woodpecker・日本の緑のキツツキ)

種小名の意味と3亜種

種小名の awokera(アヲケラ)は和名「アオゲラ」をそのままラテン文字化したもので、1836年にオランダの動物学者テミンクが命名しました。日本国内には3つの亜種が知られています。本州に分布する基亜種アオゲラ、四国と九州のカゴシマアオゲラ、種子島と屋久島のタネアオゲラです。北海道には分布せず、代わりに近縁のヤマゲラが分布します。南に行くほど個体が小型化し、体色が濃くなる傾向があります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 29~30cm/体重 120~138g
分布日本固有種(本州・四国・九州・種子島・屋久島)/北海道と対馬には分布しない
生息環境平地から山地の森林(標高300~1400m中心)/住宅地の公園でも観察例あり
食性動物食傾向の雑食(アリ・昆虫・果実・木の実・木の樹液)
産卵数7~8個(白色無斑)/雌雄交代で抱卵
寿命野生 約5~10年
保全状況IUCN:LC(軽度懸念)/日本の環境省レッドリスト:未指定

見た目の特徴

アオゲラ雌の樹幹立ち姿
Yasuo Hamashima, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

緑色の羽衣と赤い顎線

上面の羽衣・尾羽・翼は黄緑色で、和名「緑啄木鳥(あおげら)」の由来になっています。日本の古語では「青」は緑を含む広い色を指し、実際の羽衣は鮮やかな黄緑です。背中や肩羽は灰色みを、腰と尾羽は黄色みを帯びます。頭や首は灰色で、胸は灰褐色。腹と下尾筒は白く、体の横から下尾筒にかけてアルファベットの「V」字状の黒い斑紋が並びます。虹彩は暗い赤色、上嘴は黒く下嘴は黄色みを帯び、脚は灰色です。

雄と雌の見分け

アオゲラ雄の頭部アップ
雄:IMORI MIHO (iNaturalist), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
アオゲラ雌の頭部アップ
雌:Yasuo Hamashima, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

アオゲラは雄と雌で頭の赤い部分の広がりが違うため、野外でも識別できる形質を持ちます。雄は額から後頭まで頭のてっぺん全体が赤く染まり、嘴の付け根から側頭部に伸びる顎線(あごせん)にも幅広く赤色が入ります。雌は後頭部だけが赤く、額や頭頂は灰色のまま。顎線の赤色部も雄より狭くなります。この違いは他のキツツキ類と共通する特徴で、頭の赤色部の大きさで雌雄が分かるのが多くのキツツキに共通する形質です。

コゲラ・アカゲラ・ヤマゲラとの見分け

アオゲラ雄の成鳥
WATANABE Hitoshi (iNaturalist), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

コゲラとの違い

コゲラは全長15cm前後で日本のキツツキの中で最も小さく、アオゲラの半分ほどの大きさです。体色は白と黒の縞模様で、緑色の羽衣を持つアオゲラとは色調が全く異なります。コゲラは都市部の街路樹や住宅地でも普通に見られる一方、アオゲラは低山地の森林寄りに分布します。大きさと色調のどちらでも一目で区別できます。

アカゲラとの違い

アカゲラは全長23cm前後でアオゲラよりやや小型、上面が黒と白の斑模様で下尾筒が赤いのが特徴です。体色は黒白+赤の3色でアオゲラの緑色系とは色調が違い、飛翔中でも3色の対比で見分けやすい鳥です。分布は北海道から九州まで広く、日本のキツツキ類のなかでは最も広く見られる種です。アオゲラと比べると、生息環境は同じ森林寄りでも、林床から高い樹冠までまんべんなく使う点で若干違います。

ヤマゲラとの住み分け

ヤマゲラはアオゲラと同じアオゲラ属で、体上面が緑色の似た姿を持ちます。ただし北海道にのみ分布するため、本州以南のアオゲラと分布が完全に分かれています。北海道ではヤマゲラ、本州以南ではアオゲラという地理的な住み分けの関係で、同時観察されることはほぼありません。ヤマゲラの雄は顎線に赤が入らず、頭の赤色部も少ないため、両種を並べた場合の判別は容易です。

森林から住宅地までの暮らし

樹幹を垂直に登るアオゲラ
Yasuo Hamashima, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

好む森林の高さ

アオゲラは平地から山地の森林に生息し、標高300~1400mの中低山地帯を主な棲みかとします。まれに低地の平野部や2000m級の高山でも見つかります。北側では混交林、南側では暖温帯の常緑広葉樹林を好み、古い針葉樹の単純林は避ける傾向があります。都市周辺でも大きな公園や社寺林など木の茂った場所に姿を見せ、亜種アオゲラは住宅地の並木でも観察されます。

アリと果実の雑食

長い舌で狩るアリ

食性は動物食傾向の強い雑食で、幹や枝で昆虫を捕らえるほか、樹上と地表の両方で採食します。地上ではよくアリを漁り、アリ塚に嘴を差し込んで舌で絡めとります。他のキツツキと同様に長い舌を持ち、この舌が樹皮の隙間や地中のアリの巣までも届きます。舌の先端にはねばつきと細かい返しがあり、獲物を絡めとる構造になっています。

果実・樹液・木の実

動物質のほかに果実・木の実・樹液・花の蜜も食べ、季節によって食べるものを柔軟に変えます。冬季は昆虫が減るため、木の実や樹液の比重が上がるとされます。カラスザンショウやタラノキなどの実を食べる姿も観察されていて、幅広い植物質を採食できる点がこの種の分布の広さを支えている要因の一つです。

鳴き声とドラミング

樹上で採食するアオゲラ
Yasuo Hamashima, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

「キョッキョッ」の鳴き声

アオゲラの代表的な鳴き声は「キョッキョッ」と鋭く二声で発する声です。飛翔しながら「ケレケレケレ」と連続音を出すこともあり、姿を見ずに声で存在が知られる場面が多い鳥です。冬でも縄張り意識が残るため通年で声が聞かれる種で、里山の林奥からも通る鋭い声が響きます。

繁殖期の「ピョーピョーピョー」

繁殖期には口笛のような「ピョーピョーピョー」という透った声も発します。普段の「キョッキョッ」とは全く違う音色で、澄んだ長い笛の音のように響きます。雄が縄張りを主張したり、雌への求愛の一部として使うと考えられています。春から初夏に発せられる雄の繁殖期の代表的な声とされます。

縄張り誇示のドラミング

ドラミングは、キツツキ類が枯れ枝や樹幹の共鳴の良い部分を嘴で連打して音を響かせる縄張り行動です。アオゲラのドラミングは他のキツツキと比べても速く長いのが特徴で、森全体に伝わる強い連続音を出します。餌の穴を掘る採餌音とは明らかに違うリズムで、鳴き声と組み合わせて縄張りを主張します。

生木に穴を掘る営巣

タラノキの実を食べるアオゲラの雄
Yasuo Hamashima, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

深さ2~4mの樹洞

頭部の衝撃吸収構造

営巣は生木の幹に穴を掘って作ります。掘る穴は樹皮を貫いて幹の内部まで達し、深さは2~4mに及ぶこともあるとされます。硬い生木を掘り抜くために、キツツキ類は頭部に衝撃を吸収する特殊な骨と筋肉の構造を持っていて、脳を保護しながら1秒間に何度も嘴を打ちつけられます。

他の動物の住まいにもなる樹洞

掘り出された樹洞は、翌年以降にフクロウやムササビなど他の樹洞性動物の住まいとしても使われることが知られています。アオゲラが森に開けた「穴」が二次利用されることで、キツツキ類は森の樹洞性動物全体の暮らしを支える役割も担っています。

卵と抱卵・子育て

樹洞に敷物を置かず、直接卵を7~8個産みます。卵は白色無斑で光沢があり、樹洞の暗闇では白い色が親鳥の識別に役立つとされます。雌雄が交代で抱卵と育雛を行い、雛は樹洞内で親から餌を運んでもらいながら成長します。繁殖期は4~6月で、雛が巣立つころには初夏の緑が森を覆う時期に重なります。

世界のアオゲラ属とヨーロッパの姉妹種

アオゲラ属(Picus)は世界の温帯地域に14種ほどが分布するキツツキのグループで、日本のアオゲラは属内でヨーロッパアオゲラ(European green woodpecker)と近縁とされます。ヨーロッパアオゲラは欧州各地に分布する緑色のキツツキで、姿・鳴き声・アリを主食にする採食習慣までアオゲラとよく似ています。両種が姉妹種として進化の道筋を共有しつつ、極東の島国で独自の分化を遂げた例が日本のアオゲラです。日本固有種として、日本の森林環境と一体で存続してきた鳥です。

保全状況

国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは軽度懸念(LC)に評価され、個体数は安定しているとされます。日本国内でも環境省レッドリストの指定はなく、里山や低山地の森林で普通に見られる種です。都市周辺の緑地でも見られることから、大きな森林伐採や開発がなければ個体数の危機は薄いと考えられています。ただし日本固有種であるため、日本の森林環境の保全がそのままこの種の存続に直結する立場にあります。

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参考

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