アザラシは、海に住む丸みを帯びた体の哺乳類です。分厚い皮下脂肪で寒い海に耐え、流線形の体で上手に泳ぎます。ゴマフアザラシなど、水族館の人気者としても親しまれています。よく似たアシカとは、耳たぶがなく、陸では腹ばいで進む点で見分けられます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:食肉目 Carnivora
- 科:アザラシ科 Phocidae
和名・英名
- 和名:アザラシ
- 英名:Seal(true seal / earless seal)
「アザラシ」と呼ばれる仲間
アザラシは、ひれのような足を持つ「鰭脚類(ききゃくるい)」というグループの一員です。この鰭脚類には、アザラシのほかにアシカやセイウチも含まれます。なかでもアザラシ科の仲間は、世界に十八ほどの属が知られ、種類も豊富です。北や南の冷たい海を中心に、世界のさまざまな海に広く分布します。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約1.2〜3m(種によって差が大きい) |
|---|---|
| 分布 | 南北の極域から温帯の海(一部は淡水の湖) |
| 生息環境 | 海・海氷の上・沿岸の岩場や砂浜 |
| 食べもの | 魚・イカ・貝・甲殻類など |
| 寿命 | 種により20〜30年ほど |
| 仲間の数 | アザラシ科で18属ほど |
アザラシとは、どんな動物か
寒さに耐える体
アザラシの体は、全身が厚い皮下脂肪の層に覆われています。この脂肪は「ブラバー」と呼ばれ、冷たい海でも体温を保つ役目を果たします。丸みを帯びた流線形の体は、水の抵抗を受けにくい形です。四本の足はひれのような形に変わり、水をかく櫂(かい)になっています。陸に上がると体が冷えにくいため、岩場や氷の上で長い時間を過ごすこともあります。
泳ぎと潜水にすぐれた体
アザラシは、陸よりも水の中で活発に動く動物です。長く息を止めて、深くまで潜ることができます。なかには、水深数百メートルまで潜り、一時間近く息を止めていられる種もいます。潜る前には肺の空気を減らし、体への負担を和らげるしくみを持つとされます。魚やイカ、貝などを追い、暗い海の中でも上手に狩りをします。
アシカ・トド・セイウチとの違い
耳たぶと歩き方
アザラシとアシカは姿が似ていますが、いくつかの点で見分けられます。アザラシには耳たぶがなく、耳の穴が開いているだけです。一方のアシカには、小さな耳たぶがあります。またアザラシは後ろ足を前に向けられず、陸では腹ばいになって、体をくねらせて進みます。アシカは後ろ足を体の下に返し、四本の足で歩くことができます。よく名前の挙がるアシカ・オットセイ・トドは、いずれも耳たぶを持つ「アシカ科」の仲間です。
トドとセイウチ
トドは、アシカの仲間のなかでもっとも大きな種です。オスは体重が一トンに近づくこともあり、迫力のある姿をしています。セイウチは、長い二本の牙を持つことで知られる別の仲間です。同じ鰭脚類の仲間でも、耳たぶや牙や歩き方に目を向ければ、それぞれを見分けられます。
いろいろなアザラシ(種類)
ゴマフアザラシ
ゴマフアザラシは、日本でもっとも身近なアザラシです。体にごまを散らしたような黒い斑点があり、この模様が名の由来になっています。水族館でよく見られる、丸い体と大きな目の人気者です。大きな目は水中でよく見えるためのもので、陸ではうるんで見えることもあります。赤ちゃんは、白く柔らかな産毛に包まれて生まれます。
ゼニガタアザラシ
ゼニガタアザラシは、日本の近海で子を産む数少ないアザラシです。北海道の東の沿岸に、一年を通して住みついています。背中に、銭(ぜに)のような輪の模様が並ぶことが名の由来です。数が減った時期もあり、地域で見守られてきた種です。
バイカルアザラシ
バイカルアザラシは、ロシアのバイカル湖だけに住む、世界でただ一種の淡水のアザラシです。海から遠くはなれた湖で、どのように暮らすようになったのかは、はっきり分かっていません。体はやや小柄で、つぶらな目がよく知られています。厚い氷に覆われる湖で、冬を越えて生きています。
ゾウアザラシとヒョウアザラシ
ゾウアザラシは、アザラシのなかでもっとも大きな種です。大きなオスは体長5mを越え、体重は数トンにも達します。ヒョウアザラシは、南極の海に住む強い狩人として知られます。魚だけでなく、ペンギンや小さなアザラシまで狙う、数少ないアザラシです。
川に現れるアザラシ
アザラシは海の生きものですが、まれに川をさかのぼって人里に現れることがあります。2002年には、東京の多摩川などに一頭のアザラシが姿を見せ、大きな話題になりました。餌を探すうちに迷いこんだと考えられていますが、くわしい理由は分かっていません。人の暮らしのすぐそばで、野生のアザラシに出会うこともあります。こうした迷いアザラシは、その後は人の手で保護され、海へ帰されるのがふつうです。
子育てと天敵
氷の上で生まれる子
多くのアザラシは、海氷の上や砂浜で子を産みます。生まれた子は、まっ白な産毛に覆われた種が多く、氷や雪の上では見つかりにくいとされます。母親の乳は脂肪が非常に多く、子は短いあいだに一気に育ちます。授乳の期間は種によって差があり、数日ほどで乳離れするものも知られています。乳離れのあとの子は、しばらく何も食べず、蓄えた脂肪で生き延びます。
アザラシを狙う天敵
海の中では、シャチや大きなサメがアザラシを襲います。北極の海では、ホッキョクグマが氷の上のアザラシを待ちぶせします。氷の割れ目から顔を出す瞬間などを狙われるため、アザラシは油断なく身を守ります。守るべき子を連れた母親は、とくに警戒を緩めません。


参考
- Wikipedia(英語版)「Earless seal」― アザラシ科の特徴・アシカとの違い・繁殖の各節
- Wikipedia(英語版)「Pinniped」― 鰭脚類(アザラシ・アシカ・セイウチ)の分類
- IUCN レッドリスト「Phoca largha」ほか― 各種の分布・保全状況
画像出典
サムネイル画像: NOAA Fisheries, Public domain, via Wikimedia Commons


