イタチは、細長い体と茶色の毛をもつ、イタチ科の小型の肉食獣です。すばやくネズミを追う狩りの名手で、追いつめられると強いにおいの「最後っ屁」で身を守ります。日本に古くからいる在来のニホンイタチと、あとから入ったチョウセンイタチが暮らしています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:食肉目 Carnivora
- 科:イタチ科 Mustelidae
- 属:イタチ属 Mustela
- 種:ニホンイタチ Mustela itatsi
和名・英名
- 和名:イタチ(ニホンイタチ)
- 英名:Japanese weasel
名前と、イタチ科の仲間
在来のニホンイタチは、学名の種小名 itatsi も和名の「イタチ」に由来します。イタチ科には、テンやオコジョ、フェレットなどがいます。クズリや、海に住むラッコもこの仲間です。どれも胴が長く足の短い体つきで、すきまや巣穴に入り込むのが得意です。イタチはそのなかでも、里山や水辺の身近な狩人として知られてきました。

大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 頭胴長 約20〜35cm・尾長 約12〜17cm・体重 メス約100g〜オス約500g |
|---|---|
| 分布 | ニホンイタチは本州・四国・九州(北海道などへ移入) |
| 生息環境 | 山地から里、水辺(草地・林・農地) |
| 食べもの | 肉食(ネズミ・カエル・ザリガニ・昆虫・鳥など) |
| 寿命 | 野生でおよそ2〜3年(最長5年ほど) |
| 保全状況 | IUCN: 準絶滅危惧(NT) |
細長い体と狩りの名手

穴にも入る細長い体
オスとメスで大きく違う体格
イタチはオスとメスで体の大きさが大きく異なります。オスの体重はメスのおよそ3倍にもなり、同じ種とは思えないほどの差です。体格が違うことで、オスとメスは狩る獲物をずらし、餌の取り合いを避けているとされます。オスはネズミなどの哺乳類を、メスは昆虫やミミズをよく食べる傾向があります。
泳ぎも木登りもこなす
細長くしなやかな体は、水の中でも木の上でもよく動きます。泳ぎが得意で、川に入ってカエルやザリガニを捕らえます。木にも登り、狩り場は地上・水辺・樹上と広いのが特徴です。短い足のわりに動きはすばやく、地面のわずかなすきまにも入り込みます。
小さな体で大きな獲物に挑む
イタチは体が小さいわりに、気が強く貪欲な狩人です。胃はとても小さく、一度に食べられる量は10〜20gほどしかありません。それでも自分より大きなウサギや鳥に挑むことがあり、少しずつ何度も食べます。すばやい動きと鋭い歯で、体格を上回る相手を仕留めることもあります。
身を守る「最後っ屁」とイタチのことば

肛門腺の「最後っ屁」
においで敵を撃退する
イタチは肛門の近くに、強いにおいを出す腺を持っています。天敵に追いつめられると、この腺から悪臭を放って敵をひるませ、そのすきに逃げます。追いつめられたときの最後の手段であることから、「イタチの最後っ屁」と呼ばれてきました。この言葉は、切羽つまったときの苦しまぎれの一手を指す慣用句にもなっています。
なわばりの標識にも使う
このにおいは、身を守るためだけのものではありません。岩や木の枝に分泌物を擦りつけ、なわばりや自分の存在を仲間に伝えます。イタチは単独で広い範囲を歩き回り、においで縄張りの境を示します。鼻のきく夜の森では、においが言葉のかわりに働いています。
「イタチごっこ」と「カマイタチ」
イタチは、昔から日本のことばや言い伝えにたびたび登場します。同じことを果てしなく繰り返すことを「イタチごっこ」と言い、これは子どもの遊びが語源とされます。また、つむじ風で人が切り傷を負う現象は、妖怪「カマイタチ」のしわざと語られてきました。すばやく姿を消すイタチの動きが、こうした不思議なイメージを生んだと考えられています。
テン・ハクビシン・チョウセンイタチとの違い
テン・ハクビシンとの違い
イタチは、同じイタチ科のテンとよく似ています。テンはイタチより大きく、尾が太くふさふさして、冬に毛色が黄色く変わる種もいます。ハクビシンは別のジャコウネコ科で、額から鼻へ白い線が通り、体もひと回り大きい動物です。イタチはこれらより小柄で細長く、茶色一色の体で見分けられます。

ニホンイタチとチョウセンイタチ
尾の長さで見分ける
日本には、在来のニホンイタチと、外から入ったチョウセンイタチがいます。見分けの手がかりは尾の長さで、ニホンイタチは尾が頭胴長の半分ほどにとどまります。チョウセンイタチは尾がそれより長く、頭胴長の半分をこえます。体もチョウセンイタチのほうが大きく、毛の色もやや明るめです。
西日本で置きかわる
チョウセンイタチは、毛皮用などに持ち込まれ、各地に広がりました。とくに西日本の平野部や市街地では、この外来のチョウセンイタチが優占しています。押されるように、在来のニホンイタチは山地へ追いやられつつあります。身近なイタチが、いつのまにか別の種に置きかわっている地域も少なくありません。
益獣と害獣のあいだ

ネズミを捕る益獣
イタチは、農地や家のまわりのネズミを食べる益獣として、古くから頼りにされてきました。かつてはネズミ退治のために、島へ運ばれて放されたこともあります。その一方で、ニワトリ小屋に入り込み、鳥を襲う害獣としての顔も持ちます。天井裏に住みつくと、フンやにおいの被害につながることもあります。
数を減らすニホンイタチ
在来のニホンイタチは、近年その数を減らしています。IUCNは準絶滅危惧に分類し、3世代でおよそ25%減ったとしています。外来のチョウセンイタチとの競争や、環境の変化が原因と考えられています。日本では保護のため、メスのイタチの狩猟が禁じられています。
参考
- Wikipedia(英語版)「Japanese weasel」― 形態・性的二型・分布・食性・保全の各節
- IUCN レッドリスト「Mustela itatsi」― 分布・保全状況(準絶滅危惧NT)
- 環境省レッドリスト・各自治体資料― ニホンイタチとチョウセンイタチの分布と獣害


