フクロギツネは、オーストラリアの木の上で暮らす有袋類です。「ポッサム」の名でも親しまれ、キツネを思わせる顔と、ふさふさの尾を持ちます。夜に活動し、ユーカリの葉などを食べます。ニュージーランドでは、人が持ちこんだことで数を増やし、大きな問題になっています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:双前歯目 Diprotodontia
- 科:フクロギツネ科 Phalangeridae
- 属:フクロギツネ属 Trichosurus
- 種:フクロギツネ Trichosurus vulpecula
和名・英名
- 和名:フクロギツネ(袋狐)
- 英名:Common brushtail possum
名前の由来
和名の「袋狐」は、育児のうを持つ有袋類でありながら、とがった鼻先と大きな耳がキツネに似ていることにちなみます。英名の brushtail は、ブラシのようにふさふさした尾を指します。「ポッサム」は、オーストラリアの木の上に住む有袋類をまとめて呼ぶ名前で、フクロギツネはその代表格です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 頭胴長 約40〜55cm/尾長 約35〜50cm |
|---|---|
| 分布 | オーストラリア各地とタスマニア島。ニュージーランドには移入 |
| 生息環境 | 森林・林・都市の近くまで。木のうろや屋根裏をねぐらにする |
| 食べ物 | 木の葉(ユーカリなど)・花・果実。都市では残飯も |
| 寿命 | 野生でおよそ5〜11年 |
| 保全状況 | オーストラリアでは広く分布。ニュージーランドでは外来種として問題 |
※ 有袋類とは、おなかの袋(育児のう)の中で子を育てる哺乳類のなかまです。カンガルーやコアラ、ウォンバットも有袋類です。
木の上の暮らし
フクロギツネは、一日の多くを木の上で過ごします。昼は木のうろなどで眠り、暗くなってから活動を始める夜行性です。地面におりることもありますが、危険を感じるとすぐに木へ登ります。
キツネを思わせる顔
大きな耳と目
フクロギツネは、大きな耳と、暗がりでよく光る大きな目を持ちます。とがった鼻先とあわせて、キツネのような顔つきに見えます。体の大きさはネコくらいで、ポッサムの仲間のなかでは大きいほうです。夜の森で、暗さの中でも動きやすいように、目と耳がよく発達しています。毛の色は、灰色や茶色から黒っぽいものまで、地域によってさまざまです。
木をつかむ尾
ふさふさした尾は、ただの飾りではありません。尾の先の裏側には毛のない部分があり、枝に巻きつけて体を支えられます。木から木へ移るときや、後ろ足で枝にぶら下がって餌をとるときに、この尾が役立ちます。手足の指も枝をつかむのに向いており、木の上での動きは身軽です。
何を食べるか
ユーカリも食べる草食寄りの雑食
毒のある葉も食べる
フクロギツネは、木の葉を食べます。オーストラリアに多いユーカリの葉も、食べ物の一つです。ユーカリの葉には、多くの動物が嫌がる成分が含まれていますが、フクロギツネはこれを消化できます。葉は水分も栄養も乏しいため、長い腸でゆっくり時間をかけて栄養を取り出します。ただし、コアラのようにユーカリだけを食べるわけではなく、いろいろな植物を口にします。
花や果実、残飯も
木の葉のほかに、花や果実、芽なども好んで食べます。花の蜜や花びらは、とくに好むとされています。都市の近くでは、庭の果物や、人の出した残飯をあさることもあります。ときには、鳥のたまごや小さな虫を食べることもあります。オーストラリアでは、あとから入ってきたキツネやネコ、フクロウなどに襲われます。
袋から背中へ
フクロギツネは有袋類なので、母親のおなかの袋で子を育てます。一度に育てる子は、ふつう1頭です。生まれたばかりの子はとても小さく、4〜5か月ほど袋の中で乳を飲みながら育ちます。しばらくすると子は袋から出て、母親の背中に乗って運ばれるようになります。母親が木を移動するあいだ、子は背中にしがみついて過ごします。背中に乗せて運ぶ時期は数か月続くとされます。巣立ちまでには、およそ1年ほどかかります。やがて独り立ちし、自分のねぐらを持つようになります。
都市にも現れる
人家にも入りこむ
フクロギツネは、環境の変化にうまく合わせられる動物です。オーストラリアでは、都市や町の近くでもよく見られます。木のうろのかわりに、人家の屋根裏をねぐらにすることもあります。夜になると屋根の上を走り回ったり、大きな声で鳴いたりして、住む人を驚かせることもあります。低いうなり声やしわがれた鳴き声は、なわばりを主張する合図とされています。オーストラリアでは在来の動物として保護されており、勝手に捕まえることはできません。
ニュージーランドの外来害獣
オーストラリアでは在来の動物として暮らすフクロギツネですが、海をこえたニュージーランドでは、まったく違う立場に置かれています。
毛皮のために持ちこまれた
フクロギツネは、19世紀に毛皮をとる目的で、オーストラリアからニュージーランドへ持ちこまれました。ニュージーランドには、フクロギツネを食べる大きな肉食動物がいませんでした。天敵の少ない環境で数は増えつづけ、今では数千万頭が住むとされています。柔らかい毛皮は防寒具などに使われ、いっときは輸出品にもなりました。それでも数は減らず、森を食べる害獣として知られるようになりました。
森と鳥への被害
木の葉を食べ尽くす
大量のフクロギツネは、ニュージーランドの森の木の葉を食べ尽くしてしまいます。葉を食べられた木は弱り、枯れることもあります。長い時間をかけて育った森が、大きなダメージを受けています。フクロギツネは好きな木を選んで食べるため、特定の種類の木が減ってしまうことも起きています。
鳥のたまごやひなをおそう
フクロギツネは、木の上にある鳥の巣を襲い、たまごやひなを食べることもあります。ニュージーランドには、飛べない鳥や、地上や木で子育てをする鳥が多くいます。天敵に慣れていないこれらの鳥にとって、フクロギツネは大きな脅威です。そのため現地では、フクロギツネの数を抑える取り組みが続けられています。また、家畜のウシにうつる病気を運ぶことも問題になっています。ニュージーランドは、こうした外来の動物を減らす大きな計画を掲げています。「2050年までに森を襲う外来の動物をなくす」ことを目指し、わなや、限られた地域での駆除などが進められています。
「ポッサム」と「オポッサム」
名前は似ているが別もの
フクロギツネのような「ポッサム」と、名前のよく似た「オポッサム」がいます。この二つは別のグループの動物で、しばしば混同されます。オポッサムは、敵に襲われると動かずに死んだふりをすることで知られます。南北アメリカに広く分布し、種類の多い仲間です。
| ポッサム | オーストラリアなどに住む有袋類。フクロギツネはこの仲間 |
|---|---|
| オポッサム | 南北アメリカに住む別の有袋類。「死んだふり」で知られる |
どちらも育児のうを持つ有袋類ですが、住む地域も、たどってきた進化の道すじも違います。日本語では区別のために、アメリカのものを「オポッサム」と呼び分けています。

参考
- IUCN Red List: Trichosurus vulpecula(Common Brushtail Possum)評価ページ
- New Zealand Department of Conservation(DOC): Possums の解説
- Animal Diversity Web(ミシガン大学): Trichosurus vulpecula の解説


