ジャージーウーリーは、全身に密なウール質長毛をまとった小型のカイウサギです。ネザーランドドワーフとフレンチアンゴラの交配で1970年代の米国で作出された品種で、体重は1.4kg以下の極小サイズ。ぬいぐるみのような外観と穏やかな性格から「No-Kick Bunny(蹴らないウサギ)」の愛称で親しまれ、1988年にARBAが公認して以降、米国の小型長毛品種を代表する存在として広く知られています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:ウサギ目 Lagomorpha
- 科:ウサギ科 Leporidae
- 属:アナウサギ属 Oryctolagus
- 種:ヨーロッパアナウサギ Oryctolagus cuniculus
- 品種:ジャージーウーリー Jersey Wooly
和名・英名
- 和名:ジャージーウーリー
- 英名:Jersey Wooly、Jersey Wooly Rabbit
別名・品種名の由来
品種名の「Jersey Wooly」は作出者の居住地であったアメリカ・ニュージャージー州の「Jersey」と、ウール質の長毛を意味する「Wooly」を組み合わせた命名です。分類学的にはヨーロッパアナウサギ(Oryctolagus cuniculus)の家畜化型の一品種で、他のカイウサギ品種と同じく生物学的には同一種の派生型ですが、体重1.4kg以下の極小サイズに全身ウール質長毛を組み合わせた点でカイウサギ品種の中でも独特の位置にある系統です。穏やかな性格から米国の飼育者コミュニティでは「No-Kick Bunny(蹴らないウサギ)」の通称でも親しまれています。
大きさ・特徴などの基本データ
| 大きさ | 体重 1.0〜1.4kg(ARBA基準:3ポンド以下) |
|---|---|
| 体型 | コンパクト・cobby(短くずんぐり) |
| 耳の長さ | 約5〜7cm(短い直立耳) |
| 頭部 | 丸い顔・大きな目・短い口吻 |
| 被毛 | 全身ウール質長毛(約5〜7cm) |
| 毛色 | ARBA公認28色(6グループに分類) |
| 原産国 | アメリカ合衆国ニュージャージー州(1970年代作出) |
| ARBA公認年 | 1988年 |
| 寿命 | 適切な世話でおよそ7〜10年 |
| 性格 | 非常に穏やか(No-Kick Bunny) |
作出の歴史
ネザーランドドワーフとフレンチアンゴラの交配
Bonnie Seeley による作出
ジャージーウーリーの作出は1970年代のアメリカ・ニュージャージー州で、ブリーダー Bonnie Seeley によって始まりました。目標はネザーランドドワーフの小型体格と、フレンチアンゴラのウール質長毛を組み合わせた新しい小型長毛品種の作出。両親品種の遺伝子を10年近くかけて選抜固定し、体重1.4kg以下の極小サイズにアンゴラ由来の長毛を安定的に発現する系統を確立しました。
1988年ARBA公認
Seeley は1980年代半ばに ARBA に新品種として公認申請を出し、3年間の審査を経て1988年に米ウサギ協会が本品種を新品種として承認しました。同じ1988年にはアメリカンファジーロップも同時期に公認されており、80年代後半は米国の育種家による新しい長毛系品種の作出が相次いだ時期でもあります。
姿と被毛
ぬいぐるみ調の全身長毛
アンゴラ由来のウール質被毛

被毛は全身に約5〜7cmのウール質長毛が生え、アンゴラ系品種から受け継いだ「羊毛のような密で柔らかな毛質」が特徴です。頭部・耳・脚まで含めて全身が均等に長毛でおおわれ、体格の小ささと相まって「動くぬいぐるみ」に例えられる独特のシルエットを持ちます。ARBA品種基準では毛質の密度・光沢の少なさが審査項目に含まれ、羊毛に近い柔らかい手ざわりが理想とされる被毛の性質です。
cobby型の小型体格

体型はネザーランドドワーフから受け継いだcobby(短くずんぐり)の形で、体重1.4kg以下の極小サイズを維持します。耳は5〜7cmと短くまっすぐ立ち、頭部が体に対して大きく見える幼形の造りは親品種のネザーランドドワーフに似た印象です。ただしジャージーウーリーは全身の長毛で体のシルエットがふんわり見えるぶん、実際の体格よりも大きく見える傾向があります。
毛色バリエーション

ARBAが公認する毛色は28色に及び、アグーチ・AOV(Any Other Variety)・ブロークン・セルフ・シェード・タンパターンの6グループに分類されます。この色数の豊富さはカイウサギ品種の中でも上位に位置し、育種家が幅広い色柄で系統を作れる楽しみが毛色選びの醍醐味となっています。
「No-Kick Bunny」の由来
ジャージーウーリーは米国の飼育者コミュニティで「No-Kick Bunny(蹴らないウサギ)」の通称で親しまれてきた品種です。ウサギ全般には抱きしめると後ろ足で蹴る防衛行動が知られていますが、ジャージーウーリーは他品種と比べてこの行動が明らかに少なく、抱きしめても暴れず落ち着いている個体が多く報告されています。この気性の穏やかさは、極小サイズ・全身長毛・扱いやすさの3要素が揃った小型長毛品種として、米国の子どもがいる家庭でも安心して飼える品種の評価につながっている特徴です。
性格
ジャージーウーリーは非常に穏やかで人懐こい気性が広く報告されており、ネザーランドドワーフより神経質さが少なく初心者にも扱いやすい小型品種として海外の飼育者に高く評価されています。前述の「No-Kick Bunny」の通称もこの気性の穏やかさを反映した呼び名で、抱きしめても暴れない安全性の高さから子どもがいる家庭でも安心して飼える相手として親しまれてきました。ただしウサギの個体差は当然あり、幼少期の社会化や日々の触れ合いの頻度が成体後の懐き具合に影響する点は他品種と同じとされます。適切な世話で寿命は7〜10年と長く、家族の一員として長く付き合える相手になります。
類似する小型長毛品種との違い
体格と長毛の分布で識別する
ジャージーウーリーと混同されやすい品種として、ライオンヘッド(頭部だけ長毛)・アメリカンファジーロップ(垂れ耳の長毛)・イングリッシュアンゴラ(大型の全身長毛)などが挙げられます。体格と耳の形で識別されます。
| 品種 | 体重 | 耳 | 長毛の分布 |
|---|---|---|---|
| ジャージーウーリー | 1.0〜1.4kg | 直立耳(極短) | 全身長毛 |
| ライオンヘッド | 1.4〜1.7kg | 直立耳 | 頭部のマネのみ |
| アメリカンファジーロップ | 1.4〜1.8kg | 垂れ耳 | 全身長毛 |
| イングリッシュアンゴラ | 2.3〜3.4kg | 直立耳 | 全身長毛(顔・耳も) |
「体重1.4kg以下の極小サイズ+直立耳+全身長毛」の組み合わせを持つのはカイウサギ品種の中でジャージーウーリーだけで、外観の見分けは容易です。血統書付き個体はARBA登録ブリーダーからの入手が確実な手段となります。
日本での流通と飼育環境
ペットショップでの位置
日本のペットショップでは、ジャージーウーリーの流通量はネザーランドドワーフやホーランドロップと比べるとかなり少なく、小型長毛の独特の外観を求める層に向けたニッチな系統として扱われています。血統書付き個体は5〜10万円が価格帯の目安で、専門ブリーダー経由での入手が一般的とされます。国内での流通が限定的な分、ライオンヘッド・アメリカンファジーロップと並ぶ「長毛系小型ウサギ」の選択肢の一つとして知られる存在です。
被毛のお手入れ
週2〜3回のブラッシング

全身ウール質長毛のため、被毛のもつれ・毛玉の発生を防ぐには週2〜3回のブラッシングが基本のケアとなります。特に脇の下・腹部・耳の後ろなど摩擦部位はフェルト状に固まりやすく、細目の櫛での丁寧な梳きが日常のお手入れとして推奨されています。ブラッシングを怠るとアンゴラ由来のウール質毛が絡まって切断が必要な状態に陥る例もあり、長毛品種の中では中程度以上のお手入れ量が必要になる系統です。
換毛期と毛球症のリスク
春・秋の換毛期には抜け毛が大量に出るため、ブラッシングの頻度をさらに上げる対応が必要になります。ウサギは飲み込んだ毛を吐き出せない動物種で、大量に毛を飲み込むと消化管に毛玉が詰まる「毛球症(うっ滞)」と呼ばれる致命的な疾患を起こすリスクを持ちます。長毛のジャージーウーリーはこのリスクが他品種より高い分、繊維質豊富なチモシーの十分な給与と換毛期のこまめなブラッシングが健康維持の要点として位置づけられています。
飼育環境の目安
ケージのサイズは幅60〜80cmが標準で、適温は18〜24℃です。他の小型ウサギとほぼ同じ環境で飼育できます。エサはチモシー(乾草)を主体に、ペレット・少量の生野菜を組み合わせるのが一般的な食餌構成です。長毛品種は湿気に弱い傾向があり、床材のこまめな交換と通気性の確保が短毛品種以上に重視される点となっています。
関連ページ

参考
- Wikipedia (英語版)「Jersey Wooly」(歴史・体格・公認)
- American Rabbit Breeders Association「Recognized Breeds」(ARBA公認1988年)
- British Rabbit Council「Breed Standards」(BRC品種基準)
- National Jersey Wooly Rabbit Club(品種団体・作出史)
- Sandford, J. C. (1996). “The Domestic Rabbit.” Blackwell Science(家畜ウサギ品種の総説)


