ルリビタキは背中側の青とオレンジ色の脇腹を持つ小さな鳥です。全長14センチほどでスズメとほぼ同じ大きさですが、オスが青い羽になるまでには2年から3年かかります。夏は高い山で繁殖し、冬になると都市の公園にも姿を見せます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:スズメ目 Passeriformes
- 科:ヒタキ科 Muscicapidae
- 属:ルリビタキ属 Tarsiger
- 種:ルリビタキ Tarsiger cyanurus
和名・英名
- 和名:ルリビタキ
- 英名:Red-flanked bluetail
- 学名:Tarsiger cyanurus(Pallas, 1773)
学名と英名が指す「青い尾」
学名の後半にあたる種小名の cyanurus は、「青い尾の」を意味します。和名のルリも青い色を表す瑠璃からきています。名前が青を指しているのは、この鳥の目立つ特徴がそこにあるためです。
英名の Red-flanked bluetail は、二つの特徴を並べた名前です。flanked は脇腹を指し、そこがオレンジ色に染まることを示します。bluetail は青い尾で、こちらは学名と同じ部分をとらえています。
大きさ・分布などの基本データ
| 全長 | 約14〜14.5cm(スズメとほぼ同じ) |
|---|---|
| 分布 | 夏はユーラシア大陸の亜寒帯とヒマラヤ山脈。冬は大陸南部へ |
| 日本での分布 | 夏は北海道・本州中部以北・四国の高地。冬は本州中部以南の低い山地へ |
| 渡りの区分 | 漂鳥(国内を季節で移動する) |
| 生息環境 | 森林。冬は市街地の公園にも現れる |
| 餌 | 昆虫・節足動物・ジャノヒゲなどの木の実 |
| 卵の数 | 1回に4〜5個 |
| 保全状況 | IUCNレッドリスト:LC(軽度懸念) |
全長14センチの体と、オレンジの脇腹
スズメとほぼ同じ大きさ
全長は14センチから14.5センチほど。スズメが約14センチなので、大きさの見当はそこからつきます。
白い腹とオレンジの脇腹
腹側の羽毛は白く、その両脇にオレンジ色の部分があります。この配色は雌雄に共通しており、背中側の色が違っていても脇腹のオレンジは変わりません。野外で見分けるときの手がかりになります。
英名が指す脇腹の色
英名の flanked は脇腹を意味し、red-flanked で「脇腹が赤い」となります。日本語ではオレンジ色と表現される部分が、英語では赤として受け取られています。
暗い林を好む性質
生息するのは森林です。明るく開けた林よりも木々が茂って暗い林を好みます。地表や樹上を移動しながら餌をとるため、林の下層で見かけることが多くなります。
オスが青くなるまでの2年
メスと見分けにくい若いオス
背中側が緑褐色の1年目
生まれて間もないオスは背中側が緑褐色で、メスとよく似ています。2年未満の若いオスはメスの成鳥と比べて翼がやや青みを帯び、脇腹や尾の色も濃く出ます。それでも遠目には区別がつきません。

この似方は観察者を惑わせます。サントリーの鳥百科によれば、幼鳥はオスもメスによく似た色をしています。メスだけで繁殖しているのかと見間違うこともあるそうです。
2年以上かかる青
オスの背中側が完全な青になるには2年以上かかります。同じ鳥百科は色彩が完成するのを生まれて2年目としつつ、立派に青くなるまでは約3年とも記しています。年数の見方には幅があります。
オスは色が完成する前の1年目でも繁殖します。青くない姿のまま子を残す個体がいます。青い羽は繁殖の条件ではありません。
メスの尾に残る青
メスの成鳥は背中側が緑褐色で、オスのような青い体にはなりません。ただし尾だけはわずかに青みを帯びます。背中側が茶色い個体でも尾の青みが本種を示します。
脇腹のオレンジと青い尾は、雌雄と年齢を問わず共通します。全身が青いのは2年以上を経たオスに限られます。
全身に斑のある幼鳥
巣立って間もない幼鳥は成鳥とかなり違う姿をしています。全身に細かい斑が散り、うろこのような模様に見えます。ヒタキ科の幼鳥に共通する特徴です。

この斑模様は成長とともに消え、緑褐色の羽に変わります。オスの場合はそこからさらに2年をかけて青くなっていきます。
単独の暮らしと、木の実を含む食性
群れを作らない性質
ルリビタキは群れを作りません。繁殖期には縄張りを構え、冬も1羽ずつで生活します。冬に公園で見かける個体も、多くは単独で行動しています。
繁殖期には木の中や枝先で高く澄んだ声でさえずります。サントリーの鳥百科は、その声を「キョロ キョロ キョロリ」と丸みのある調子だと記録しています。
昆虫からジャノヒゲの実まで及ぶ食性
食性は雑食です。昆虫類やクモなどの節足動物のほか、ジャノヒゲの果実といった木の実も食べます。地表と樹上の両方を移動しながら獲物を探します。
ジャノヒゲは林の下に生える細い葉の植物で、青い実をつけています。虫の少ない冬に、こうした果実が重要な餌になります。
針葉樹林の地表に作る巣
枯葉と苔のお椀
繁殖は6月から8月にかけて行われます。巣を作る場所は針葉樹林の地表で、枯葉や苔を集めてお椀のような形にします。

メスだけが温める15日
1回に産む卵は4〜5個です。卵を温める抱卵はメスだけが行い、期間は約15日になります。オスは巣に座らず、縄張りの防衛にあたります。
15日で巣立つ雛
雛は卵からかえって約15日で巣立ちます。卵を温める期間と巣で育つ期間は、どちらも半月ほどです。生後1年で繁殖できる体になり、オスは青くなる前にその時期を迎えます。
ジュウイチによる托卵
ルリビタキの巣は、ジュウイチという鳥に托卵されることがあります。托卵はほかの鳥の巣に卵を産み込んで育てさせる習性です。カッコウの仲間に見られます。
托卵された巣ではジュウイチの雛が先に卵からかえり、同居する卵や雛を巣の外へ押し出します。親鳥は自分の子を失い、体の大きな他種の雛を育て続けます。
「幸せの青い鳥」と呼ばれる背景
戯曲『青い鳥』に由来する見方
青い鳥を幸福の象徴とする見方は、ベルギーの作家メーテルリンクの戯曲『青い鳥』に由来するとされます。兄妹が幸せの青い鳥を探して旅をする物語で、日本でも広く知られています。
ただし作中の鳥は特定の種を指していません。ルリビタキが「幸せの青い鳥」と呼ばれるのは、この物語のイメージが青い羽の鳥に重ねられたためとみられます。生態や分類とは関わりのない愛称です。
日本にいるほかの青い鳥
日本で青い羽を持つ鳥は本種だけではありません。夏鳥として渡来するオオルリは全身が濃い青で、高い木の上でさえずります。同じヒタキ科のコルリも背中側が青くなります。
この3種は瑠璃の名を共有し、まとめて呼ばれることもあります。ルリビタキが他と違うのは、冬に低地へ下りて人里の近くに現れる点です。オオルリとコルリはどちらも夏鳥のため、冬に観察できるのは本種に限られます。
冬の都市公園への移動
高地から低地への季節移動
国内を移動する漂鳥
日本では北海道と本州中部以北、四国の高地で繁殖します。冬になると本州中部以南へ移り、山地や低い山の林で越冬します。国境を越える渡りではなく、国内を季節で移動する漂鳥です。
ユーラシアに広がる分布
種として見ると分布はさらに広く、夏はユーラシア大陸の亜寒帯からヒマラヤ山脈にかけて繁殖します。亜寒帯は寒帯に近い冷涼な地域を指します。冬は大陸南部へ移動し、中国南部や東南アジアの一部でも越冬しています。日本国内の移動はこの大きな季節移動の一部にあたります。
標識をつけた個体の追跡では、5年11か月にわたって生存が確認された記録が報告されています。この個体は高地と低地の往復を、5回以上繰り返した計算になります。
冬の公園での観察
冬の低地に下りた個体は市街地の公園でも記録されています。繁殖期には高地にいる個体が、この時期には人の生活圏へ移ってきます。

探すときの手がかりは暗い林の下層と単独行動。全身が青い個体は成熟したオスに限られるため、緑褐色の個体のほうが多く見つかります。尾の青みと脇腹のオレンジが、本種を示す印になります。
関連ページ



参考
- サントリー「日本の鳥百科」ルリビタキ(監修:柳澤紀夫・日本鳥類保護連盟)。オスの色彩が完成する年数と1年目での繁殖。さえずりの表現・メスの尾の青・生息する林の明るさ
- 日本語版Wikipedia「ルリビタキ」(形態の計測値・分布・食性・営巣と抱卵の日数・ジュウイチによる托卵)
- 吉安京子ほか「鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一覧(1961–2017年における上位2記録について)」山階鳥類学雑誌 52(1)(本種の生存期間の記録の出典。J-STAGEで公開)


