ウグイは日本のほとんどの川にいる魚です。ほかの魚が生きられないほど酸の強い湖でも暮らせます。春になると体に3本の赤い線が出て、まったく違う姿になります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:条鰭綱 Actinopterygii
- 目:コイ目 Cypriniformes
- 科:ウグイ科 Leuciscidae
- 属:ウグイ属 Pseudaspius
- 種:ウグイ Pseudaspius hakonensis
和名・英名
- 和名:ウグイ(鯎・石斑魚)
- 英名:Japanese dace / Big-scaled redfin
- 旧属名:Tribolodon hakonensis(この名も広く使われています)
神事の杭にたとえた名前
漢字での書き方がいくつもあります。「鯎」は日本で作られた字です。「石斑魚」は日本語と広東語で共通する書き方で、ほかに「石礬魚」「鯏」「久岐魚」「桃花魚」とも書かれます。
「ウグイ」という名前の由来には、細長い体つきから「斎杭(いくい)」を連想したという説があります。斎杭とは神事で御幣(ごへい)を掛けるために立てる神聖な杭のことです。
同じ属の3種
同じウグイ属にはエゾウグイ・ウケクチウグイ・マルタがいます。ウケクチウグイは信濃川水系などに住む絶滅危惧種です。マルタは産卵のため川をのぼる回遊魚で、ウグイとは交雑しやすいとされます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長は最大50cm。多くは30cm前後で、餌の量によって20〜40cmと幅がある |
|---|---|
| 体重 | 2.3kg以上に達することもある |
| 分布 | 日本ほぼ全域。琉球列島と四国の瀬戸内側の一部を除く |
| 生息環境 | 河川の上流から下流まで。湖沼、海水がまじる汽水域、標高約1,000mの山地の水域にも |
| 食べ物 | 雑食。ほかの魚の卵や稚魚も食べる |
| 繁殖 | 春から初夏、浅瀬の小石の間に集団で産卵する |
| 寿命 | 最長で8年という報告がある |
酸に耐える体のしくみ

宇曽利湖・猪苗代湖にも住む
この魚はpH4以下という強い酸性の水でも生きられます。pHは水の酸性の強さを示す数字で、7が中性、数字が小さいほど酸が強くなります。恐山の宇曽利湖・屈斜路湖・猪苗代湖でも見つかり、水の汚れた場所でも生きられます。
田沢湖に引き入れられた酸の水
秋田県の田沢湖にはクニマスという固有の魚がいました。1940年に強い酸性の玉川の水が引き入れられ、クニマスは姿を消します。同じ湖で、ウグイは生き続けました。
※ クニマスは絶滅していません。田沢湖の個体群は姿を消しました。ただし1935年に卵が移された山梨県の西湖で、2010年に9個体の生き残りが確認されています。
多数が集まって作る袋
酸の強い水にいると、えらにある塩類細胞という細胞が変化します。数が増え、形も変わります。この細胞は体の中の塩分や酸性度を調節する役目を持っています。
普通は1個ずつ離れて並んでいますが、宇曽利湖のウグイでは多数が集まってひとつの袋のような構造を作ります。この形で体液のpHを調節しています。
春に体が赤くなる

体側を走る1本の黒帯
普段の体色は濃い茶を帯びた銀色です。体の側面に黒い帯が1本走ります。腹は銀白色で、腹びれ・しりびれ・尾びれの後ろは黄色みを帯びます。
アカウオと呼ばれる季節
3月上旬から5月中旬になると、雄も雌も体に鮮やかな朱色の線が3本現れます。繁殖の時期に出るこうした色を婚姻色といいます。この色から「アカウオ」「サクラウグイ」と呼ぶ地方もあります。
水温11〜13℃が合図
産卵は川の浅瀬で行われます。流れが緩やかで、直径2〜5cmの小石が敷き詰められた場所を選び、集団で産みます。水温が11〜13℃まで上がる時期が始まりの目安です。
卵は直径2mmほどで、淡い黄色をしていて粘り気があります。流れの速さが秒速10cm以下の場所で、藻の付いていない小石に貼り付けます。
一生の過ごし方が2通り

北ほど増える降海型
一生を川で過ごす個体と、一度海に出る個体がいます。海に出るほうを降海型といい、北へ行くほどその割合が増えます。
琵琶湖では湖と流れこむ川の両方を使う集団と、川にとどまる集団に分かれています。海水と川の水がまじる汽水域や内湾でも見られます。
育つにつれ単独になる
若い個体は岸近くの浅瀬で群れを作ります。数百匹に達することもあり、捕食者から身を守る役に立っています。
成長すると深い場所を好み、単独で暮らすようになります。冬は深く穏やかな水域へ移り、深い湖では1匹で越冬します。こうして冬を越しながら、最長で8年生きたという報告があります。
大きくなると食べるものが変わる
カワムツと同じ餌を取る時期
若いウグイの群れは、動物プランクトンや川底の小さな生き物を食べます。栄養の多い湖では、この餌をめぐってカワムツなどのコイ科の魚と競合します。
共食いで大人になる湖もある
多くの個体は体長30cm前後で、学校で使う30cmものさしとほぼ同じ長さです。餌の多い少ないで20〜40cmと幅が出て、大きいものは50cmに達します。体がある大きさに達すると魚を食べ始め、口に入る大きさのコイ科の魚を狙います。
自分より小さい同じ種の個体も食べます。餌の乏しい小さな湖では、この共食いによってのみ繁殖できる年齢まで育ち、集団が保たれている場合があるとされます。一方、生産の多い湖では大きくなってもプランクトンや底の生き物を食べ続け、魚食に移らないこともあります。
ブルーギルを抑える可能性
ほかの魚の卵や稚魚も食べます。この性質を利用すれば、外来種であるブルーギルの増えすぎを抑えるのに役立つ可能性が示されています。
ハヤと呼ばれる魚たち

土地ごとに変わる呼び名
多くの地方で、ウグイはオイカワやカワムツと一括りに「ハヤ」と呼ばれます。関東地方などでは、この呼び名が標準和名より広く使われている地域もあります。ほかにも「アイソ」「アカハラ」「クキ」「イダ」など、土地ごとの呼び名が各地にあります。
砂利の浅瀬を分け合う
ウグイ・カワムツ・オイカワの3種は、産卵に水草を必要としません。卵を水草に付ける習性がなく、川底が砂利や砂でできた浅瀬を繁殖の場にして、そのすき間に卵を産み付けます。
食べ方と釣り

脂がのるのは冬
春から夏にかけては川魚らしい泥臭さがあります。冬の脂がのった身は美味で、「寒バヤ」または「寒バエ」と呼ばれます。小骨は多い魚です。
山あいの食卓を支えてきた
古くから日本各地で、コイやフナと並ぶ貴重な動物性たんぱく源として利用されてきました。甘露煮・塩焼き・天ぷら・燻製・いずし(飯とともに漬けて発酵させた保存食)などにされます。海の魚が手に入りにくい山あいでは、川の魚が食卓の動物性の食べ物を支えていました。
※ 生では食べません。横川吸虫(よこがわきゅうちゅう)などの寄生虫が入っていることがあるため、加熱して食べます。
釣り人からは外道とも呼ばれる
釣りやすい魚で、オイカワと並んで古くからなじみがあります。餌は水生昆虫でも練り餌でもかかります。冬は流れの弱い深みに集まるので、そこを狙う「寒バヤ釣り」があります。
一方、河口ではハゼと生息域が重なります。ハゼを狙う釣り人にとっては餌を先に取ってしまう相手で、外道として嫌われることもあります。
どこで会える
水面に映る群れの影
身近な川の中流から上流にかけて広く分布しています。群れは水面近くを泳ぎ回るため、橋の上からは黒い影として映ります。
上流へ移りつつある生息域
関東地方などの川ではオイカワやカワムツが増えています。そのぶんウグイの生息域は上流へ押しやられ、数が減る傾向にあるという指摘もあります。
関連ページ




参考
- Wikipedia「ウグイ」
- Wikipedia「Big-scaled redfin」
- 京都大学「田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山梨県西湖での発見」
- GBIF「Tribolodon hakonensis」


