サケ(シロザケ)

婚姻色のシロザケ 硬骨魚類

サケは、川で生まれて海で育ち、また生まれた川へ帰ってくる魚です。日本で「サケ」といえば、ふつうはシロザケという種類を指します。秋になると、群れをなして川をさかのぼる姿が各地で見られます。切り身や塩ざけ、イクラとして、食卓にもなじみ深い魚です。

数年を海で過ごしたあと、生まれた川へ正確に戻る性質は、古くから研究の対象になってきました。川と海を行き来できる体のつくりも、この魚の特徴です。

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分類と学名

分類階層

サケは、サケ目サケ科に入る魚です。日本でサケと呼ばれるシロザケの学名は、Oncorhynchus keta といいます。同じ仲間には、ベニザケやギンザケ、カラフトマスなどがいます。サケ科には、海へ出ずに川だけで一生を過ごす種類もいます。北の海を中心に、日本からアラスカまで広く分布しています。日本の川に帰るサケのほとんどは、このシロザケです。

ベニザケ
産卵期に全身が真っ赤に染まるベニザケ(紅鮭)。緑の頭と紅の体、稚魚が湖で育つ生態、身がサケでいちばん赤い理由、海へ下らないヒメマスとクニマスの物語まで写真つきで紹介します。
  • 目:サケ目
  • 科:サケ科
  • 種:シロザケ(Oncorhynchus keta
  • 分布:北太平洋。日本では北海道・東北を中心に川へ帰る
シロザケを描いた図
川にのぼるころのシロザケを描いた図。体の側面にしま模様が出ています。作図:Timothy Knepp/U.S. Fish and Wildlife Service(パブリックドメイン)

サケとマス、サーモン

「サケ」と「マス」の区別は、分類上のはっきりした線引きではありません。海へ下る大きなものをサケ、川に残る小ぶりなものをマスと呼び分けてきた、古い習わしに近いものです。また、生で食べられる「サーモン」の多くは、養殖されたニジマスやタイセイヨウサケです。天然のシロザケは、寄生虫のおそれから、生では食べないのがふつうでした。同じ「サケ」の名でも、指しているものが違う場合があります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約70〜80cm/体重 3〜5kgほど(1mに近づくものも)
分布北太平洋とその周りの川(日本・ロシア・アラスカなど)
生息環境生まれてしばらくは川。成長すると海。産卵期にまた川へ
食べ物海ではオキアミや小魚など。川へ入るとほとんど食べない
一生3〜5年ほど。産卵は一生に一度
川底の砂利に産む。イクラ・筋子として知られる

生まれた川へ帰る

サケの一生でもっとも知られているのが、生まれた川へ戻る性質です。「母川回帰(ぼせんかいき)」と呼ばれ、多くの個体が自分の生まれた川、それも同じ支流まで正確に帰りつきます。

川をさかのぼるシロザケ
産卵のために川をさかのぼるシロザケ。撮影:Roger Tabor/U.S. Fish and Wildlife Service(パブリックドメイン)

母川回帰

川のにおいを覚える

手がかりの一つは、においだと考えられています。稚魚が海へ下るころ、自分の育った川の水のにおいを覚えるとされます。川の近くまで戻ると、その記憶を頼りに、目当ての川を選び分けているという見方です。実験でも、においを感じられなくすると、川を選べなくなることが示されてきました。帰りつくのは、川で泳ぎ出した稚魚のうちのごくわずかです。ごく一部は生まれた川以外へ入ることもあり、それが分布を広げる役に立つとみられています。

広い海での道しるべ

ただし、においが届くのは川の近くだけです。何千キロも離れた海のまん中から、どうやって方角を知るのかは、まだはっきりしていません。生まれた場所の地磁気を覚えていて、それを頼りに戻るという説があります。においと地磁気を、遠近で使い分けているという見方です。いずれも仮説の段階で、母川回帰のしくみが完全に解明されたわけではありません。

川と海を行き来する体

多くの魚は、淡水と海水のどちらか一方でしか生きられません。塩分の違う水では、体の水分の出入りが逆になってしまうからです。サケは、その両方を行き来できる、珍しい体をもっています。

塩分に合わせて切りかえる

スモルトという変身

川で育った稚魚は、海へ下る前に体を作りかえます。体色は銀白色に変わり、海水に耐えられる体へと整えられます。この変化は「スモルト化」と呼ばれ、海へ出る準備そのものです。生まれた川のにおいを覚えるのも、ちょうどこの時期だとされます。海に出たサケは、北の海を大きく回りながら、数年かけて育ちます。

川を下るサケの稚魚の群れ
海へ向かうサケの稚魚の群れ。撮影:David Csepp/NOAA(パブリックドメイン)

えらの細胞がはたらく

切りかえの中心は、えらにある特別な細胞。淡水では、薄い水から塩分を取りこみ、余った水を尿として出します。海水では逆に、塩分をくみ出して水を保ちます。同じえらで、出し入れの向きを反対にできるところが、この魚の強みです。

赤いのに白身魚

身の色はえさ由来

アスタキサンチンという色素

サケの切り身は、鮮やかな紅色をしています。この色のもとは、アスタキサンチンという色素。サケ自身が作るのではなく、海でオキアミなどを食べて取りこんでいます。えさの少ない環境で育つと、身の色が薄くなることも知られています。養殖されるサーモンでは、餌にこの色素を混ぜて身の色を整えています。

赤身・白身の区分では白身

魚を赤身と白身に分けるとき、目安になるのは筋肉に含まれる色素タンパクの量です。マグロやカツオの赤身は、この色素タンパクが多いために赤くなります。サケの身は赤く見えても、その量は少なく、赤身・白身の区分では白身魚に入ります。見た目の色と、呼び名がすれ違う珍しい例です。

一生に一度の産卵

川での変化

婚姻色と鼻曲がり

川に入ったサケは、姿を大きく変えます。銀色だった体に、緑や紫のしま模様が浮かび上がります。オスは口の先が大きくかぎ形に曲がり、歯も鋭く伸びます。この「鼻曲がり」は、ほかのオスと張り合うための姿だと考えられています。

鼻が曲がった産卵期のシロザケ
産卵期のシロザケ。しま模様が出て、口の先が曲がっています。撮影:K. King/U.S. Fish and Wildlife Service(パブリックドメイン)

産卵を終えた親は死ぬ

川へ入ったサケは、ほとんど餌を食べません。蓄えた力だけで流れをさかのぼり、産卵にすべてを使いきります。メスは川底の砂利に尾で穴を掘って卵を産み、オスが精子をかけ、上から砂利をかぶせて守ります。一匹のメスが産む卵は、3000個ほどにもなります。そして産卵を終えた親は、数日から数週間のうちに死にます。一生に一度きりの繁殖。

力尽きた親の体は、川や森にとどまり、やがて分解されて栄養になります。その栄養は、次の世代の稚魚が食べる小さな生きものを育てます。海で得た栄養が親の体によって川へ運ばれ、流域の生きものを支えているとみられています。クマや鳥も、この時期のサケを目当てに川へ集まります。

ヒグマ
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人とのかかわり

サケは、古くから北の地方の暮らしを支えてきた魚です。塩ざけや新巻ざけは冬の保存食となり、卵はイクラや筋子として親しまれています。北海道や東北では、卵を人の手でふ化させ、稚魚を川へ放す取り組みが続いてきました。いま日本の川に帰るサケの多くは、この放流から育ったものだとされます。秋に帰るシロザケは「秋鮭」と呼ばれ、季節の魚として扱われてきました。近ごろは川へ帰る数が減っており、海水温の上昇との関わりが指摘されています。

どこで会えるか

サケの姿がもっとも見やすいのは、秋から初冬の川です。北海道や東北の川では、遡上を見学できる場所が設けられています。水族館でも、川をさかのぼるようすや稚魚の展示が行われています。ふ化場では、卵から子が出てくる場面を見られることもあります。産卵を終えて力尽きた親の姿も、この季節の川で見られる光景です。遡上の時期には、川岸に見物の人が集まる場所もあります。

ギンザケ
海で銀色に輝き、産卵期に体側だけが赤く染まるギンザケ。稚魚が川で1年育つ生態、シロザケ・ベニザケとの違い、そして日本の海面養殖の主力(宮城)としての顔まで、写真つきで紹介します。

参考

  • Wikipedia「シロザケ」「Chum salmon」
  • サケの母川回帰に関する研究(嗅覚の刷り込み・地磁気説/Scientific Reports ほか)
  • 水産庁・北海道のふ化放流資料、Alaska Department of Fish and Game ほか

画像出典

サケ【総合】
サケは、冷たい海と川を行き来するサケ科の魚の総称です。日本ではシロザケ・ベニザケ・ギンザケなどが食卓でおなじみで、生まれた川に帰って産卵する暮らしや、産卵期に赤く色づく姿で知られます。分類と学名分類階層界:動物界 Animalia門:脊索動...
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