金魚は、中国で野生のフナから生まれ、人の手で千年以上かけてつくられた観賞魚です。和金や琉金、出目金など数多くの品種があり、日本では夏祭りの金魚すくいでもおなじみです。もとは一匹の赤いフナだったものが、色や形を選び育てられて、今の姿になりました。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:条鰭綱 Actinopterygii
- 目:コイ目 Cypriniformes
- 科:コイ科 Cyprinidae
- 属:フナ属 Carassius
- 種:キンギョ Carassius auratus
和名・英名
- 和名:キンギョ(金魚)
- 英名:Goldfish
別名・学名の由来
種小名の auratus は、ラテン語で「金色の」という意味です。金魚はフナの仲間で、日本の池や川に住むギンブナやゲンゴロウブナと同じフナ属に分類されます。見た目は大きく変わっていても、分類のうえではフナのごく近い親戚にあたります。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 品種による。和金型で15〜30cm(大きい個体は40cm前後) |
|---|---|
| 原産 | 中国。現在は世界各地で観賞用に飼育(自然分布はない) |
| 生息環境 | 止水〜緩やかな流れの淡水(原種のフナは池・沼・水路) |
| 食べもの | 雑食(藻・水草・小さな水生動物・人工飼料) |
| 寿命 | 飼育下でおよそ10〜15年(条件がよければ20年以上) |
| 保全状況 | 家畜化された品種のためIUCNの評価対象外 |
フナから生まれた魚
祖先は一匹の赤いフナ
金魚のもとになったのは、野生のフナです。およそ2000年前の中国南部で、灰色のフナの中にまれに現れる赤い色変わり(ヒブナ)が見つかりました。この赤い個体を選んでは殖やすことをくり返し、色や形を少しずつ変えていったものが金魚です。品種改良によって生まれた魚なので、もともとの野生種というものは存在しません。祖先がフナである名残で、金魚はいまも寒さや水の汚れに比較的強く、丈夫な魚として知られます。
中国から日本へ広まる
日本に来たのは室町時代
金魚が中国から日本へ伝わったのは、室町時代の文亀2年(1502年)とされます。当初は限られた人しか手にできない、たいへん珍しい魚でした。江戸時代に入ると養殖が各地に広まり、庶民のあいだで金魚を飼うことが流行します。夏の風物詩である金魚売りや金魚すくいも、この頃に育った文化です。金魚が広く親しまれるようになったのは、明治になってからだといわれます。
金魚の三大産地
日本の金魚は、古くからの産地で大切に育てられてきました。金魚の三大産地として知られるのは、奈良県の大和郡山市・愛知県の弥富市・東京都の江戸川区です。近年は熊本県の長洲町も養殖に力を入れ、新しい産地として名前があがるようになりました。産地ごとに得意な品種や育て方があり、日本の金魚づくりを支えています。
たくさんの品種
体型でわかる4つのタイプ
金魚の品種はとても多く、日本で親しまれているものだけでも数十種類にのぼります。数は多いのですが、体型で見れば大きく4つのタイプに分けられるのが特徴です。まず体型をつかむと、それぞれの品種の位置づけが分かりやすくなります。
| 和金型 | フナに近い細長い体。泳ぎが得意で丈夫。和金・コメットなど |
|---|---|
| 琉金型 | 体が丸く、ヒレが長い。琉金・出目金など |
| オランダ型 | 丸い体に、頭のこぶ(肉瘤)が発達する。オランダ獅子頭・東錦など |
| らんちゅう型 | 背びれがなく、丸みのある体。らんちゅう・ピンポンパールなど |
代表的な品種
和金・コメット
和金は、フナに最も近い体型をもつ、最も基本的な金魚です。細長い体で泳ぎがうまく、丈夫で飼いやすいため、金魚すくいでもよく見かけます。コメットは、その和金から生まれた品種で、尾びれが長くのびます。細長い体と長い尾が特徴で、広い池でもよく映えます。どちらも和金型の代表で、金魚のなかでは特に体が強い部類です。
琉金・オランダ獅子頭
琉金は、体が短く丸く、ヒレの長い品種です。中国から沖縄(琉球)を経て伝わったことが名前の由来とされます。丸みのある体つきから、金魚らしい金魚として人気があります。オランダ獅子頭は、頭にこぶのような肉瘤が発達する品種です。名前に「オランダ」とつきますが、中国から伝わった金魚をもとに日本で育てられました。丸い体と、頭を覆う肉瘤が見分けの目印です。
出目金・水泡眼・頂天眼
目に特徴のある品種もいます。出目金は、両目が左右に大きく飛び出した琉金型の金魚で、黒い体の黒出目金がよく知られます。水泡眼は、目の下に水の入った大きな袋をもつ品種です。頂天眼は、目が上を向いてついた品種です。いずれも視力はあまりよくないとされ、ゆっくりした水流の環境で飼われます。
らんちゅう・ピンポンパール
らんちゅうは、背びれをもたない品種で、「金魚の王様」とも呼ばれます。背中はなめらかな曲線を描き、頭には肉瘤が発達します。姿を上から鑑賞する「上見(うわみ)」で楽しむ品種として、専門の愛好家も多くいます。ピンポンパールは、卓球のボールのように丸くふくらんだ体をもつ小型の品種です。うろこが真珠のように盛り上がって見えることから、この名前がつきました。
金魚すくいの金魚と小赤
夏祭りの金魚すくいで泳いでいる金魚の多くは、「小赤(こあか)」と呼ばれる小さな和金です。小赤は、その年に生まれた若い和金です。値段が安く、体も丈夫です。もともとは大きな魚の餌として養殖されてきた歴史もあり、大量に育てやすいことから、すくいの金魚に使われます。すくわれた小赤も、適した環境では10cmを超える大きさまで育ちます。
金魚の暮らしと体
何を食べるか
金魚は雑食で、藻や水草・小さな水生の虫・ミジンコなど、口に入るものを幅広く食べます。原種のフナと同じで、底をつついて餌をさがすのも特徴です。金魚は満腹を感じにくいとされ、餌を与えられただけ食べてしまうことがあります。食べ残しや多すぎる餌は水を汚す原因にもなり、飼育では餌の量が難しい点の一つとされています。
水温と季節の暮らし
金魚は変温動物で、体温は周りの水温しだいです。活発に泳ぐのは水温が20〜25度ほどのときで、水温が下がると動きが鈍くなります。10度を下回るとほとんど餌を食べなくなり、冬は水底でじっとして冬眠に近い状態で過ごします。一方で、30度を大きく超える高い水温は苦手です。屋外の鉢や池でも冬を越せるのは、フナ譲りの寒さへの強さがあるためです。
※ 変温動物とは、まわりの温度に合わせて体温が変わる動物のことです。魚や両生類、爬虫類などが当てはまります。
どれくらい生きるか
金魚は、飼育下でおよそ10〜15年生きるとされます。小さな金魚鉢のイメージから短命に思われがちですが、水質や水温が保たれた環境では、犬や猫に近い年数を生きます。イギリスには、40年以上生きた金魚の記録もあるほどです。丈夫な和金型は特に長生きしやすく、体の大きな品種ほど寿命も長い傾向があるとされます。
たまごから育つ
金魚は、春から初夏にかけて繁殖します。水温が18度を超えるころ、オスがメスを追いかけ、メスは水草などに小さな卵を数多く産みつけます。一度に産む卵は、数百から数千におよぶこともあります。卵は水草や産卵用の網に付着し、水温にもよりますが数日で孵化します。生まれたばかりの稚魚は「針子(はりこ)」と呼ばれ、体長数ミリの半透明の姿です。親の金魚は卵や稚魚を食べてしまうため、殖やすときは卵を別の容器に移すのがふつうです。稚魚は水中の微生物などを食べて育ち、成長とともに親と同じ色や形に近づいていきます。
体の色が変わる
黒くなる・色が抜ける
金魚の体の色は、一生を通じて変わっていきます。生まれたばかりの金魚は、フナのような黒っぽい色です。育つにつれて、赤や白へと色が変わります。逆に、成長の途中で赤い色が抜けて白くなったり、一部が黒ずんだりすることもあります。これは、皮膚にある色素細胞のはたらきが、光や成長・体調によって変化するためと考えられています。飼っている金魚の色が変わるのは、多くの場合こうした自然な変化です。
逃がすとフナ色に戻る
金魚を川や池に逃がすと、世代を重ねるうちに赤い色が失われ、地味な茶色(フナ色)の個体が増えていきます。目立つ赤色は、外敵に見つかりやすく、野外では生き残りに不利なためと考えられています。いわば、祖先であるフナの姿へゆるやかに先祖返りしていく現象です。金魚は繁殖力が強く、逃がされた個体が在来のフナと交雑して、生態系を乱すことも心配されています。飼育された金魚の放流は、在来の生態系への影響が懸念されています。
金魚と日本の文化
金魚は、日本人の暮らしに古くからなじんできた魚です。江戸時代には透明なガラスの金魚鉢が広まり、水の中を泳ぐ金魚を眺めることが夏の楽しみになりました。金魚を売り歩く「金魚売り」の声も、夏の風物詩として親しまれました。浮世絵師の歌川国芳は、金魚を擬人化した「金魚づくし」という連作を残しています。近年は、暗い会場に大小の水槽を並べる「アートアクアリウム」などの展示も人気です。金魚は観賞魚であると同時に、祭りや浮世絵といった日本の文化の題材としても扱われてきました。
金魚の記憶と学習
「金魚の記憶は数秒しかもたない」という話が広く知られていますが、これは俗説です。実験では、金魚の記憶が少なくとも数か月は続くことが確かめられています。餌の時間や、餌をくれる人の姿を覚え、水槽の前に立つと寄ってくる金魚もいます。色や形、音を区別する学習も可能だと報告されています。小さな体ながら、金魚は見た目以上に物覚えのよい魚だといえます。
同じコイ科の仲間で、色あざやかな錦鯉で知られるコイについては、こちらで。
関連ページ

参考
- Wikipedia「Goldfish」(分類・家畜化の歴史・大きさ・寿命・記憶・体色)https://en.wikipedia.org/wiki/Goldfish
- 大和郡山市「金魚の歴史」(渡来=文亀2年・三大産地・品種の由来)https://www.city.yamatokoriyama.lg.jp/soshiki/nogyosuisanka/kingyo/1/1912.html
- サカナト「金魚すくいのキンギョはどこ出身?〈金魚養殖の歴史〉と〈三大金魚産地〉」(産地・小赤)https://sakanato.jp/8774/
画像出典
- アイキャッチ(更紗の金魚):James St. John, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons(Carassius auratus auratus (goldfish))
- 池の金魚:Юкатан, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(Carassius auratus in the pond in Rabin square.jpg)
- 丸手の金魚:Raul654, CC BY-SA 3.0 / GFDL, via Wikimedia Commons(Goldfish.jpg)
- 黒出目金:IssamBarhoumi, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Carassius auratus black telescope.jpg)
- 白い金魚:Ry362, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(Common Goldfish White.jpg)
- 金魚市場:Stevenliuyi, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Hong Kong Goldfish Market.jpg)


