カッコウは、初夏に日本へやってくる渡り鳥です。オスの「カッコウ」という鳴き声でおなじみの鳥で、灰色の姿はハイタカにも似ています。自分では巣を作らず、ほかの鳥の巣に卵を産んで育てさせる「托卵(たくらん)」という変わった繁殖をします。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:カッコウ目 Cuculiformes
- 科:カッコウ科 Cuculidae
- 属:カッコウ属 Cuculus
- 種:カッコウ Cuculus canorus
和名・英名
- 和名:カッコウ(郭公)
- 英名:Common cuckoo
別名・名前の由来
和名の「カッコウ」も英名の cuckoo も、オスの鳴き声をそのまま写した名前です。漢字では「郭公」と書きます。同じ鳴き声にちなむ名前は世界の多くの言葉に見られ、時計の「鳩時計(はとどけい)」も、もとはカッコウの声で時を知らせる仕組みから生まれました。カッコウには「閑古鳥(かんこどり)」という別名もあり、客の来ない寂しい様子を「閑古鳥が鳴く」と言い表します。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約32〜34cm(ハトよりやや小さい) |
|---|---|
| 分布 | ユーラシア大陸に広く繁殖。日本へは夏鳥として渡来。冬はアフリカや東南アジアで越冬 |
| 生息環境 | 草原・林・河原・農地など、開けた土地 |
| 食べ物 | おもに昆虫。とくに毛虫(毛の生えた幼虫)を好む |
| 繁殖 | 托卵(自分で子育てをしない) |
| 保全状況 | IUCN:LC(軽度懸念)。ただし数は減少傾向とされる |
※ 夏鳥(なつどり)とは、春から夏に日本へ渡ってきて繁殖し、秋に南へ帰る渡り鳥のことです。

他の鳥に子育てさせる「托卵」
カッコウで目を引くのは、自分で子育てをしない点です。ほかの鳥の巣に卵を産みこみ、その巣の親に、自分の子を育てさせます。これを「托卵」といいます。カッコウは、世界でもよく知られた托卵の鳥の一つです。
卵をあずける
巣にこっそり産む
メスは、宿主となる鳥が巣を離れた隙を狙います。数秒のうちに自分の卵を1個産み、かわりに宿主の卵を1個くわえて持ち去ります。日本では、オオヨシキリ・モズ・ホオジロ・オナガなどが宿主になります。1羽のメスは1シーズンに、あちこちの巣へ十数個の卵をあずけるとされています。
宿主の卵にそっくり似せる
カッコウの卵は、宿主の卵の色や模様によく似ています。宿主に見つかって捨てられるのを防ぐための仕組みです。カッコウのメスには、特定の宿主だけを狙う系統があり、その宿主の卵に似た卵を産みます。オオヨシキリを狙う系統はオオヨシキリの卵に、モズを狙う系統はモズの卵に似せる、という具合です。

ヒナがひとりじめする
生まれてすぐ、ほかの卵を落とす
カッコウの卵は、宿主の卵より早くかえります。生まれたばかりのヒナは、まだ目も開かないうちに、背中を使って巣の中のほかの卵やヒナを外へ押し出します。宿主の子は、こうして巣から落とされてしまいます。この行動は教わったものではなく、生まれつき備わったものです。数日のうちに、巣の中はカッコウのヒナ一羽だけになります。
育ての親より大きく育つ
巣にただ一羽残ったカッコウのヒナは、宿主の親から餌を独りじめします。やがて、育ての親よりもずっと大きく育ちます。自分の何倍もある大きなヒナに、小さな宿主が餌を運ぶ姿。托卵をよく表す光景です。巣立ったあとも、若鳥はしばらく育ての親から餌をもらって過ごします。

宿主とのせめぎ合い
見破る宿主、似せるカッコウ
托卵をされる側の鳥も、ただやられているわけではありません。カッコウに何度も狙われる地域の宿主は、自分の卵と違う卵を見分けて、捨てるようになるとされます。見破られたカッコウの卵は、巣の外に捨てられたり、巣ごと放棄されたりします。するとカッコウの側は、より宿主に似た卵を産むように変わっていきます。長い時間をかけて、托卵する側とされる側が、互いに能力を高め合ってきたと考えられています。
ハイタカに似た姿
カッコウの灰色の体と、胸の横じまは、小鳥をおそうタカのハイタカによく似ています。カッコウが巣に近づくと、宿主はタカが来たと勘違いして巣を離れることがあります。この隙に卵を産むのに役立つ、という見方があります。ただし、この効果には慎重な意見もあり、はっきり決着してはいません。
毛虫を食べる
毒のある毛虫も食べる
毒を抜いて食べる工夫
カッコウの主な食べ物は、昆虫やその幼虫です。とくに、毛の生えた毛虫を好んで食べます。毛虫は毛や毒を持つものが多く、ほかの鳥はあまり食べません。カッコウは、毛虫をくちばしでしごき、中身の毒のある部分を振るい落としてから飲みこむとされています。ほかの鳥が手を出しにくい餌を利用できることが、カッコウの強みになっています。大発生した毛虫を数多く食べるため、森の害虫を減らす役目も果たします。

夏に日本へ来る渡り鳥
カッコウは、春から初夏にかけて日本へ渡ってきます。繁殖を終えると、秋にはアフリカや東南アジアへ帰っていきます。一年のうち、日本で過ごすのは数か月ほどです。
たった一羽で渡る若鳥
親に会わずにアフリカへ
カッコウの若鳥は、育ての親のもとを離れたあと、たった一羽で長い渡りに出ます。托卵で育つため、若鳥は本当の親に一度も会いません。誰にも道を教わらないまま、種ごとに決まった遠い越冬地へたどり着きます。近年の追跡調査では、日本やヨーロッパからアフリカまで、数千kmを飛ぶことがわかってきました。渡りに必要な知識は、生まれつき備わっていると考えられています。
カッコウの声と近縁の仲間
オスの「カッコウ」という声
「カッコウ」と鳴くのはオスで、メスをよぶための声です。よく通る声で、遠くまで届きます。この声が聞こえると初夏の訪れを感じる人も多く、古くから季節の音として親しまれてきました。メスが出すのは、オスとは別の「ピピピ」という早口の声です。
托卵する近縁の仲間
日本には、カッコウによく似た托卵の鳥がほかにもいます。姿はどれもよく似ていますが、鳴き声で聞き分けられます。いずれもカッコウ科に属し、同じ托卵の習性を持つ仲間です。
| カッコウ | 「カッコウ」と鳴く。托卵する |
|---|---|
| ツツドリ | 「ポポ、ポポ」と筒をたたくような声。托卵する |
| ホトトギス | 「トッキョキョカキョク」と聞きなされる声。托卵する |
| ジュウイチ | 「ジュウイチ」と聞こえる声。托卵する |
姿を見分けるのは難しいものの、鳴き声は種ごとに異なります。姿が見えなくても、声だけで種を知ることができます。
人との関わりと保全
カッコウの声は、古くから初夏の訪れを告げる音として親しまれてきました。俳句では夏の季語になり、時計の「鳩時計」にもその名残が見られます。IUCNのレッドリストでは軽度懸念(LC)とされていますが、数は各地で減少傾向にあるとされます。宿主となる小鳥や、餌となる昆虫が減ることは、托卵で暮らすカッコウにも影響します。
参考
- IUCN Red List: Cuculus canorus(Common Cuckoo)評価ページ
- Davies, N. B., Cuckoos, Cowbirds and Other Cheats(托卵の生態に関する専門書)
- Animal Diversity Web(ミシガン大学): Cuculus canorus の解説


