ハクチョウは、真っ白な羽と長い首をもつ、大きな水鳥です。日本では、冬になると北の国から群れで渡ってきます。湖や川、田んぼの水辺で過ごします。優雅に水面をすべる姿は古くから親しまれ、絵や物語、バレエにも登場します。その一方で、大きな体で力強く飛ぶ、たくましい渡り鳥。優雅さと力強さをあわせもちます。
ひとくちにハクチョウといっても、日本で見られるものは何種類かに分かれます。見分けるいちばんの手がかりは、くちばしの色ともようです。はるばる渡ってくる暮らしや種類の見分け方、灰色のひなのこと、家族で群れる生態までを順に見ていきます。
分類と学名
分類階層
ハクチョウは、カモ目カモ科ハクチョウ属に入る鳥の総称です。カモやガンと同じ科の仲間で、その中でもとくに体の大きなグループにあたります。日本には、オオハクチョウとコハクチョウが冬鳥として渡ってきます。このほかに、外国から持ちこまれたコブハクチョウが、各地の水辺に住みついています。
- 目:カモ目
- 科:カモ科
- 属:ハクチョウ属(Cygnus)
- おもな種類:オオハクチョウ・コハクチョウ・コブハクチョウ など
名前の由来
「ハクチョウ」は、漢字で「白鳥」と書き、その名のとおり白い鳥という意味です。古くは「くぐい」とも呼ばれていました。英語では「スワン」といい、種類の名前にも使われています。真っ白な姿がそのまま名前になった、分かりやすい呼び名です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約120〜150cm/翼を広げると2mをこえる |
|---|---|
| 分布 | 北半球に広く分布。日本へは冬鳥として渡来 |
| 生息環境 | 湖・池・川・海辺の入り江・田んぼなど |
| 食べ物 | 水草・草の根・落ち穂や芽など(おもに植物食) |
| 渡り | シベリアなど北の国で繁殖し、冬に日本へ渡る(オオ・コ) |
| 見分け | くちばしの黄色と黒の入り方、こぶの有無 |
シベリアからの渡り
日本で見られるオオハクチョウとコハクチョウは、渡り鳥です。夏のあいだはシベリアなど北の国で子を育て、寒くなると南へ下って日本で冬を越します。その道のりは、数千キロにもおよぶほどです。渡りの時期には、鳴き声とともに列をなして空を行くハクチョウが見られます。

冬を日本で過ごす
家族で渡る
ハクチョウの渡りは、家族そろって行われます。その年に生まれた子は、親といっしょに長い旅をして、越冬地までの道のりを覚えます。空を飛ぶときは、何羽もが斜めに連なる形をつくり、先頭を交代しながら進みます。こうして力を合わせ、遠い距離を渡りきる旅です。
同じ場所に帰ってくる
ハクチョウは、毎年ほぼ同じ場所へ帰ってくることで知られます。前の冬に過ごした湖や川に、また戻ってきます。親から越冬地を教わった子が、次の年もその場所を目ざします。各地の渡来地でハクチョウが名物になっているのは、この習性のおかげです。
くちばしで見分ける種類
白くて大きいハクチョウは、遠目にはどれも同じに見えます。けれども、くちばしの色ともようを見れば、種類を見分けられます。黄色と黒の入り方や、こぶのあるなしが決め手です。
渡ってくる2種
大きなオオハクチョウ
オオハクチョウは、その名のとおり大きなハクチョウです。くちばしのつけ根に広がる黄色が大きく、先のほうへとがって伸びているのが特徴です。世界でもっとも重い部類の飛ぶ鳥のひとつに数えられます。大きくよく響く声で鳴くことから、鳴くハクチョウとしても知られます。冬の水辺にひびくその声は、ハクチョウが渡ってきた合図として親しまれています。
小さなコハクチョウ
コハクチョウは、オオハクチョウよりひとまわり小さなハクチョウです。くちばしの黄色は小さくて丸みがあり、黒い部分が多く見えます。この黄色のもようは一羽ごとにわずかに違い、研究者が個体を見分ける手がかりにするほどです。日本にはオオハクチョウとともに、冬鳥として渡ってきます。

こぶのあるコブハクチョウ
コブハクチョウは、くちばしが橙色で、そのつけ根に黒いこぶがあるのが目印です。この「こぶ」が名前のもとになりました。もともと日本にいた鳥ではなく、外国から持ちこまれたものが、公園の池などに住みついています。渡りをせず、一年を通して同じ場所で暮らすものが多い種類です。英語では「鳴かない白鳥」という意味の名で呼ばれ、オオハクチョウのようには大きく鳴きません。

灰色のひな
みにくいアヒルの子
生まれたときは灰色
ハクチョウのひなは、真っ白ではありません。生まれたばかりのひなは、灰色や茶色がかった、くすんだ色の羽におおわれています。この地味な姿から、アンデルセンの童話「みにくいアヒルの子」が生まれました。まわりと見た目が違う子が、本当は立派なハクチョウだった、というお話です。

白くなるまで親と過ごす
灰色のひなは、育つにつれて少しずつ白い羽に変わっていきます。真っ白な大人の姿になるまでには、一年ほど。羽の色が変わるにつれ、体つきも少しずつ大人へ近づきます。それまでのあいだ、子は親のそばを離れず、いっしょに冬を越します。渡りの旅も、初めの年は親に連れられて経験します。
家族と群れ
生涯つれそう
ハクチョウは、家族のきずなが強い鳥です。オスとメスは一度つがいになると、長い年月をともに過ごすことが多いといわれます。子育ては、両親そろっての共同作業です。冬の水辺では、こうした家族がいくつも集まり、大きな群れをつくって過ごします。群れの中では、たがいに鳴きかわして仲間の位置を確かめます。危険を感じると、いっせいに飛び立って身を守ります。

大きな体と暮らし
水草を食べる
ハクチョウは、水鳥のなかでもとくに体の大きな鳥です。長い首を水中に深くのばし、底に生えた水草や草の根を食べます。冬には、田んぼに落ちた稲の穂や、芽を食べにやってくることもあります。一日の多くを、水辺で餌をとって過ごす鳥です。
力強く飛ぶ鳥
優雅に見えるハクチョウですが、巣や子を守るときには、大きな翼を広げて相手を追いはらう強さもあります。あれほど大きな体で飛び立つには、水面を長く助走して勢いをつけなければなりません。いったん空へ上がれば、長い首をまっすぐ前にのばし、力強くはばたいて遠くまで渡ります。北の国では水辺に巣を作り、卵を産んでひなを育て、秋に南をめざします。
白鳥にまつわる文化
白く優雅なハクチョウは、昔から人の心をひきつけ、さまざまな物語や作品に描かれてきました。チャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」は、その代表です。夜空には、翼を広げたハクチョウの姿にたとえられた「はくちょう座」もあります。前に述べた「みにくいアヒルの子」もあわせて、ハクチョウは美しさや成長の象徴として親しまれています。日本各地には、ハクチョウにちなんだ地名や祭りも残っています。
どこで会えるか
ハクチョウに会えるのは、おもに冬です。北海道や東北をはじめ、各地の湖や川、田んぼの水辺に渡ってきます。よく知られた渡来地には、たくさんのハクチョウが集まり、冬の風物詩になっています。こうした渡来地のいくつかは、天然記念物に指定されています。早朝や夕方には、餌場と休み場のあいだを行き来する群れの声がひびきます。白い大きな鳥が群れで水に浮かんでいれば、渡ってきたハクチョウであることが多いようです。
参考
- Wikipedia「ハクチョウ」「オオハクチョウ」「コハクチョウ」「Whooper swan」
- Encyclopædia Britannica「Swan」
- 環境省・各地の渡来地資料、IUCN Red List ほか


