イチゴヤドクガエルは、中央アメリカの熱帯雨林にすむ、体長2cmほどの小さなヤドクガエルです。真っ赤な体に青い脚という、まるでイチゴのような色から名づけられました。皮膚には食べもの由来の毒を持ち、そのあざやかな色は「危険だぞ」という警告です。さらに、お母さんが自分の産んだ卵を赤ちゃんに食べさせて育てるという、おどろきの子育てでも知られています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:両生綱 Amphibia
- 目:無尾目 Anura
- 科:ヤドクガエル科 Dendrobatidae
- 属:オオファーガ属 Oophaga(旧ヤドクガエル属 Dendrobates)
- 種:イチゴヤドクガエル Oophaga pumilio
和名・英名
- 和名:イチゴヤドクガエル(苺矢毒蛙)
- 英名:Strawberry poison-dart frog/Blue jeans frog
別名・学名の由来
和名の「イチゴ」は、真っ赤な体の色からきています。種小名の pumilio は「小さい」という意味で、その名のとおりの小さなカエルです。属名の Oophaga(オオファーガ)は「卵を食べるもの」という意味で、あとで紹介する変わった子育てにちなみます。また、青い脚がジーンズをはいているように見えることから、英語では「ブルージーン(Blue jeans)」とも呼ばれています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 2〜2.5cm(ヤドクガエルのなかでも小型) |
|---|---|
| 分布 | 中央アメリカ(コスタリカ・ニカラグア・パナマ西部) |
| 生息環境 | 熱帯雨林の地表(地上性) |
| 食べもの | 小さな昆虫やダニなど(肉食) |
| 毒 | プミリオトキシン(食べもの由来。あざやかな色は警告色) |
| 別名 | ブルージーン |
見た目
赤い体に青い脚「ブルージーン」
いちばん有名なのは、胴体が真っ赤で、四肢が暗い青色をしたタイプです。この姿が、ちょうど赤いシャツに青いジーンズをはいたように見えることから、「ブルージーン」と呼ばれます。体はとても小さく、大人でも2cmほど。手のひらにちょこんとのるサイズです。この目立つ色は、鳥などの敵に「自分は毒を持っているぞ」と知らせる警告色になっています。
色は場所によってさまざま

じつはイチゴヤドクガエルは、すむ場所によって体の色が大きく違うことで有名です。赤いタイプのほかに、黄色・緑・青・ほとんど黒に近いものまで、さまざまな色のタイプ(モルフ)が知られています。とくにパナマのボカス・デル・トロ諸島では、島や地域ごとに色が違い、その数はとても多いといわれます。あまりに色が違うため、昔は別の種として名前がつけられたこともあったほどです。せまい範囲でこれほど多くの色が生まれたのはなぜなのか、進化のなぞとして、研究者からも注目されているカエルです。
暮らしと生態
熱帯雨林の地面で暮らす

イチゴヤドクガエルは、熱帯雨林の地面や落ち葉の上で暮らす地上性のカエルです。昼間に活動し、小さな昆虫やダニなどを食べます。オスはなわばりを持ち、自分の場所を守ります。「ジー」という虫の音のような声でなわばりを主張し、近づいてくるほかのオスとは、レスリングのように取っ組み合ってあらそうこともあります。あざやかな色で「毒を持っている」と知らせているため、こそこそ隠れる必要がなく、明るい昼間に堂々と歩きまわれるのです。
卵を食べさせる子育て
オタマジャクシを背中で運ぶ
イチゴヤドクガエルは、落ち葉の下などに卵を産みます。卵からオタマジャクシがかえると、お母さんガエルは、そのオタマジャクシを自分の背中に乗せます。そして木を登り、植物の葉のつけ根にたまった、小さな水たまりまで運んでいきます。1匹ずつ、別々の水たまりに置いていくこともあります。小さな体で、赤ちゃんを一匹ずつ運ぶ、大変な作業です。
お母さんの「卵ミルク」
葉の水たまりは小さく、オタマジャクシの餌になるものがほとんどありません。そこでお母さんガエルは、ときどき水たまりをまわって、卵を産みつけます。この卵は、赤ちゃんになる卵ではなく、オタマジャクシに食べさせるための「栄養の卵(無精卵)」です。オタマジャクシは、この卵だけを食べて育ちます。属名の Oophaga(卵を食べるもの)は、この子育てに由来しているのです。
毒は食べもの由来
イチゴヤドクガエルの毒は、自分の体で作るものではありません。餌にする小さなダニやアリなどにふくまれる成分を、体にため込んで武器にしています。実際、この毒のもとが森のダニにあることは、日本の研究者によってつきとめられました。そのため、毒のもとになる虫がいない環境で育った飼育下の個体は、毒がほとんどなくなります。これは、コバルトヤドクガエルなどヤドクガエルの仲間に共通する大きな特徴です。
ペットとしても飼われる
色あざやかで小さなイチゴヤドクガエルは、ペットとして人気があり、日本にも輸入されています。両生類の展示に力を入れた一部の動物園や水族館でも、その姿を見ることができます。ただし、卵を食べさせる特殊な子育てのため、飼育下でふやすのはとても難しいカエルです。そのため出回る個体には、野生からつかまえられたものも多くいます。これらは毒が強いので、さわるときは手袋をするなどの注意が必要です。オスはなわばり意識が強いため、ふつうは1匹か、ペアで飼います。
意外な豆知識
毒ガエルなのに、子には毒がない
親のイチゴヤドクガエルは強い毒を持っていますが、卵からかえったばかりのオタマジャクシには、まだ毒がありません。毒は、大きくなって毒のあるダニなどを食べるうちに、少しずつたまっていくものだからです。あざやかな色と強い毒で有名なヤドクガエルも、生まれたときは無毒の赤ちゃん。毒は、育つ環境が作り上げていくものなのです。


島ごとに色が違う「モルフ」の宝庫
パナマの島々で15種類以上の色型が観察される
イチゴヤドクガエル(Oophaga pumilio)は、同じ1つの種のなかに、驚くほど多くの色や模様のちがい(モルフ)を持つことで知られます。とくに有名なのがパナマ北岸のボカス・デル・トロ諸島で、島や地域ごとに体色がまるで別種のように違い、赤地に黒の斑点、全身青、全身緑、黄色に黒模様、青と赤のツートン、白地に黒点など、15種類以上のモルフが記録されています。これほど狭い地域で1種内に色の変異が集中する例は両生類ではまれで、進化生物学の格好の研究対象になっています。
色の違いはメス選好と警告色のせめぎ合い
これほど多様な色柄が生まれた理由として、島ごとに孤立した集団のなかで、メスが「自分の集団と同じ色のオス」を好む性選択が働き、それぞれの色柄が急速に固定していったとする研究があります(Summers ら 2003年など)。同時に、色は捕食者に「食べると毒があるぞ」と伝える警告色でもあるため、その地域の捕食者が学習しやすい色に集約されるという別方向の圧力も加わり、両者のバランスで多様な色型が保たれていると考えられています。イチゴヤドクガエルはこの「モルフ多型」の代表例として、教科書にも取り上げられる種です。
参考
- IUCN Red List:Oophaga pumilio の評価(保全状況・分布)
- Wikipedia(日本語版)「イチゴヤドクガエル」(形態・色変異・毒・エッグフィーダー)
- AmphibiaWeb/Amphibian Species of the World(AMNH):Oophaga pumilio の解説
画像出典
サムネイル画像: Hans Hillewaert, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


