キンメペンギンは、頭からふさふさと長くのびる、金色の冠羽(かんむり羽)がトレードマークのペンギンです。冠羽ペンギンの仲間の中でも、その飾り羽はいちばん長く豪華。しかし今、その数は大きく減り、絶滅が心配されています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ペンギン目 Sphenisciformes
- 科:ペンギン科 Spheniscidae
- 属:マカロニペンギン属 Eudyptes
- 種:キンメペンギン Eudyptes moseleyi
和名・英名
- 和名:キンメペンギン(別名:キタイワトビペンギン)
- 英名:Northern rockhopper penguin(Moseley’s penguin / Tristan penguin)
名前の由来
和名の「キンメ」は「金目」、つまり金色の飾り羽と赤い目からきた呼び名です。もう一つの和名「キタイワトビペンギン」は、そのなかまと分布をよくあらわしています。学名の種小名「moseleyi(モーズリー)」は、1870年代に世界の海を調べたチャレンジャー号の探検に同行した、博物学者ヘンリー・モーズリーにちなみます。英名でも「モーズリーペンギン」「トリスタンペンギン」と呼ばれることがあります。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約55cm・体重 約2.5〜3.4kg(小型) |
|---|---|
| 分布 | 大西洋・インド洋の亜熱帯〜亜南極の島々(固有的) |
| 生息環境 | 岩場の海岸・草地(タソック)の斜面・崖 |
| 食べ物 | オキアミ・イカ・タコ・小魚(海の中で捕る) |
| 寿命 | 野生でおよそ10年前後 |
| 保全状況 | IUCN:絶滅危惧(EN) |
いちばん長い金色の冠羽
ふさふさと垂れる豪華な冠羽
冠羽ペンギンでいちばん長い金色の羽
キンメペンギンの最大の特徴は、頭の横へ長く垂れさがる金色の冠羽です。イワトビペンギンの仲間の中でも、この飾り羽はとくに長く、ふさふさと豪華です。目は赤色で、くちばしはオレンジ色。体はイワトビペンギンよりもひとまわり大きめです。

冠羽は求愛のアピールにも
この長くて目立つ冠羽は、繁殖のときに相手へアピールする飾りとしても役立っています。ちなみに、映画「サーフズ・アップ」の主人公コーディも、このキンメペンギンがモデルになっています。
「キガシラペンギン」とは違う鳥
名前がよく似た「キガシラペンギン」という別のペンギンがいますが、まったく違う鳥です。キガシラペンギンはニュージーランドにすむ、冠羽をもたない大きめのペンギン(別の属)です。いっぽうキンメペンギンは、頭に長い冠羽をもつイワトビペンギンの仲間です。名前が似ていて混同されやすいので、注意が必要です。キンメペンギンはもともとイワトビペンギンの一種として扱われていましたが、鳴き声や冠羽・遺伝子の違いから、今では別の種とされています。
世界でもっとも遠い島にすむ
キンメペンギンが暮らすのは、大西洋やインド洋にうかぶ、いくつかの小さな島だけです。じつはその9割以上が、南大西洋のトリスタンダクーニャ島とゴフ島という、地球上でもっとも人里からはなれた島々で繁殖します。ほかに、インド洋のアムステルダム島やセントポール島にもコロニー(集団繁殖地)があります。トリスタンダクーニャ島は、いちばん近い大陸から2000km以上もはなれた、世界でもっとも孤立した有人島として知られています。そんな遠い島々の岩場の海岸から、タソックと呼ばれる背の高い草がしげる斜面まで、キンメペンギンはさまざまな場所に巣をつくります。

90%も減ってしまった絶滅危惧種
1950年代から90%の激減
キンメペンギンは今、絶滅がとても心配されているペンギンです。ある研究によると、その数は1950年代からおよそ90%も減ってしまいました。かつて数百万羽がすんでいたゴフ島でも、大きく数を減らしています。1950年代には約200万羽いたとされますが、2000年代には数万羽にまで落ちこみました。これは、1950年代から毎日100羽ずつ失われ続けた計算になるといわれています。そのためIUCNレッドリストでは「絶滅危惧(EN)」に指定されています。
減少の原因と、島ぐるみの保護
減少の原因には、地球温暖化による海の変化・イカやタコのとりすぎ・人が持ちこんだネズミが卵やヒナを食べてしまうことなどが考えられています。2011年には、島の近くで貨物船が座礁して重油が流れ出し、多くのペンギンが油まみれになる事故も起こりました。こうした外来のネズミを取りのぞく取り組みも計画されるなど、島ぐるみでの保護が進められています。

食べものと子育て
食べものと採餌
キンメペンギンの食べものは、オキアミやエビなどの甲殻類・イカ・タコ・小魚です。ほかの冠羽ペンギンと同じように、海にもぐってこれらのえものをすばやく捕まえます。
子を第一に考えた子育て
繁殖は春の終わりから夏の初めにかけて行われ、岩場や崖・草地のあいだにコロニーをつくります。おもしろいことに、親は自分が食べるものよりも、栄養をたくわえやすい小さなえもの(動物プランクトンなど)を選んでヒナにあたえることが知られています。子どもの成長を第一に考えた、賢い子育てだと考えられています。ヒナはある程度大きくなると、ほかのヒナと集まった「クレイシュ」という群れをつくり、身を守りながら育ちます。数がへった今、この小さな島々での子育てが無事に続くことが、種を守るうえでとても大切になっています。



参考
- IUCN Red List: Eudyptes moseleyi(絶滅危惧EN・1950年代から約90%減)
- BirdLife International Species factsheet: Eudyptes moseleyi(EN判定の根拠・成熟個体の継続的減少・分布と生息地が単一のまとまりに集中・脅威)
- Wikipedia「Northern rockhopper penguin」英語版(分布=トリスタン/ゴフ島に99%/イワトビ3種で最も長い冠羽・最大/2011年MSオリバ号の油流出/外来ネズミ・オットセイの脅威/サーフズ・アップのコーディ)
画像出典
アイキャッチ画像: Antoine Lamielle, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


