コサギ

水鳥類

コサギは、日本の水辺でよく見かける小型の白いサギです。全身が真っ白で、黒い脚に対して足指だけが鮮やかな黄色をしているのが最大の特徴で、ダイサギ・チュウサギとの見分けの決め手になります。繁殖期の夏羽では頭に2本の細長い冠羽が現れ、背には先が巻き上がる飾り羽が伸びます。田んぼや川辺で翼を上げて走り、魚を追い出す独特の狩り方でも知られる鳥です。19世紀にはその飾り羽が帽子装飾用に大量狩猟された歴史から、英国王立鳥類保護協会(RSPB)の設立にもつながりました。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:ペリカン目 Pelecaniformes
  • 科:サギ科 Ardeidae
  • 属:コサギ属 Egretta
  • 種:コサギ Egretta garzetta(Linnaeus, 1766)

和名・英名

  • 和名:コサギ(小鷺)
  • 英名:Little egret
  • 亜種:E. g. garzetta(基亜種/日本を含むアジア・アフリカ・ヨーロッパ)ほか2亜種

名前の由来

和名の「コサギ」は文字通り「小さいサギ」の意味で、ダイサギ・チュウサギよりも小さい体格にちなむ命名です。英名の Little egret も同じ発想で、egret はフランス語 aigrette(飾り羽)を語源とする、飾り羽を持つ白いサギの総称です。学名の種小名 garzetta はイタリア語で「小さなサギ」を意味する語で、ヨーロッパでの呼び名がそのまま学名に採用された珍しい例のひとつです。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約55〜65cm/翼開長 88〜106cm/体重 約350〜550g
分布ユーラシア・アフリカ・オーストラリアの温帯〜熱帯。日本では本州〜九州で繁殖し、留鳥として通年見られる地域も多い
生息環境河川・湖沼・水田・干潟・海岸のマングローブ林や砂浜・岩礁など、開けた浅い水辺を好みます
寿命野生では平均5年程度、環境が良ければ10年以上生きた記録があります
保全状況IUCN:LC(低危険種)/世界的には分布拡大中で、20世紀後半以降イギリスにも再定着

姿と体のつくり

コサギの顔と冠羽
Laitche, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

真っ白な羽と黄色い足指

黒い脚と黄色い足指の対比

成鳥は羽が全体的に真っ白で、細長い嘴と長い脚は黒色です。もっとも目を引くのが、長い黒脚の先で鮮やかな黄色に染まる足指で、水面を歩いている姿を後ろから見るとまるで「黄色い靴下」を履いているように見えます。虹彩は黄色で、眼の周りは水色に縁取られ、下嘴の付け根と眼先は緑がかった灰色の皮膚が露出します。

冠羽と巻き上がる飾り羽

繁殖期の夏羽では、後頭部から2本の細長い冠羽(かんう)が伸びます。冠羽は約150mmで先の尖った細身のリボン状で、胸と肩にも200mmほどの飾り羽が広がります。とくに肩の飾り羽は先端が上に巻き上がる形になり、これはダイサギやチュウサギの飾り羽では見られない特徴で、種を見分ける重要な手がかりになります。冬羽になると冠羽は消え、肩の飾り羽も短くなって、見た目が地味になるのが特徴です。

暗色型と幼鳥

通常は全身真っ白ですが、青みがかった灰色の羽を持つ暗色型もごくまれに知られ、日本でも2013年に神奈川県川崎市の多摩川で観察例があります。幼鳥は非繁殖期の成鳥に似ますが、脚が緑がかった黒色で、足指の黄色もやや鈍い姿です。灰褐色の羽が一部に混じることもあります。

ダイサギ・チュウサギとの見分け方

砂地に立つコサギの全身
Christian Ferrer, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

大きさと嘴・足指で見分ける

3種の比較

コサギチュウサギダイサギ
全長55〜65cm65〜72cm85〜105cm
嘴の色年中 黒夏 黒/冬 黄夏 黒/冬 黄
足指年中 黄色
冠羽2本の長い冠羽なしなし
肩の飾り羽先が巻き上がるほぼ真っすぐほぼ真っすぐ

覚え方の目安

3種を並べると、コサギは体が小さく足指だけ黄色、というだけで大方の識別ができます。夏羽で冠羽と巻き上がる飾り羽が見えれば決定的です。ダイサギは首が非常に長く体格も大きく、チュウサギはその中間で、嘴の口角が眼のあたりで止まる(ダイサギは眼より後ろまで伸びる)点も見分けに使われます。

鳴き声も違う

3種は鳴き声にも差があります。コサギは邪魔されると「ギャウ」「ガァー」「ガォ」と大きめの威嚇声を出します。チュウサギは「ゴァー」・ダイサギは「ガァァァ」・アマサギは「カウ アウ」・クロサギは「ガッ」と鳴きます。姿が似ていても声の張り方や長さで区別できる場面が多く、慣れれば姿を確認する前に種の見当がつくとされます。

婚姻色 ―眼先の赤と桃色の足

コサギの繁殖期には、姿の細部に鮮やかな色変化が現れます。求愛の高まる時期には、眼先の露出した皮膚が緑がかった灰色から鮮やかな赤に変わり、通常は黄色い足指も赤や桃色に染まる個体が観察されています。この色変化は「婚姻色」と呼ばれ、繁殖行動の高まりを示す短期間の変化として鳥類全般で知られる現象です。数日〜数週間で元の色に戻ることが多く、観察者にとっては貴重な瞬間とされます。

浅瀬の狩り ―翼を上げて走る

浅瀬で水面を突くコサギ
Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

魚を追い出す独特の技

翼を広げて浅瀬を駆ける

コサギの狩りには、他のサギではあまり見られない独特の型があります。浅瀬で両翼をやや持ち上げて走り、水面下に隠れた魚を驚かせて飛び出させ、素早く嘴で捕らえる方法です。翼を上げることで自分の影を大きく見せ、獲物の反応を誘っているとも考えられており、他のサギがじっと待ち伏せするタイプとは対照的なアクティブな採餌スタイルです。

黄色い足指で泥を撫でる

もう一つの得意技が、前に踏み出す足を小刻みに震わせて泥や砂の中の生きものを飛び出させる方法です。黄色い足指を小さく揺すり、驚いて動いた獲物を上から捉える手順で、水底の甲殻類・エビ・貝・ゴカイなどを効率良く見つけ出します。ウが驚かせた魚や人が水面に投げたパンに寄ってきた小魚を横取りするような柔軟な採餌行動も観察されており、目についた餌のチャンスは逃さないタイプの鳥です。

幅広い食性

主食は小魚ですが、両生類・小型の爬虫類・鳥類の雛・小型哺乳類・甲殻類・貝類・昆虫・クモ・ミミズなど、身近な小動物のほとんどが獲物になります。牛など有蹄類の周りを歩き、家畜が起こす獲物や家畜に付いたダニまで食べる例も報告されており、身近な水辺と農地に強く適応した鳥です。

サギ山 ―混合コロニーの繁殖

飛翔するコサギ
Hobbyfotowiki, CC0, via Wikimedia Commons

他のサギと巣を並べる

コサギは集団繁殖の代表格で、他の水鳥と一緒に「サギ山」と呼ばれる大規模なコロニーを作ります。木や低木、ヨシ原や竹林に棒を組んで平らな巣を作り、日本ではダイサギ・チュウサギ・アオサギ・アマサギ・ゴイサギなどと同じ林で混合コロニーを作る光景が各地で観察されています。ヨーロッパではカンムリサギやゴイサギ、ブロンズトキと同じ場所に営巣します。

青緑色の卵と40〜45日の子育て

1回の産卵で3〜5個の淡青緑色の卵を産み、両親が21〜25日間交代で抱卵します。孵化した雛は白い綿羽に覆われ、両親から吐き戻しの餌をもらって育ちます。巣立ちまでは40〜45日で、その頃には親と同じような姿になり、独立して採餌を始めるとされています。早朝、サギ山から水辺へ隊列を組んで飛び立つ姿は各地で親しまれてきた春〜夏の情景です。

羽根装飾の乱獲とRSPB設立

ロンドンで年間200万羽の皮売買

19世紀のヨーロッパでは、女性用の帽子を飾る「エグレット・プルーム」の材料として、コサギの飾り羽が大量に求められました。1885年の3か月間だけでロンドンで75万羽ぶんの皮が売買され、1887年にはある業者一人で200万羽の皮を扱った記録が残ります。標本用に生きたまま羽をむしる「エグレット・ファーム」も一部で試みられました。実際には狩猟で得る量が圧倒的に多く、繁殖期の親鳥を大量に殺して雛を巣に残す形が続いた影響で、ヨーロッパの個体群は危機的な水準まで減少しました。

RSPB設立と20世紀の回復

この乱獲を背景に、1889年、羽根の輸入と使用に反対する女性たちが英国王立鳥類保護協会(RSPB)の前身組織を立ち上げました。RSPBは今日の世界最大の民間鳥類保護団体で、コサギを含むサギ類の飾り羽貿易反対キャンペーンがその原点にあります。1950年頃までに南ヨーロッパで保護法が導入され、コサギの個体数は徐々に回復しました。20世紀後半以降はイギリスやアイルランド、さらにカリブ海・北米にまで分布を広げつつあります。

日本の水辺で見かけるコサギ

大阪の慶沢園で佇むコサギ
Laitche, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

日本のコサギは本州以南で通年見られる留鳥で、水田・河川・都市部の池や公園でも観察できる身近な鳥です。庭園の池や街中の川で1羽で狩る姿がよく見られる一方、繁殖期には森林や竹林にサギ山を作って集団で子育てをします。冬羽の白い姿はダイサギやチュウサギに紛れがちですが、黒脚と黄色い足指のコントラストで見分けられる、身近な水辺の指標種のひとつです。

保全と分布拡大

IUCNレッドリストでは低危険種(LC)に指定されており、世界的な個体数は安定〜増加傾向にあります。分布域は20世紀後半から北方および西方へ拡大を続けており、1994年にはカリブ海のバルバドスで新世界初の繁殖が確認されました。国内では乱開発による水辺の減少や河川改修が営巣地の減少要因となる地域もありますが、都市の公園や河川敷を利用する柔軟さから、市街地でも根強く姿を保っている鳥です。

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参考

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