ボールパイソンは、危険を感じると体を丸めて「ボール」のようになるヘビです。アフリカに住むニシキヘビの仲間です。おとなしい性質と、色や模様の変わった品種(モルフ)の多さから、世界でもっとも人気のあるペットのヘビとして知られます。
分類と学名
ボールパイソンは、ニシキヘビ科に含まれる無毒のヘビです。同じニシキヘビ科には、世界最長級のアミメニシキヘビなどもいます。

分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:爬虫綱 Reptilia
- 目:有鱗目 Squamata
- 科:ニシキヘビ科 Pythonidae
- 属:ニシキヘビ属 Python
- 種:ボールパイソン Python regius
和名・英名
- 和名:ボールパイソン(ボールニシキヘビ)
- 英名:Ball python、Royal python
名前の由来
「ボール」は、身を守るときに体を丸めて球のようになる姿からきています。学名の regius は、ラテン語で「王の」という意味です。英語で Royal python(王のニシキヘビ)とも呼ばれるのは、この学名にちなみます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約1〜1.5m(大きいもので180cm近く。メスがやや大きい) |
|---|---|
| 体重 | 最大1.5kgほど |
| 分布 | 西アフリカから中央アフリカ |
| 生息環境 | 草原・サバンナ・まばらな林 |
| 食べ物 | ネズミなどの小動物・小鳥(無毒。締めつけて捕らえる) |
| 寿命 | 飼育下で15〜30年(最長記録62年) |
| 保全状況 | IUCN: NT(準絶滅危惧) |
「ボール」になるヘビ
ボールパイソンという名前は、その独特の身の守り方からきています。おとなしい性質とあわせて、この種を知るうえで欠かせない特徴です。

名前のとおり丸くなる
危険を感じると、ボールパイソンは頭を体の内側に入れ、全身を固く丸めます。この姿がボールのように見えることが、名前の由来です。かみついて反撃するよりも、丸まって身を守ることを選ぶ、おとなしい行動といえます。全長は1〜1.5mほどで、大人が両手を広げた幅に近い長さです。ヘビとしては中くらいの大きさで、太くしっかりした体つきをしています。
おとなしい性質
ボールパイソンは臆病で、めったに人にかみつきません。動きもゆっくりで、あばれることは多くありません。この扱いやすさが、ペットのヘビとして人気を集める理由の一つになっています。無毒であることも、飼いやすさにつながっています。体が大きくなく天敵も多いため、戦うよりも隠れて身を守る方へ進化したと考えられています。
アフリカでの暮らし
野生のボールパイソンは、西アフリカから中央アフリカの草原やサバンナに住んでいます。夜を中心に活動し、地面近くで獲物を狙います。
巣穴に潜む夜行性
ボールパイソンは夜行性で、朝と夕方にもよく動きます。昼間は、ネズミなどが掘った巣穴や、地面の下の隠れ場所で休みます。暑い日ざしや天敵を避けながら、涼しい時間帯に狩りへ出ます。雨の少ない乾季には、活動をひかえて過ごすことも知られています。
熱と匂いで獲物をさがす
ボールパイソンは、上くちびるのふちに「ピット器官」という熱を感じる部分をもっています。これで獲物の体温を感じ取り、暗い中でもネズミの居場所を知ることができるとされます。また、細く二またに分かれた舌をちらちらと出し、空気中の匂いを集めます。口の中には匂いを感じ取る特別な器官があり、舌で集めた匂いをここで調べて獲物や敵の気配を読み取ります。目のはたらきだけにたよらず、熱と匂いで暗やみの世界をとらえています。
締めつけて捕らえる
獲物は鳥から哺乳類へ
食べ物は成長とともに変わります。全長70cmほどまでの若いヘビは小鳥をよく食べ、1mを超える大きな個体はネズミなどの小型の哺乳類を主に狙います。オスは鳥を、メスは哺乳類を好む傾向も知られています。
巻きついて締める
ボールパイソンには毒がありません。獲物に巻きつき、体で締めつけて捕らえます。締めることで獲物の呼吸や血の流れを止め、動きを封じます。仕留めた獲物は、大きな口を開けて丸のみにします。下あごの骨は左右に分かれて大きく広がるため、頭より太い獲物ものみこめます。じっくり時間をかけて消化し、大きな獲物を食べたあとは、数日ほとんど動かない状態です。
脱皮しながら育つ
ヘビは、体の表面を包む古い皮を成長にあわせて脱ぎ捨てます。これが脱皮です。ボールパイソンも定期的に脱皮し、脱皮が近づくと目が青白く濁って見えます。古い皮は頭から尾へ向けて、ひとつながりのままめくれていきます。
卵をとぐろで抱く
3〜11個の卵
ボールパイソンは卵で増える卵生です。一度に産む卵は3〜11個ほどで、皮のような丈夫な殻に包まれています。卵は55〜60日ほどでかえります。
メスが卵を守る
メスは産んだ卵にとぐろを巻きつけ、体でくるむようにして守ります。こうして卵を乾燥や天敵から守り、体を細かくふるわせて温めることもあります。卵がかえるには30℃前後の温かさが必要とされ、メスは体を巻きつけて温度を保つとされます。ヘビの多くは産んだ卵を放っておきますが、ニシキヘビの仲間には卵の世話をするものがいます。
世界一人気のペットヘビ
ボールパイソンは、ペットのヘビとしてもっとも多く飼われている種です。爬虫類全体でも、フトアゴヒゲトカゲに次ぐ人気とされます。

数千を超えるモルフ
色と模様の変異
飼育のなかで、体の色や模様の変わった個体が数多く生み出されてきました。こうした品種は「モルフ」と呼ばれ、その数は7500種類を超えるといわれます。白いアルビノや、明るい色のもの・模様の少ないものなど、見た目はさまざまです。この多彩さが、人気を支える大きな理由になっています。値段はモルフによって大きく変わり、ふつうの色の個体は数千円ほど、珍しいモルフには数十万円以上の値がつくこともあります。
見た目を優先する繁殖の問題
珍しい見た目を求める繁殖には、健康上の問題もついてまわります。「スパイダー」と呼ばれるモルフには、頭が震えてうまく動けなくなる症状が出ることが知られています。これは内耳の異常によるものとされ、動物福祉の面から、販売を制限する動きも出ています。
飼育と餌
飼育下では、冷凍したネズミなどを解凍して与えられます。餌のペースは数日から一週間に一度ほどで、哺乳類などに比べて食事の回数は多くありません。夜行性のため、日中はあまり動かず、シェルターに隠れて過ごします。適した温度と湿度を保てるかどうかが、飼育下での健康に関わるとされます。ボールパイソンは、餌を長い間食べない「拒食(きょしょく)」をすることでも知られます。数週間から数か月食べないこともありますが、季節や繁殖期などが関わるとされ、必ずしも病気とは限りません。寿命は15〜30年と長く、長い付き合いになる動物です。
保全と人とのかかわり
ペットとして親しまれる一方で、野生のボールパイソンは数を減らしています。人との関わりの歴史も、地域によってさまざまです。
減りゆく野生の個体
IUCNのレッドリストでは、準絶滅危惧(NT)に分類されています。ペットとして輸出するための乱獲や、皮や肉を目的とした捕獲が、数を減らす原因とされます。畑を広げることによる生息地の減少も、脅威の一つです。国際的な取引を管理するワシントン条約でも、取引に注意が必要な種として扱われています。
大切にされてきた地域
原産地のアフリカでは、ボールパイソンを大切に扱う文化もあります。ナイジェリアのイボの人々の間では、大地の象徴として敬われ、誤って死なせたときに小さな棺をつくって弔う村もあるといわれます。ガーナにも、昔ヘビに助けられたという言い伝えから、ボールパイソンを守ってきた地域があります。人とヘビの関わりは、地域ごとに異なる歴史をもっています。
参考
- Ball python(en.wikipedia.org)分類・大きさ・食性・繁殖・モルフ・文化
- IUCN Red List「Python regius」保全状況(準絶滅危惧)と脅威
- Reptile Database「Python regius」学名・分布
画像出典
- アイキャッチ:Sandro De Sousa, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons(Python Regius)
- 丸まった姿:HCA, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(Ball python)
- モルフの写真:Tris T7, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Ball Python by Trisorn Triboon)


