アカギツネは、北半球に広く分布する、イヌ科のキツネです。日本に住むのは、この種の二つの亜種です。北海道のキタキツネと、本州から九州のホンドギツネがそれにあたります。赤茶色の毛とふさふさの尾が目印で、ネズミから木の実まで幅広く食べます。北海道では、エキノコックスという寄生虫の宿主としても知られています。
分類と学名
アカギツネは、哺乳綱の食肉目のなかの、イヌ科キツネ属に含まれる動物です。学名は Vulpes vulpes といいます。イヌやオオカミと同じイヌ科の仲間で、キツネ属の代表的な種です。世界のキツネの仲間のなかでも、もっとも広い範囲に分布しています。
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:食肉目 Carnivora
- 科:イヌ科 Canidae
- 種:アカギツネ Vulpes vulpes
和名・英名
- 和名:アカギツネ(赤狐)
- 英名:Red fox
名前の由来
「アカギツネ」の名は、体をおおう赤茶色の毛にちなみます。英名の Red fox も、「赤いキツネ」という意味です。学名の Vulpes は、ラテン語で「キツネ」を指す言葉です。同じ種類を、色から名づけたのが、この和名と英名です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 頭胴長60〜75cm、尾は30〜45cmほど |
|---|---|
| 分布 | ユーラシア・北米・北アフリカ(北半球に広く) |
| 生息環境 | 森・草原・農地・市街地の周りまで |
| 食べ物 | ネズミ・鳥・昆虫・果実・木の実など(雑食) |
| 寿命 | 野生でおよそ3〜4年(飼育下はより長い) |
| 日本の亜種 | キタキツネ(北海道)・ホンドギツネ(本州以南) |
世界一広く分布するキツネ
アカギツネは、キツネの仲間のなかで、いちばん広い範囲に住んでいます。寒い地方から人里の近くまで、さまざまな場所で暮らします。
北半球に広がるイヌ科
アカギツネは、ユーラシア大陸から北アメリカ、北アフリカまで分布します。イヌ科の動物のなかでも、これほど広く分布する種はほかにいません。森や草原はもちろん、農地や、都市の周りにも入りこみます。環境に合わせて食べ物を変えられる雑食性が、この広い分布を支えています。海外では、都市の中で暮らすキツネも知られています。人の出すごみなども食べながら、街に適応した個体が増えている地域もあります。
赤い毛とふさふさの尾
アカギツネの体は、赤茶色の毛におおわれ、腹は白っぽい色をしています。大きくふくらんだ尾は、体温を保ったり、体のバランスをとったりするのに役立ちます。寒い冬には毛が厚くなり、丸みをおびた姿になります。夏には毛が抜けかわり、ほっそりとした見た目に変わります。

日本の二つのキツネ
日本に住むアカギツネは、地域によって二つの亜種に分かれます。北海道のキタキツネと、本州から九州のホンドギツネです。

キタキツネ
キタキツネは、北海道と樺太、その周りの島に住む亜種です。本州以南のホンドギツネより、全体にやや大きくなります。北の寒い地方に合わせた、大きめの体をもっています。
耳の裏と足首が黒い
キタキツネの見分けの手がかりは、体の一部の黒い色です。耳の裏側と、四本の足首のあたりが、黒くなっています。この黒い模様は、ホンドギツネとの違いの一つとされます。全体の毛色や大きさとあわせて、見分けの目印になります。
観光地で人に慣れたキタキツネ
北海道の観光地では、人をおそれず近づくキタキツネも見られます。餌をもらうことになれた個体もいますが、餌付けはひかえるよう呼びかけられています。野生のキツネへの餌付けは、後で述べるエキノコックスとの関わりでも問題とされます。人に慣れた姿でも、あくまで野生の動物です。
ホンドギツネ
ホンドギツネは、本州・四国・九州に住む亜種です。キタキツネよりやや小さく、日本の広い範囲で見られます。里山や農地の周りにも住み、昔から人の暮らしの近くにいたキツネです。稲荷神の使いや昔話に登場するキツネも、多くはこのホンドギツネです。
何を食べ、どう暮らすか
アカギツネは、動物も植物も食べる雑食性です。季節や場所に合わせて、さまざまなものを口にします。
雑食の狩り
アカギツネの主な獲物は、野ネズミなどの小さな動物です。加えて、鳥や昆虫、木の実や果実も食べます。何を食べるかを柔軟に変えられることが、暮らしを支えています。

ネズミを狙うジャンプ
アカギツネは、草むらや雪の下にいるネズミを、独特の方法でとらえます。物音や気配で場所を見きわめ、高く飛び上がって、上から前あしと口で押さえこみます。雪の下に潜むネズミにも、この方法でおそいかかります。すぐれた耳が、見えない獲物の位置を教えていると考えられています。
果実や昆虫も食べる
アカギツネは、肉だけを食べるわけではありません。秋には、木の実や果実をよく食べます。昆虫やミミズなどの小さな生きものも、餌になります。動物が少ない季節でも、植物や虫でおぎなえる点が、強みになっています。
巣穴と子育て
アカギツネは、地面に掘った巣穴で子どもを育てます。自分で掘るほか、ほかの動物が使った穴を広げて使うこともあります。春になると、一度に3〜6頭ほどの子ギツネが生まれます。両親が餌を運び、子ギツネは夏のあいだに大きく育ちます。じゃれ合う遊びは、狩りの練習。遊びながら、少しずつ狩りのしかたを身につけていきます。秋には、多くが親のもとをはなれ、それぞれの場所へと散っていきます。

エキノコックスに注意
アカギツネは、エキノコックスという寄生虫の宿主として知られています。とくに北海道では、人の健康にかかわる問題として注意されています。
キツネと寄生虫
エキノコックスは、条虫(サナダムシ)の仲間の寄生虫です。キツネはこの寄生虫が育つ宿主となり、その体を通してふえていきます。
ネズミとキツネをめぐる寄生虫
エキノコックス(多包条虫)は、キツネと野ネズミのあいだを行き来してふえます。キツネの腸で育った寄生虫は、卵を含む糞を外に出します。その卵を野ネズミが口にすると、体の中で幼虫に育ちます。その野ネズミをキツネが食べると、寄生虫はふたたびキツネの体へ。こうして、キツネと野ネズミのあいだを行き来し続けます。北海道の調査では、キタキツネの多くが感染していたと報告されています。
人への感染と予防
人も、この寄生虫の卵を口から取りこむと感染することがあります。感染すると、長い時間をかけて肝臓などに病巣ができ、放っておくと重い病気になります。予防のため、次のようなことが呼びかけられています。
- 野生のキツネにさわらない
- 餌付けをしない
- 山菜や野菜は、よく洗うか火を通す
- 沢の生水をそのまま飲まない
- 外から帰ったら手を洗う
正しく知って気をつければ、過度におそれる必要はないとされています。こうした注意は、北海道などで広く知られています。
人とのかかわり
キツネは、古くから日本の文化のなかに登場してきた動物です。身近でありながら、少し不思議な存在として語られてきました。
昔話や信仰のなかのキツネ
キツネは、稲荷神の使いとして、各地の神社でまつられてきました。「ごんぎつね」などの昔話にも、人と関わるキツネが描かれています。人を化かすという言い伝えも、各地に数多く残っています。身近な野生動物だからこそ、人の想像のなかで、さまざまな姿を与えられてきました。
参考
- アカギツネ Vulpes vulpes/キタキツネ(Wikipedia日本語版)分類・亜種・生態
- 厚生労働省「エキノコックス症」感染経路・予防
- 北海道の調査資料 キタキツネの感染状況・注意喚起
画像の出典
- アイキャッチ(岩場のアカギツネ):Uoaei1, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 雪の上のキタキツネ:Shiretoko-Shari Tourist Association, 表示(Attribution), via Wikimedia Commons
- 北海道のキタキツネ:Henrik Moltke, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
- ネズミを捕らえる姿:Andrey Gulivanov, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
- 子ギツネ:Judy Gallagher, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons


