マガモは緑色の頭をした、冬の日本で広く見られるカモです。アヒルはこの種を家畜化したもので、身近なアヒルをたどると野生のこのカモに行き着きます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:カモ目 Anseriformes
- 科:カモ科 Anatidae
- 属:マガモ属 Anas
- 種:マガモ Anas platyrhynchos
和名・英名
- 和名:マガモ(真鴨)
- 英名:Mallard
学名はラテン語とギリシャ語から
二つの言語からできている
属名の Anas はラテン語でカモを指します。学名の後半にあたる種小名 platyrhynchos は古代ギリシャ語に由来し、platys(広い)と rhunkhos(嘴)を組み合わせた語です。「幅広い嘴」という意味になります。記載は1758年、リンネによるものです。
家畜のアヒルの位置づけ
家畜化されたアヒルは Anas platyrhynchos domesticus と書かれることがあります。ただし独立した亜種としては認められておらず、もとになった野生の集団 Anas platyrhynchos platyrhynchos の中から生まれたものとして扱われます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長50〜65cm、翼を広げた幅(翼開張)81〜98cm |
|---|---|
| 体重 | 0.7〜1.6kg |
| 日本での時期 | 冬鳥として9月ごろ飛来し、4月ごろ去る。北海道や本州の高原で少数が繁殖 |
| 生息環境 | 湿地・公園の池・川・湖のほか、河口や浅い入り江、海岸近くの海。繁殖期は湖沼や池の周りの草地 |
| 食べ物 | 主に陸上の植物質を食べる雑食 |
| 繁殖 | 春から夏。平均10個前後の卵を産む。温めるのも育てるのも雌だけで、抱卵は28〜29日 |
| 保全状況 | IUCN: LC(軽度懸念) |
全長は50〜65cmで、A4用紙の長辺(29.7cm)の2倍ほどの大きさです。体重は0.7〜1.6kgあり、水面で餌をとるカモのなかでは重いほうに入ります。
雄と雌で色がまったく違う

カモ類ではよくあることですが、マガモも雄と雌で色が大きく違います。さらに雄は夏と冬でも姿が変わり、冬の雄がとくに色鮮やかになります。
冬に色が入れ替わる
頭の緑は光の向きで色が変わる
冬の雄は頭部に金属のような光沢のある緑色が出ます。頭のてっぺんは黒に近く、光線の具合によっては青みがかった紫の光沢を放ちます。首も同じ色で、下のほうに白い輪状の模様が入ります。
色の見どころは頭だけではない
胸には栗色が入り、背と肩は灰褐色です。腹や脇もほぼ同じ色で、背よりやや淡くなります。一方で嘴は全体が黄色く、先端だけが黒くなります。目は褐色、脚はオレンジ色です。
翼に入る紫の帯
翼を広げると、後ろ側に並ぶ長い羽に紫色の金属光沢を持つ部分がよく目立ちます。1枚ずつ見ると、羽の軸を境に体に近い側が灰褐色、遠い側が光沢のある紫色です。この光沢の帯には白い縁取りがあり、飛んでいるときも止まっているときも目につきます。
褐色の雌にも目印はある

雌は雄に比べて地味で、全体的に茶色のカモです。頭は褐色ですが、額から首の後ろにかけては色が濃く、頬や耳のあたりは淡くなります。目の前から後ろへ黒い線が通り、これがよく目立ちます。
雌の翼にも紫色で光沢のある羽があります。雌の羽色は夏でも冬とほとんど変わりません。
雌に近い姿へ変わる時期がある
夏の雄は地味になり、全体が雌に似た姿になります。ただし頭部は光沢のある黒色で、喉が赤みを帯びます。冬の緑の頭とは印象が大きく変わります。
似た種との見分け
緑の頭だけでは決められない
雄の頭が緑色になるカモは、コガモやヨシガモ、トモエガモなどが知られています。ただしこれらは耳のあたりなど、部分的に緑が見えるだけです。
ハシビロガモは首まで緑色になりますが、腹と嘴の色が異なります。
カルガモとは顔と嘴が違う
マガモの雌はカルガモに少し似ています。どちらも目を通る黒い線がありますが、カルガモはそれが太く、白っぽい褐色の地に映えて顔立ちがはっきりします。マガモの雌は全体が褐色です。
決め手になるのは嘴です。カルガモは嘴の先が黄色く、付け根が黒くなります。マガモの雌の嘴は全体に暗く、黒から斑の入った橙色や褐色まで幅があります。
アヒルはマガモから作られた

家畜化で変わったこと
マガモは肉と卵を目的として、世界各地で家畜化されてきました。それがアヒルです。温度への強さや肉の量、産卵数が増えるように改良されています。
その代わり運動能力は野生のものより劣り、アヒルはあまり飛べません。
家畜と野生の境目は薄い
アヒルは野生のマガモと交配できます。これは家畜化された側を野生へ戻す交配です。交配すると、退化していた運動能力が野生と変わらないほど回復するとされます。
見分けがつかない個体もいる
白いとは限らない
アヒルは全身が白い品種が多く、なかにはマガモに似たものもあります。アオクビアヒルと呼ばれる品種は雄がマガモによく似ています。ただし腹部が全体的に白っぽく、体型も本種より大きくなります。
季節が手がかりになる
東京近郊ではマガモは繁殖しません。そのため繁殖期にあたる夏に見られるマガモらしい個体は、アヒル系の雑種であることが多いとされています。
陸で採食するカモ
食性は主に陸上の植物質を食べる雑食です。水中よりも陸地で採食する種類で、潜水は上手ではありません。
湖の豊かさで顔ぶれが変わる
長野県での観察によると、マガモのように陸地で採食するカモは水質を選びません。一方で潜水が上手な貝食や魚食のカモは、栄養分の多い湖を好みます。栄養分の少ない湖にはこの潜水型が少なく、そのぶん陸地で採食するカモの割合が高くなります。
潜るカモとは活動時間が違う
潜水して採食するカモは昼行性、陸地で採食するカモは夜行性のものが多くなります。マガモも基本的に夜行性の性質が強く、これは人の行動や湖の水位にも左右されるとされます。
卵とヒナ

10個前後の白い卵
繁殖期は春から夏です。枯枝や草をかき集めて皿型の巣を作ります。産卵数は平均10個前後です。卵は白色で、平均の大きさは57×41mmになります。長いほうの57mmは、単三電池の長さ(50.5mm)より少し長いくらいです。
雄は子育てに加わらない

他のカモ類と同じく、卵を温めるのも子を育てるのも雌だけです。卵は抱卵開始から28日から29日で孵化します。ヒナは42日から60日で飛べるようになります。
足環を付けた調査では、最長でおよそ27年という記録が残っています。
どこで会える

生息環境の幅は広く、北極のツンドラから亜熱帯にまで及びます。公園の池や川、湖のほかに河口や浅い入り江も使います。海岸から見える範囲の海に出ることもあります。好むのは水深1mに満たない浅い場所で、水草のある水域に集まります。
日本にいるのは秋から春まで
寒い土地で暮らす集団は繁殖期を北で過ごし、冬に南へ渡ります。日本で見られるものの大半はこのときに飛来するため、日本では一般に冬鳥として扱われます。飛来するのは場所にもよりますが9月ごろ、去るのは4月ごろです。
夏に残る個体もいる
日本より寒い土地で夏に繁殖するのが基本ですが、北海道や本州の高原地帯では少数の繁殖例が観察されています。江戸時代の末から大正の初めごろまでは、山中湖や河口湖でも繁殖が見られたという記録があります。
日本にいる間に相手を選ぶ
つがいを作るのは越冬中の10月末から12月です。春には雄と雌が連れ立って繁殖地へ渡ります。北へ発つころには相手がすでに決まっています。
関連ページ







参考
- Wikipedia「マガモ」(雌雄と季節による羽色・翼鏡・類似種との見分け・食性と昼夜の活動・渡りの時期・営巣と卵・アヒルの家畜化と戻し交配)
- Wikipedia「Mallard」(全長・翼開張・体重・学名の語源・翼鏡の白い縁取り・家畜アヒルを独立した亜種としない扱い)
- GBIF「Anas platyrhynchos」(Anas platyrhynchos が ACCEPTED であることの確認)
画像出典
- Acarpentier, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons(アイキャッチ)
- This picture was realized by Richard Bartz by using a Canon EF 70-300mm f/4-5.6 IS USM Lens, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons
- Commonists, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- King of Hearts, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Roger Culos, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Alexander Novikov, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


