コゲラ

コゲラ・日本最小のキツツキ 小型陸鳥

コゲラは、体長15cmほどの日本最小のキツツキです。灰褐色と白のまだら模様の羽で、木の幹を器用に登りながら、樹皮の下に潜む昆虫を捕えて食べます。学名は Yungipicus kizuki(旧 Dendrocopos kizuki)。日本全国に一年中住み、山の森だけでなく街なかの公園や神社林にも生息するキツツキです。

「ギィー、ギィー」というかすれた声と、木を高速でつつくドラミング(連続打撃音)が観察の目印になります。1980年代以降、東京都心のような大都市の公園でも繁殖が確認されるようになり、都市進出が進んだキツツキとして知られる種です。オスとメスの区別は難しく、後頭部にごく小さな赤斑があるのがオス、ないのがメスになります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:キツツキ目 Piciformes
  • 科:キツツキ科 Picidae
  • 属:コゲラ属 Yungipicus(旧アカゲラ属 Dendrocopos)
  • 種:コゲラ Yungipicus kizuki

和名・英名

  • 和名:コゲラ(小啄木鳥)
  • 英名:Japanese pygmy woodpecker(ジャパニーズ・ピグミー・ウッドペッカー)

別名と名前の由来

  • 和名「コゲラ」:小さい+ゲラ(キツツキの古い呼び名)で「小さなキツツキ」の意味。日本のキツツキで最も小型なことからついた。
  • 英名「Japanese pygmy woodpecker」:「日本の小さなキツツキ」の意味。pygmy は「こびとの/極小の」の意。
  • 属名 Yungipicus:ラテン語で「Yunx(アリスイ属)+Picus(キツツキ属)」を合成した小型キツツキ類の属名。従来はアカゲラ属 Dendrocopos に含められていたが、分子系統解析で独立した属に分けられた。
  • 種小名 kizuki:長崎県の旧地名「木附(きづき)」に由来するとされる。1845年、シーボルトが日本から持ち帰った標本を、オランダの動物学者テミンク(Coenraad Jacob Temminck)とシュレーゲル(Hermann Schlegel)が『Fauna Japonica』で新種として記載した際に採用された地名種名。

大きさ・生息などの基本データ

大きさ全長 約13〜15cm/翼開長 約27cm/体重 約18〜26g(日本のキツツキで最小)
体色背面:灰褐色と白のまだら(白い横縞が並ぶ)/腹面:白地に細かい縞/頬:白と黒のライン/オスは後頭部にごく小さな赤斑/南方の亜種ほど色が濃い傾向
分布東アジア(ロシア南東部・樺太・朝鮮半島・中国東北部・日本列島)/日本では佐渡島を除く全国に留鳥として一年中生息
生息環境天然林/雑木林/里山/都市部の公園・神社林・街路樹
食性主に昆虫(節足動物)/樹皮の下や隙間に潜む幼虫を長い舌で捕食/秋冬には木の実・果実も利用
繁殖4〜6月/枯れ木や生きた枝の枯れた部分に毎年新しい巣穴を掘る/5〜7個の卵/抱卵約14日・巣立ちまで約20〜25日
寿命野生でおよそ5〜8年
保全状況IUCN:LC(軽度懸念)/日本国内では普通種として全国的に安定
コゲラのオス・後頭部にごく小さな赤斑
Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(愛知県・オス個体、後頭部の赤斑が見える)

日本最小のキツツキ─見た目と識別ポイント

灰褐色と白のまだら模様

背中の細かい白い横縞

コゲラの背中は灰褐色を地色に、細かい白の横縞が規則的に並ぶ模様が特徴です。この縞模様が木の幹の斑と重なって保護色になり、じっと止まっているときは見つけにくくなります。腹側は白地に細かい縞が入り、全体としては地味な色合いですが、まだら模様がはっきりして観察の目印になります。

オスは後頭に小さな赤斑

オスとメスの見分けはかなり難しく、決め手は後頭部にある「ごく小さな赤い斑」です。オスにはこの赤斑があり、メスにはありません。ただし赤斑は羽毛に隠れて視認しにくく、真横または真後ろから見た姿でようやく確認できる程度の小ささです。

ほかのキツツキとの見分け

日本で見られる主なキツツキ類と、大きさ・見た目の違いを表にまとめます。

種名全長/特徴
コゲラ約15cm/日本最小/灰褐色と白のまだら/オス後頭に小さな赤斑
アオゲラ約29cm/中型/背面はオリーブグリーン/頭部に赤斑
アカゲラ約24cm/中型/白黒のはっきりしたコントラスト/腹の赤/オスは後頭全体が赤
オオアカゲラ約28cm/大型/アカゲラより一回り大きく背中に白い縞
クマゲラ約45cm/日本最大/全身黒色/頭頂の赤/北海道と東北の一部

木の幹を登る特殊な体のつくり

キツツキ類共通の適応

2本前・2本後ろの「対趾足(たいしそく)」

コゲラを含むキツツキ科の鳥は、指の並びが独特です。指4本のうち2本が前・2本が後ろを向く「対趾足(たいしそく)」という形になっていて、これで木の幹に垂直にしっかりつかまることができます。多くの小鳥は指3本前・1本後ろの並びで枝を握るのに向いていますが、キツツキは木を「登る」ことに適応した足の作りをしています。

硬い尾羽と、衝撃を吸収する頭骨

キツツキの尾羽は硬く、木の幹に押し当てて体を支えるつっかえ棒の役割を果たす構造です。頭の骨と嘴(くちばし)は木を打つ強い衝撃を吸収する形になっており、脳へのダメージを最小化する骨格として知られます。コゲラは小型のため大型キツツキほどの打撃音は出ないものの、この基本の適応は同様に備えます。

長い舌で樹皮下の虫を捕える

キツツキ類の舌は非常に長く伸び、頭骨のまわりをぐるりと巻いて格納されています。コゲラはこの長い舌を樹皮の割れ目や小さな穴に差し込み、中に潜むカミキリムシやゾウムシの幼虫、クモなどを引き出して食べます。舌の先端はザラザラした構造で、獲物を絡めとる仕組みになっています。

コゲラが長い舌で餌を捕えている様子
Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(舌を伸ばして餌を採る個体)

「ギィー」の声とドラミング

コゲラの側面全身・林の中
Hyppolyte de Saint-Rambert, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

2種類の主な鳴き声

コゲラの声は独特で、他種と混同されにくい特徴的な鳴き声を持ちます。主な声は次の2種類です。

  • 「ギィー、ギィー」:かすれた低めの声。つがいの相手を確認するときや、ほかの個体との距離をとるときに出す。公園や林でこの声が聞こえた場合、コゲラの可能性が高い。
  • 「キッキッキ」:短く連続する高めの声。なわばりを主張するときや、興奮したときの声。

木を打つ「ドラミング」

コゲラは繁殖期になると、木の幹を高速で連続して叩く「ドラミング」を行います。1回のドラミングは1秒以内に十数回の打撃を刻み、離れた場所にいる同種の相手に自分の存在を伝える信号として機能します。大型のアオゲラやアカゲラの太鼓打ちに比べると音量は控えめですが、公園でも耳を澄ませば聞こえる範囲の音になります。

枯れ木に巣穴を掘って子育て

毎年新しい巣穴を掘る

枯れ枝や古木にくちばしで円い穴を作る

繁殖期は4月から6月ごろ。コゲラは枯れ木や、生きた樹木の枯れた枝の部分に、円い巣穴をくちばしで掘って営巣します。巣穴を毎年新しく掘るのがコゲラの特徴で、古い穴を使い回さず新規に作る習性を持ちます。

他の小鳥の住まいの供給源にもなる

使い終わった巣穴はほかの小鳥(シジュウカラ・スズメ等)の住まいとして再利用されることが多く、森の穴住まいの供給源としての役割も担います。木の穴を必要とする鳥にとって、キツツキ類は生態系の中で「住宅供給者」として重要な位置を占めます。

5〜7個の卵と、雌雄で14日抱卵

1回の産卵で5〜7個の白い卵を産みます。抱卵は雌雄が交替で行い、約14日で孵化。ふ化後は雌雄そろって雛への給餌にあたり、およそ20〜25日で巣立ちを迎えます。つがいの絆は強く、同じつがいで複数年繁殖することがあります。巣立ち直後の若鳥は親のあとを追って餌の取り方を覚え、秋には独立して自分のなわばりを持つようになります。

1980年代からの都市進出

本来は森林と雑木林の鳥

枯れ枝と古木が必要な生活

コゲラはもともと、山地の天然林や里山の雑木林など、木立の多い場所に住む鳥として知られていました。木の幹をつつく生活には枯れ枝や古木が必要で、伐採や開発で失われがちな環境と結びついていたため、都市部での観察例は昔はほとんどなかったとされます。

都市緑地が成熟し繁殖が可能に

ところが1980年代以降、東京都心を含む大都市の公園・神社林・街路樹でコゲラの繁殖が確認されるようになりました。都市緑地の樹木が育ち、枯れ枝を含む古木がある程度残されるようになったことが、コゲラの都市進出を支えたと考えられています。

明治神宮・新宿御苑でも普通種に

現在では明治神宮・新宿御苑・上野公園といった都心の緑地でも普通に観察できる鳥になり、日本の野鳥の都市適応の代表例の1つとされます。同じく都市進出が進んだイソヒヨドリと並んで、大都市の野鳥相を変化させた種として位置づけられます。

日本全国の生息環境と発見の手がかり

コゲラの背面姿・木の枝にとまる
Hyppolyte de Saint-Rambert, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

主な生息環境

コゲラは日本全国の留鳥で、渡りをしません。次のような環境で年間を通じて記録があります。

  • 都市部の大きな公園(明治神宮・新宿御苑・上野公園・大阪城公園など)
  • 神社林・寺院の境内林
  • 郊外の雑木林・里山
  • 山地の天然林・広葉樹林

発見の手がかり

本種は姿より先に音による識別が手がかりになる種です。おもな指標を挙げます。

  • 「ギィー」というかすれた声
  • 木の幹を叩く小さな連続音(ドラミング)
  • 幹の側面を登る小型の鳥影(枝先ではなく幹での採餌が中心)
  • 冬期はシジュウカラやエナガとの群れ移動(混群)

とくに冬期はシジュウカラ・エナガ・メジロなどと一緒に群れをつくる「混群(こんぐん)」を形成し、群れの中にコゲラが1〜2羽混じる例が多く報告されています。混群を構成する小鳥の1種として、コゲラは冬の森の常連です。

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