サルは、ヒトを含む霊長類(サル目・Primates)のなかまです。世界に500種以上、日本にはニホンザル1種が知られています。木に登り、大きな脳と器用な手を持ち、複雑な社会を築く動物のグループです。他の哺乳類とは違う進化を遂げ、ヒトの祖先を考える手がかりとしても重要な位置にあります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:サル目 Primates(霊長目)
「サル=サル目(霊長目)」とは
サルのなかまは、分類では「サル目(Primates)」と呼ばれます。ラテン語で「一等の・首位の」の意味を持つ「霊長」を当てた名前で、体の大きさに対して脳が特に発達したグループを指します。世界に500種以上が知られ、その多くは熱帯・亜熱帯の森林に暮らしています。ヒト(Homo sapiens)もこの目に属します。
大きさ・分布などの基本データ
| 種数 | 世界に500種以上(日本にはニホンザル1種) |
|---|---|
| 大きさ | 体重約100g(ピグミーマーモセット)〜200kg超(ゴリラ) |
| 分布 | アフリカ・アジア・中南米の熱帯〜亜熱帯/日本のニホンザルは霊長類の中で最北の分布 |
| 生息環境 | 熱帯雨林・サバンナ・山地・岩石地帯など多様 |
| 食べ物 | 雑食性が中心/果実・葉・昆虫・小動物(種による) |
| 身体特徴 | 大きな脳/立体視のできる前向きの目/物を掴める手足/一部の種で把握尾 |
サルの体と暮らしの特徴
物を掴める手足
サルの手足は、指が独立して動き、親指が他の指と向かい合う「対向性」を持ちます。これによって物をしっかり掴むことができ、木の枝を握ったり、食べ物を細かく扱ったりできます。ヒトが道具を器用に扱えるのも、この霊長類共通の手のつくりが土台になっています。
前向きの目で立体視
サルの目は顔の正面にあり、両目で同じものを見ることで距離を正確に測る「立体視」ができます。木から木へ飛び移る樹上生活では、この能力が欠かせません。多くの種は色も鮮やかに見分けられ、熟した果実や仲間の顔つきを判断するのに役立てています。
大きな脳と複雑な社会
体の大きさに対する脳の割合が高いのも、サルの大きな特徴です。仲間の顔を覚え、順位関係を理解し、鳴き声や表情でコミュニケーションを取ります。10頭ほどの家族群から数百頭の大群まで、種によってさまざまな社会構造を作ります。この社会性の高さは、霊長類研究の主要な対象になっています。
4つの大きなグループ
原猿類・新世界ザル・旧世界ザル・類人猿
サル目は、大きく4つのグループに分けられます。それぞれ姿・生態・分布が異なり、進化的な位置づけもさまざまです。
- 原猿類(曲鼻猿亜目):キツネザル・ロリス・ガラゴなどが含まれる最も原始的なグループで、夜行性が多いのが特徴です。
- 新世界ザル(広鼻小目):中南米に分布し、マーモセット・オマキザル・リスザル・クモザルなどが含まれます。多くは樹上性です。
- 旧世界ザル(狭鼻小目・オナガザル科):アフリカ・アジアに分布し、ヒヒ・マカク・コロブス・テングザル・マンドリルなどが含まれます。
- 類人猿(ヒト上科):尾を持たない大型のグループで、テナガザル・オランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ヒトが該当します。
生態系での役割
種子を運ぶ森の運搬役
果実をよく食べるサルは、種子を糞と一緒に森の各所へ散布する「種子散布者」として重要な役割を担います。特に熱帯雨林では、大型のサル類が種子散布の主要な担い手となっています。サルが減った森では樹木の再生が滞ることもあり、生態系の循環を支える存在といえます。
絶滅の危機に瀕する種も多い
熱帯雨林の伐採・農地開発・違法な狩猟やペット取引で、サルの多くが個体数を減らしています。IUCNレッドリストでは霊長類の約6割が絶滅危惧種に指定されているとされ、生物多様性保全の中心的な課題となっています。動物園での飼育下繁殖や現地の保全プログラムなど、各種の未来を支える取り組みが世界各地で続けられています。
原猿類(曲鼻猿亜目)
大きな目・湿った鼻・優れた嗅覚を持つ、サル目のなかで最も古いグループです。多くは夜行性で、マダガスカル島・アフリカ・アジアの熱帯に分布します。
キツネザル科
マダガスカル島の固有種グループです。輪状の尾で有名なワオキツネザルや大きく飛び跳ねる動きで知られるシファカが代表格として挙げられます。最大種のインドリも含まれ、島内で固有の進化を遂げた種類が集まっています。

ロリス科
アジア・アフリカに分布する夜行性の樹上サルです。ゆっくり動くスローロリスやアフリカのポトーなどが含まれます。哺乳類として珍しく毒を持つスローロリスは、この科の代表格です。

新世界ザル(広鼻小目)
中南米の熱帯雨林に暮らす樹上性のサルたちです。鼻の穴が横向きに広く開くのが名前の由来となっています。物を掴める「把握尾」を持つ種類が多いのも特徴です。
マーモセット科
体長20cm前後の小型グループです。指先が鉤爪状に特化し、樹皮を齧って樹脂を舐める食性が特徴です。世界最小のサル・ピグミーマーモセットも含まれます。

オマキザル科
雑食性で群れをつくる中型のサルたちです。道具使用で有名なオマキザルや大群で暮らすリスザルなどが含まれます。

旧世界ザル(狭鼻小目・オナガザル科)
アフリカ・アジアに広く分布するサルのグループです。鼻の穴が縦に狭く開くのが名前の由来となっています。把握尾は持たず、地上性の種と樹上性の種の両方が含まれます。
マカク属(ヒヒ以外の代表)
アジア・北アフリカに広く分布する、旧世界ザルで最大の属です。日本のニホンザルが同じ属に入り、他にもクロザル(スラウェシ島固有)などが含まれます。


ヒヒ属
アフリカのサバンナと乾燥地帯に暮らす大型のサルのグループです。突き出た口吻と大きな犬歯が特徴で、群れで暮らします。マントヒヒは古代エジプトで神聖視された歴史を持ちます。

マンドリル属
西アフリカの熱帯雨林に暮らす旧世界ザル最大級のグループです。オスの顔と尻の鮮やかな赤青の色彩で世界的に知られるマンドリルが代表とされます。

パタスモンキー属
アフリカのサバンナで地上生活に特化した属です。時速55kmで走り、霊長類のなかで最速とされるパタスモンキーが唯一の種として知られます。

コロブス亜科(葉食性のサル)
アジア・アフリカに分布する葉食性のグループです。反芻類のような複胃を持ち、葉を微生物で発酵させて消化します。ボルネオ島固有のテングザル(オスの巨鼻で有名)もこの亜科に含まれます。

類人猿(ヒト上科)
尾を持たない大型のサルのグループで、ヒトも含まれます。脳が特に大きく、複雑な社会と道具使用で知られる、大型化と社会性が最も進んだなかまです。
オランウータン科
ボルネオ島とスマトラ島に分布する大型類人猿のなかまです。赤褐色の長毛と樹上生活が特徴で、単独性が強く、他の類人猿とは対照的な社会構造を持ちます。

ヒト科(ゴリラ・チンパンジー・ヒト)
アフリカ原産の大型類人猿とヒトが含まれます。ゴリラ・チンパンジー・ボノボ・ヒトの4種です。遺伝的にはチンパンジーとヒトが最も近く、共通祖先から約600〜700万年前に分かれたと考えられています。


本サイト未掲載のサル
本サイトで個別記事のあるサルはまだ一部です。世界にはほかにも個性豊かな種類が数多く存在します。
メガネザル科
東南アジアの島々に住む体長10cmほどの小型サルです。夜行性で、体に比べて極端に大きな目を持ちます。原猿類と真猿類の中間的な位置にあり、系統的な位置づけで注目されるグループとされます。
クモザル科
中南米に分布する新世界ザルで、細長い四肢と長い把握尾を使って森の高い場所を素早く移動します。尾を「第5の腕」のように使う姿から名付けられました。
テナガザル科
東南アジアの熱帯雨林に住む小型の類人猿です。長い腕を使って枝から枝へ大きく飛ぶ「腕渡り(ブラキエーション)」で知られます。夫婦単位で縄張りを持ち、朝と夕方に響き渡る歌のような鳴き声も特徴です。
アイアイ科
マダガスカル固有の夜行性の原猿です。極端に長い中指で木の中の幼虫を掘り出す採食で知られ、アイアイ科は1属1種のみで構成されるグループです。
このほかにも、アフリカのグエノン類・アジアのラングール類・南米のホエザルなど、世界のサルは多彩に枝分かれしています。
参考
- IUCN SSC Primate Specialist Group(世界の霊長類データ)
- Wikipedia「霊長類」「Primates」(分類・生態・進化)
- IUCN Red List(サル類の保全状況・絶滅危惧種割合)
画像出典
アイキャッチ画像: Alfonsopazphoto, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(ニホンザル・Macaca fuscata)


